減損すると来期以降の業績は良くなるのか? 【日本郵政の例】
トール社の買収失敗の舌の根も乾かぬうちに、と言ったらいいだろうか、日本郵政が野村不動産HDの買収を検討しているらしい。
そういえば、トール社の減損発表の時も布石とも思える
「M&A戦略の方向性は正しかった」、と言っていたなあ・・・
あの買収を決めたアホと違って我々の判断は正しいとでも言いたいように聞こえる。
・減損が企業価値を高める!?
ところで、 前回、『早すぎる減損の深読み【日本郵政の例】』で、以下の日経記事を紹介した。
日本郵政減損、民営化委委員長「企業価値高める」 :日本経済新聞
『政府の郵政民営化委員会の岩田一政委員長は26日の記者会見で、日本郵政がオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスで4千億円の減損処理をしたことを巡り、
「最終的に日本郵政の企業価値が高まる」との考えを示した。岩田氏は昨年10月の委員会でトール社の構造改革が必要と訴えていたが、今回の処理について「そうしたことに応えるものだ」と評価した。』
記事が氏の発言をどこまで反映しているかは定かでないが、大きな損失を出しておいて、来年からは良くなると言われても狐につままれた気分になるのでは無いだろうか?
しかし、減損をすることで過去の負の遺産を精算し、
「身軽になって」リフレッシュスタート、
と減損を必ずしもマイナスと捉えない例も少なくない。
減損処理は、会社の将来の業績や企業価値にとってプラスなのだろうか?
・設例での検討
簡単な例をおく。
初年度に500の投資により、以後毎年税前利益100を5年間期待できるプロジェクトがあるとする。また、投資(生産設備)の使用見込み期間は5年で定額法により毎年100の減価償却費が発生する。なお、単純化のために税金は考慮しない。
当初計画では、5年間でトータル500の利益が得られるが、ここで注意したいのは、
企業価値は利益合計ではなく、投資によって期待される将来稼ぐおカネ(将来キャッシュ・フロー)をベースに測る。
当初計画であれば、投資から期待される
5年間の将来キャッシュ・フローは1,000だ。投資額は500であるから、会社はこの投資を行うことで、1,000-500=500の追加的な価値を手に入れることができるという訳だ。簡単に言えば、この500が投資による会社の
企業価値の増加分と言うことになる。
(本来は時間価値等を考慮するため5年間の将来キャッシュ・フローの単純合計ではなく割引率を用いて将来キャッシュ・フローの現在価値と初期投資との比較をするが、ここでは単純化のために割愛)
ところが、当初の計画通りに投資計画が進捗せず、3年度目に投資した設備を全額減損処理したとする。2年経過時の設備の簿価は300(500-@100*2年)のため減損損失は300となり、3年度は赤字となる。
しかし、4年度以降は減価償却費が発生しないため、4年度以降の利益額は当初計画は100に対して減損後は200と大きくなることが分かる。
減損すると業績が改善する、というのはこの点を言っているのだろう。
当初の計画 | |||||||
0年度 | 1年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | total | |
営業利益(減価償却前) | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 | ||
減価償却費(減算) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | ||
利益 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 500 | |
減価償却費(加算) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | ||
キャッシュ・フロー | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 | 1000 | |
投資額 | 500 | ||||||
3年度に減損した場合 | |||||||
0年度 | 1年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | total | |
営業利益(減価償却前) | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 | ||
減価償却費(減算) | 100 | 100 | 300 | ||||
利益 | 100 | 100 | -100 | 200 | 200 | 500 | |
減価償却費(加算) | 100 | 100 | 300 | ||||
キャッシュ・フロー | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 | 1000 | |
投資額 | 500 | ||||||
・減損と企業価値の留意点
ここで注意したい次の2点だ。
1点目は、減損の有無は将来キャッシュ・フローに影響しないということだ。設例からも一目瞭然だろう。減損処理により来期以降の業績回復と言うのは、減損後(設例で言えば4年度以降)の業績のみにフォーカスするからだ。業績は短期的に把握されることが一般的だ。毎年(毎四半期)の売上、利益(の対前期比較や対予算比較)で捉えられ、これまでの通算や累積で評価されることはまあない。難しい理屈はおいても、大損を出しておきながら、損は忘れてこれからの業績だけ見てくれ言われてもムシが良いと思うのではないだろうか?各年度の利益だけではなく、通算でいくらもうかる(かった)のか?が気になるのは当然だろう。また、単年度の業績ではなく、企業価値に影響を与える重要項目の1つは将来キャッシュ・フローである。ところが、
減損処理はプロジェクト全体のキャッシュ・フローには一切影響しない。
減損損失すでにキャッシュアウトされたおカネの会計的な処理にすぎないからだ。
つまり、
減損処理自体は企業価値を高めることにはならない。
2点目。減損は本当に将来キャッシュ・フローに影響を与えないのか?ということだ。上述と矛盾するのでは?と思うかもしれない。減損損失自体は将来キャッシュ・フローにも影響を与えないし、その結果としての企業価値にも影響は与えない。
何が言いたいのかというと、
減損処理の原因が問題ということだ。
設例では、減損処理後の減価償却前の営業利益を一定(200/年)としている。
だから、将来キャッシュ・フロー合計1,000(と初期投資を差し引いた500)が減損処理の前後で不変となっている。ところが、
投資が計画通り進捗しない⇒業績が悪化⇒減損必要となる。つまり、減損損失が問題になる状況ではそもそも営業利益(減価償却前)自体が悪化していることが大いに予想される。そして、営業利益が低下すればとりもなおさず企業価値のベースとなる将来キャッシュ・フローも減少させることが分かるだろう。
したがって、
減損処理(負の遺産の精算)だけでは企業価値は高まらないし、業績も改善しない。
減損処理をもたらした事業の業績悪化要因の改善が同時に必要になる。
日本郵政は、当然そのための施策を考えていると思うが・・・
不適切な会計 最近の傾向と抑制のキーは?
『東京商工リサーチは15日、2016年に不適切な会計処理を開示した上場企業が57社にのぼり、08年の調査開始以来、最多だったと発表した。前年から5社増えた。全体の8割強を会計処理の誤りと粉飾が占めている。同社は「会計士が監査を厳格化している影響が出た」とみている。』
少し前(3月)に発表された2016年度(1~12月)のデータである。
不適切な会計処理が調査開始以来最多となった。
データの出どころはブログ末尾にリンクから確認して欲しい。
増加の要因として、
①コンプライアンスの欠如
②知識の不足
③過度なノルマ要求
④監査体制の強化
が挙げられる。①③は厳しい事業環境の中で目標数値の達成を目指すが故にという部分もあろう(とはいえ許されることではないが・・・)。②④はこうした事業環境における会社のアクションに対する規制や摘発の厳格化の影響と推察される。④はCGコードによるところもあろう。
『内容別にみると「厚生年金拠出額の科目誤り」など経理ミスと、「棚卸し資産の水増し計上」など粉飾がそれぞれ24社あった。「会社資金の私的利用」など着服・横領は9社だった。東証1部が27社と最も多く、ジャスダックは13社、東証マザーズは10社だった。』
誤謬(間違い)と粉飾がほぼ半々でこの2つで約85%を占める。上記要因と関連付けると、誤謬が②知識の不足に関連し、粉飾が①③④と関連するイメージだ。
誤謬も粉飾も当然、良くないが、特に粉飾は経済全体の景気や事業環境が厳しくなると増加する傾向がある。事業を取り巻く環境が悪化すると、売上や利益と言った業績数値は悪化する。しかし、素直に悪化しましたと言いたくない、言えないのが人情。
それでも何とかしようとして、売上や利益を出そうと努力している内は良いのだが、例えばそれが行き過ぎたノルマ達成へのプレッシャーとなり、会計の数字をいじるようになると粉飾、会計不正となる。察するに、最初から粉飾(決算)ではなく、徐々に、そしていつの間にか
経営努力と粉飾決算の一線を越えてしまったという事例も相当数あるのでないかと思う。
事業環境の悪化などによっては当初の事業計画が達成困難になる場合もあるだろう。だからと言って、無理に当初の事業計画を達成するために粉飾決算をしてしまっては本末転倒だ。経営努力を怠ることを推奨するつもりは毛頭ないのだが、適切に事業計画を下方修正することも必要になるだろう。当然、投資家、株主にとってはバッドニュースであり、株価などへは通常は悪影響となるし、経営者の評価も下がるかもしれない。
しかし、CGコードにもあるが、その際ポイントになるのが
株主、投資家と会社(経営者)の双方向のコミュニケーション
だろう。もちろん、有事だけではなく常日頃から、会社(経営者)が何を考えて(計画)いるのか、株主、投資家が会社に何を期待しているのか、について議論を重ねることだ。これによって、期待ギャップが縮小しお互いの信頼も強まる。そして、短期的な結果だけで判断されるのではなく、何故そうなるのか?それを受けて今後どう対応していくのか?といった、中長期的なプランとプロセスを評価につながるのではないかと考える。
また、 会社全体の粉飾だけでなく、最近の傾向として、
子会社・関係会社の不適切な会計処理の増加が目立つ。2105年からは若干減少しているが、2016年度でも全体(57社)の内、24社が子会社・関係会社で起こっている。
子会社・関連会社の場合は、計画未達を本社に報告したくないという理由が少なくないと思われる。子会社・関連会社の経営者の立場からすれば想像に難くない。その点では、本社の製造部門、販売部門などの部門における事例と類似する点が多い。東京商工リサーチの記事に紹介されている日鍛バルブ社の例もそうだが、月次計画の大幅未達を工場外の上長に報告、相談できず(在庫を水増し処理した)、とある。
先ほどは、会社(経営者)と株主、投資家と言った外部のステークホルダーとのコミュニケーションの重要性を指摘したが、今度は会社内部のコミュニケーションが重視される。
皆まで言うな、あるいは空気を読め、と、どちらと言うと(相手が)言わなくても察する、日本人の美徳されてきた部分もあるが、ともすると、
言わないそして察しない、と悪しきに流れた例かもしれない。
『業種別では製造業が15社、運輸・情報通信業が10社、卸売業が8社など。「海外子会社などの販売管理の体制不備が目立った」(情報本部)』
そういったコミュニケーション不足やミスコミュニケーションの影響が色濃く出るのが
海外子会社・関係会社だ。
最近の事例では、東芝、富士フィルムを始め、LIXILやOKIも記憶に新しい・・・
会社(経営者)と外部ステークホルダーとのコミュニケーション
会社内部でのコミュニケーション
本社と海外子会社・関係会社とのコミュニケーション
いずれも相手あってのこと、確かに手間がかかることではあるが、1つ1つは決して難しいことではない。
会社内外のコミュニケーションの強化が不適切な会計の抑制、早期発見に効果を発揮するのではないかと考える。
【追加】
コミュニケーションと言うと、『言うのは簡単ですがなかなか大変なんです。何か便利なツールを下さい』と殊、海外子会社となると頼まれることもしばしば・・・そのようなコミュニケ-ションツールを開発して提供するようなコンサルティングサービスも行ってはいるが、その前にメールでも電話でもとりあえず連絡をとって担当者の顔と名前、業務内容と趣味程度は確認しておいて欲しい、とお願いしている(笑)
早すぎる減損の深読み 【日本郵政の例】 ~半ばボヤキ系記事~
『日本郵政は25日、海外物流子会社で発生した損失を2017年3月期に
4003億円計上することを決めた。日本郵政の連結最終損益は
400億円の赤字に転落、07年の郵政民営化以来初の赤字となる。損失処理を優先する姿勢を市場は前向きに受け止めているが、肝心の郵便事業の強化には課題を残す。海外展開のてこ入れは急務だ。』
まったく、減損なんて降ってわいた話じゃないんだから、3月中に結論出して欲しいよ ・・・
記者会見でも、監査法人に言われてやるわけじゃないということなので、
社内事情で調整が遅れたのだろうか・・・
会社が同日に発表したプレスリリースがこちら☟
トール社の減損についての詳細が説明されている。
【日本郵政のプレスリリース on 4/25/2017】
今回処理する減損損失4,003億円の内訳が、
のれん:3,682億円
商標権:241億円
有形固定資産:80億円
であることが分かる。
マスコミの報道等ではのれん『等』約4,000億円とされているが、
実は商標権や有形固定資産も対象になった。
日本郵政の記者会見でも『高値掴み』だったとの弁があったが、この構成からも把握できる。
一般に、のれんは、買収先の純資産を上回る金額で買収した際の買値と純資産の差額と説明される。おおむねはそれで正しいが、もう少し詳しくいうと、差額の内、無形資産として個別把握できるものは個別把握する必要がある。これをパーチェス・プライス・アロケーション(PPA)と言うが、トール社の場合は商標権がこれに当たる。
と、違いはあるものの、のれんも商標権も、トール社のB/Sには計上されていない、つまり、目に見えない資産価値だ。日本郵政が、買収に当たり、トール社を活用することで見込まれるとして見積もった追加的価値だ。商標権であれば、未だ顕在化してはいないが、トールの商標権を活用することでこれだけの追加的価値が期待できるということだ。のれんは超過収益力と言われるが、具体的には、会社を買収することで、規模の経済が働いてコストメリット(コストシナジー)が期待できるとか、技術的な相乗効果が期待できる(技術シナジー)とか、事業多角化によって範囲の経済が効くなど(戦略シナジー)などがその正体だ。こういったシナジー、日本郵政とトール社じゃあ、そもそも期待薄だったようにも思うが・・・
粗っぽく言えば、買い手にとっての『皮算用』がのれん等というわけだ。
買収してから皮算用をしっかり実現させていけば良いのだが、実現を怠ったり、そもそもあり得ないような期待値を設定したりすると、カボチャの馬車に戻ってしまう・・・
日本郵政のケースではその両方に問題がありそうだが、高値掴みの金額的なインパクトはやはり冷静に考えれば期待薄なシナジーを大きく評価してしまったことが要因に思える。冷静さを欠く要因はいくつかあって、まず結論ありき、ということだろう。この機会を逃せない等、どういう根拠か分からないが、会長、社長などの意思決定権者が先に買うことを決めてしまう、というやつだ。こうなると、実務部隊は多少の『どうなんかな~』という要素が出てきても見て見ぬふりをしたり、となる。また、M&A部門も予算がついて専任が張り付いてとなれば、実績が問われる。
実績=M&Aディール、大型買収などいくらのディールを達成したかとなれば、
買収額は高い方が良いだろう。ファイナンシャルアドバイザー(FA)にしたって、成功報酬も買収金額に依存するとなればそりゃあ・・・と、会社を取り巻く環境からも、買わないよりは買う、安くよりは高く、
という引力が強いと思われる。
そういった事情で、よほど
会社の戦略(事業ポートフォリオ)に合った会社しか買わない、
ペイするような妥当な金額の範囲でしか買わない、
としていないと、ビットになれば加熱して思わぬ『もう一声』が出かねない・・・
減損は、のれん等の皮算用だけでなく、有形固定資産からも80億円発生している。こちらは買収時に既にトール社が事業で活用していた現物資産だ。これを減損対象とすることは、
既に営んでいる事業からの期待価値も目減った、
ということだ。
日本郵政は、『資源価格の下落 及び中国経済・豪州経済の減速等を受け』てトール社の営業利益が(当初見込みより)大きく落ち込んだと説明している。将来のことは神のみぞ知る、既に営んでいる事業であっても外部環境の変化等によって見込みが大きく変わることもある。であれば、
だ。のれん等はそういう性質である。
のれんの期待値を上げることのリスクを理解いただけるだろうか?
日本郵政によれば、オーストラリア全体の景気要因とトール独自(M&A中心で成長)の要因で業績が悪化、と説明しているが、そういうリスク評価も、
本来は買収時に検討、評価して買収金額反映すべきであるし、もうひとつ言えば、今後の対策として挙げている
競争に勝つつための土台固め、コスト削減・見直し、差別化 、シナジー、 選択と集中
なども同様。買収時に検討すべきであって、今やる話じゃないだろう。
これらの点からも、会社も説明しているように、失敗M&Aと言わざるを得ない。
ところで・・・
『過去のレガシーコスト(負の遺産)を一気に断ち切る』
また、
『赤字決算に対する経営責任も明確にした。長門社長と日本郵便の横山邦男社長は6カ月間、20%の役員報酬を返上。買収当時に日本郵便社長だった高橋亨同会長は30%の返上に加え、代表権も無くした。』
経営陣の覚悟が伝わる、と言いたいところだが、
『長門社長は「不本意ながら(当時の)査定が甘かったのではないか。少し買収額が高かった」とし、旧経営陣にも責任があるとした。』
むしろ、これじゃないか?
トール社は2015年2月に買収発表で、2015年5月に買収している。
日本郵政の連結決算への加入は、2016年3月期からで今期2017年3月期は2期目。
一般に、継続的な営業赤字または営業キャッシュ・フローの赤字が減損処理を検討する1つの基準だ。もちろん、経済環境の悪化などもあるので、一概には言えないが、買収後2年もたたないうちに減損処理、しかも4,000億円規模の減損損失は通常ではない。普通は、減損処理を迫るのは監査法人であり、会社としてはできるだけ損失は先送りしたいと考える。冒頭にもあるように、会社の自主的な判断で減損を決意とのこと。
よほど、トール社の減損処理をしたかったと見える。
『日本郵政はこれまでのれんを20年かけて償却するとしており、今回も分割償却で決算上赤字を出さない手もあった。だが、将来にわたる償却費の発生が避けられず、一括償却で一気にウミを出し切る方針を選択。海外子会社の巨額損失にあえぐのは東芝と同じ構図だが、グループで15兆円の純資産を持ち、吸収は可能と判断したもようだ。』
ちなみに、25円/株の期末配当は予定通り実施(そら、このタイミングなら出さないと荒れる…)潤沢な資金があるので、4,000億円程度は問題なし。むしろ、来期以降の215億円/年の償却負担が減るので業績改善となる(記者会見でも弁明)←この発想もどうかと思うが・・・
現経営陣としては、
悪いのは前の経営者、トール買収を決めた人たちですよ、われわれはノーと言えなかっただけです。もちろん、その責任はとりますが、本心はあんな値で買うべきじゃなかったんです。そんな影響を引きずって経営したくない(業績評価されたくない)。
ということだろうか?
ウミは早期に吐き出す。抱え込むよりは良いのだが、早すぎる減損処理はまた違った問題になりかねない。買収時から時間の経過とともに、外部環境や事業の見通し等は変化する。買収時の見通しとかい離した結果が減損だ。
5年先までは見通せませんでした、は通っても、
1年先であればどうだろう?
1年先も読めなかったんですか?こうなると分かっていて買収した、あるいは経営者であれば当然その程度は想定すべきだった、となると、善管注意義務違反等で株主代表訴訟の対象となるかも知れない。
また、本日の日経記事にこんなのがあった。
日本郵政減損、民営化委委員長「企業価値高める」 :日本経済新聞
『政府の郵政民営化委員会の岩田一政委員長は26日の記者会見で、日本郵政がオーストラリアの物流子会社トール・ホールディングスで4千億円の減損処理をしたことを巡り、「最終的に日本郵政の企業価値が高まる」との考えを示した。岩田氏は昨年10月の委員会でトール社の構造改革が必要と訴えていたが、今回の処理について「そうしたことに応えるものだ」と評価した。』
子供が聞いてもおかしいと思う話だ。負の遺産を清算したことで、
将来にわたって会社が稼ぐ価値はむしろ高まる
ということかもしれないが、随分と虫の良い話だ。
過去の失敗をそそくさと切り離してやれやれと思っているとしたら、
近い将来同じような失敗をして、企業価値は低下することになりかねない。
経営者の都合で減損処理は可能なのか?【ふくおかFGの例】
『ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は21日、熊本銀行と親和銀行の経営統合に伴って発生したのれんの残り948億円を一括償却すると発表した。2017年3月期の連結最終損益予想は400億円の黒字から548億円の赤字に転じる。』
ふくおかFGが、熊本・親和銀を統合した07年には1834億円であったのれんの未償却残高948億円を一括償却するとのこと。その結果、黒字決算が赤字に転落なので、これはかなり思い切った判断だ。
ところで、固定資産の減価償却もそうだが償却方法や期間(耐用年数)は一度決めたら、その前提が変わらない限り継続して適用するのが原則だ。これを
継続性の原則と言うが、利益が出た時は償却費を多目に、利益が少ない時は少な目にといった具合の利益の調整弁としないためだ。
しかしながら、固定資産の取得後の事業環境変化などにより思ったように収益が見込めない場合、その時点で改めて固定資産の価値を評価して、その価値まで帳簿価額を切り下げるのが減損処理だ。今回、ふくおかFGが発表したのはまさにそれだ。
では、ふくおかFGが今回、熊本・親和銀行との統合で発生したのれんにどのような状況変化があったのだろうか?
『ふくおかFGは10月に予定している十八銀行との経営統合を控え、
M&Aで用いられる手法で熊本・親和銀の評価を改めて見直したところ、
「簿価の50%を下回る場合」という一括償却の基準に該当した。ふくおかFGは「熊本銀・親和銀の株式が10年前の経営統合時に想定しなかった経営環境の変化や、マイナス金利政策の影響を受けた」と説明している。』
どうも釈然としない・・・
何が釈然としないかというと、評価方法を変えているのだ。
スポーツも同じで、選手のパフォーマンスは同じでもルールが変わればこれまでセーフだったものもアウトになる。では、ルールを変えるのは妥当なのか?ということだ。
記事は続く。
『ただ、純資産を使ったこれまで通りの方法で判定していれば、一括償却の基準には該当しないという。ふくおかFGは統合以降、毎年約90億円ののれんを償却しており、その負担は28年まで続く見通しだった。』
ということだ。
このタイミングで、
評価基準を変更する合理的な理由があったのか?
ふくおかFGによれば、マイナス金利の導入など、市場環境の激変に対応して子銀行の株式評価を見直し、減損が必要になった、とのことだが、10年分をまとめて償却し、将来の環境変化に対応する余力を確保する、とか、将来のために余裕がある時期に償却する、という説明もあった。
報道されている以上の詳細は分からないので、あくまで経験からの勘に過ぎないが・・・
どうも、来るべきM&Aに備えて、その後またのれんの償却費負担が発生するので、
今のうちに落とせるものは落として余力を残しておこう、
といった意図が透けて見えるように思えるのだが、気のせいだろうか?
会社のIR資料でも、次期以降は(のれんの償却費負担が減るので)良くなりますよ、がやたら強調されているように思うし・・・
のれんの減損判定基準の詳細までは外部公表しないので期待薄だが、今後の決算発表資料などで、
のれんの減損判定について具体的に何を見直したのか?、
また、
このタイミングでの見直しは妥当だったのか?
について公表されるのを期待する。
ふくおかFGの例からも分かるように、
会計処理は機械的に粛々と行われるものばかりではない。
のれんの減損処理、引当金の設定、繰延税金資産の取崩
等々
金額の見積もりや処理の時期については、経営者の判断に依存
する部分が少なくない。
もちろん、判断には合理的な根拠が必要だし、ふくおかFGのような上場企業であれば外部の監査法人が納得するだけの理由が必要になる。しかし、そこにも一定の幅がある。
つまり、誰がやっても金額、タイミングが同じになるとは限らない。決算数値はそういった性格を帯びている。しかも、概してこれらの項目は最終的な会社の業績数値に与える影響は大きい。したがって、決算数値の利用者は、作成された数字だけでなく、経営者の意図も合わせて読み取る必要がある。
【ふくおかFGのIR】
監査承認なしで決算発表するとどうなるのか? 【東芝の例】
延期されてきた東芝の2017年3月期決算の第3四半期の決算発表が本日なされた。
噂されてきたように、監査法人であるPwCあらたの監査『承認』無
しという異例の決算発表となった。
ところで、よく報道される監査法人の『承認』だが、どういう意味合いで使っているのだろうか?
同様に監査法人の『お墨付き』という表現もされるので
『監査法人が会社の決算は正しいと判断する』ということを意味しているのだろう。
とすると、今回の東芝の、監査法人の承認なしに決算発表は間違いではないが、
ちょっと誤解されやすいので監査意見の種類について書いておきたい。
と、その前に・・・
今回の第3四半期決算について、東芝は、決算短信(いわゆる決算発表)と四半期報告書の提出を同日に行っているが、監査報告書の有無が問題になるのは四半期報告書だ。決算短信には監査報告書の添付は不要だ。金商法に従って作成提出される決算書(四半期報告書、有価証券報告書など)は監査法人か公認会計士による監査報告書を添付する必要がある。
監査法人が会社の決算書を会計監査した結果として表明する結論(監査意見)は
4種類ある。
今回の東芝の例では、四半期決算なので監査意見ではなく、正確には四半期レビュー意見なのだが、ややこしくなるので、監査意見として記載。
①無限定適正意見
:会社の決算は重要な点において会社の実態を概ね適正に表している。
報道される監査法人の承認とはこれを意味すると思われる。
②限定付適正意見
:一部不適正な部分があるが、それを除けば決算書は会社の実態を概ね適正に表している。
ここまでが、承認ラインと言えるだろう。
③不適正意見
:問題が大きすぎて、会社の決算書は会社の実態を適正に表していない。
④意見不表明
:会社の決算がメチャクチャ、あるいは根拠資料が提示されず会社の決算書が適正かどうか判断できない。
東芝のケースは実は、④『意見不表明』に当たる。実は、監査法人から何の結論も得ていないわけではなく、監査法人が結論を出せるような説明や資料の提示がなされなかったので、いかんともしがたい、という結論(意見)を入手している。
東芝の四半期報告書を参照☟
実はこれが問題なのだ。
監査意見のうち、不適正意見と意見不表明は
東証の上場廃止基準に抵触するのだ。本日の記者発表でも上場維持についてのやりとりがあったのはこのことだ。
では、仮に、監査報告書(四半期の場合はレビュー報告書)を一切
添付せずに四半期報告書を提出したらどうなっただろうか?
と、いってそんな事例があるかどうか・・・
というのも、金商法にもその場合の罰則規定が見当たらない(と思う)。というのも、監査法人などの監査証明が添付されていない報告書は受理されないと思われる。
結果として、期限までに(東芝のように延長申請していなくて)報告書が提出できなかった(不提出)と取り扱われると思われる。
有価証券報告書、四半期レビュー報告書が不提出となった場合は、会社の経営者や法人に対して、刑事罰(経営者であれば懲役または罰金 例:有価証券報告書の場合は5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、またはその併科)、課徴金(直前年度の監査報酬に相当する額 有価証券報告書の場合、少なくとも400万円)が課される。
ちなみに、会社法決算の場合、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の
『大会社 』は監査法人等による会計監査が義務付けられるが、大会社になりたてでうっかり忘れていたというケースがある。この場合は、100万円以下の過料となる。
不提出だったら1,000万円以下のペナルティで収まるかというと、
不提出でも意見不表明でも、上場廃止基準に抵触する・・・
ただし、基準では、意見不表明の場合は上場廃止の是非を検討する、となっている。もしかしたら、とりあえず、次に繫げるため、
と言うことだろうか。
とは言え、制度が許しても、市場が社会がここまでなった会社を受け入れるか、と言う問題が立ちはだかるだろう…
今後の展開をとりあえずは見守ることにする。
『リキャップCB』に対する提言に思う 【ボヤキ系 箸の上げ下げまで・・・】
『東京証券取引所は17日、上場企業が「リキャップCB」を発行する際の留意点を公表した。新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行して、自社株買いの原資とする手法で、長期投資家から「小手先の財務改善だ」との批判が根強かった。』
リキャップCBについては、このブログでも度々取り上げてきた。
詳しくはこちらを参照☟
ROEを高める錬金術とは!? ~ボヤキ系~ - 溝口公認会計士事務所ブログ
ROEを高めるためには結局・・・ ~リキャップCBに限界~ 【日本ハムの例】 - 溝口公認会計士事務所ブログ
リキャップCBは、簡単に言えば、借金をして得たおカネで自己株式を取得して会社の純資産と負債の割合をリバランスするスキーム(金融商品)。何のメリットがあるかというと、負債割合を高めることで、ROEが改善する。
要は、おカネで財務改善を買う、ということだ。
初見から、あざといというか記事のように小手先の財務改善、
という印象だった。おカネかけてまでするか~!?っと。
ということもあり、ブログで密かに警鐘を鳴らしてきた(笑)
だから、今回の東証の提言も方向性は同じだ。
『東証は企業に対し、発行の理由や資金使途、株式への転換が進んだ際の対応策などを投資家に説明するよう求める。』
ところで、日経に記事についてまず言いたいのだが、この記事を読んで皆さんはどんな印象を持つだろうか?
発行体である会社に対してリキャップCB発行の際にはこんなことも必要になるよ、と安易に発行することを抑制する印象を持つのではなかろうか?
実際の書面はコチラ☟
http://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000002btoz-att/nlsgeu000002btrk.pdf
一読いただきたいが、日経記事とは随分印象が異なる内容に思えた。
日経がそういう風に読者を印象付けたい意図があったのだろうか?
新聞記事だけで理解しては恐いな、と、改めて原本に当たる必要性
を感じた。
さて、東証の提言は、要するに、
『会社の皆さん、やみくもに内部留保は悪、株主還元は善とすべての投資家が考えているわけではないですよ。また、投資家は実力の伴わない見かけだけの財務改善を期待している訳ではないですよ。ましてや割に合わない手法を用いるのであれば、かえって期待を裏切ることになりますよ。本当にわかっていますか?』
と言うことだ。
冷たい言い方をすれば、
リキャップCBを財務比率改善の手段を使うも使わないも会社の自由だ。
会社のROEなどの財務指標が会社の経営努力によるものなのか、はたまたこのような小手先の錬金術なのか、更にはそういう手段を用いる会社なのかといった要は会社の『質』、その是非は投資家が見極めて投資意思決定
すれば良いだけの話だ。理にかなわないことをしているとなれば、その会社は証券市場から淘汰されていくだけだ。
今回の提言は、あまりにも多いミスコミュニケーションに業を煮やした東証がたまりかねて”口下手な”会社にサジェスチョンをするに至ったということだろうか?
『それっとどうなのよ?』ということであれば、機関投資家と会社が直接コミュニケーションをとって意識ギャップを解消すれば良いものを、と思うのだが・・・
同じような事例☟
「相談役就任、経緯開示を」 元トップの院政にNO! 経産省研究会が報告書 :日本経済新聞
親切と言えば親切だが、箸の上げ下げまで言わなあかんか・・・
と思ってしまうのである。
前受金の落とし穴 【てるみくらぶの例】
この3月は公私ともにスケジュールがパンパンで、やっとのことでピークを越えたかと思えば、もう月末・・・
ブログの更新も3週間開いていた。3週間のブランクは過去最長ではなかろうか・・・
と言っている間に、『てるみくらぶ』という旅行会社の破産申請の話題が世間を賑わせている。
僕自身はてるみくらぶを利用したことも無ければ、正直この会社のことを知らなかったので、ニュースを聞いて、事業内容から『おそらく運転資金管理に失敗したんだろうな~』程度に思っていた。ウェブ上のコメントもそんな感じのものも多かった。
ところが、こちら(☞てるみくらぶ騒動から見る日本式パッケージツアーの終わりの始まり - 夫婦でプーケット移住)のブログを読むと旅行業界、特に日本の旅行業界の特殊性(異常性?)が指摘されており、この通りだとすると、ビジネスモデルとして破たんしているのでは?とさえ思えてしまう。
航空券や海外のホテルの事前の予約金を賄うために旅行者から旅行代金の事前入金を募るしかなく(つまり、一般的な『前受金』商売のように資金繰りが楽になるわけではない)、また、旅行日程やキャンセルポリシーなどを旅行客の利便性を高めるために旅行会社自らがそのリスクを採る。つまり、催行率やキャンセル率が想定内であれば採算は採れるが下回れば損失となるだろうし、格安旅行プランなどで販売していればもともと利益率も低いだろうから、結構構苦しかったんじゃ無かろうか・・・つまり、そもそものビジネスモデルに無理があったのではないかと思うのだ。
と、こんな記事も見つけた。
てるみくらぶの資産状況が明らかに、債務超過が半年で50億円以上膨らみ急激な悪化 | トラベルボイス
半年間で債務超過が75億⇒126億へと約50億円膨らんだとのこと。原因は損失だろうから、もともとの逆ザヤビジネスが顧客離れによるキャンセル率増加などでさらに損失が加速度的に増加したのだろうか。
というか、そもそもそういうビジネスモデルなのだから、旅行プランを企画する会社としては、航空会社や現地のホテルなどにいついくらの支払いが必要になるのかわかっているはずで(それも上記記事によれば、かなり早い段階)、であれば、いつ資金ショートするかも読めていたはず。
てるみくらぶ 3年前から粉飾 | 2017/3/30(木) 7:17 - Yahoo!ニュース
で、分かっていたからこその粉飾なのかな・・・予断は避けるが、まあ、突発的な倒産ということではないだろう。最近になっても旅行客(行けなかったので希望者か・・・)からおカネを集めているとのことだし、どの時点で経営破たんを認識していたかによっては経営者の責任は変わりそうだ。
ところで、てるみくらぶの件も然りで、旅行代金の前金入金のように、
モノやサービスが提供される前に顧客から前金を受けるビジネスはそれなりにある。教育産業や美容業界などが典型だ。
会計ルールでは、顧客から注文されたモノやサービスの提供前に入金されたおカネは貸借対照表の負債の部に『前受金』(*)として計上される。
(*)類似例に『前受収益』がある。ワンショットが前受金で、継続的なサービスの提供に対する前金が前受収益で、会計上は区別するが、大きな意味での性格は類似しているので、ここでは特段の区別なく使用する。
「何故、おカネが手元にあるのに負債になるのか?」
という疑問を受けることがある。質問者はおそらく、手元にあるおカネに注目しているからと思うが、その通り、おカネは純然たる資産だ。問題は、おカネではなく
おカネを受け取った責任にある。
具体例で確認してみよう。
例)3月決算の商社。3/1に顧客から商品代金の前受を100,000円入金されたとする。商品の顧客への提供は4/5である。この商社の3月末決算では・・・
(借) 現金 100,000円 (貸)前受金 100,000円
となる。手元にある現金100,000円は資産である。と、同時に負債に100,000円の前受金が計上される。どう解釈すればよいだろう?
顧客側から見ると分かりやすい。顧客にとって商社へ支払った100,000円はあくまで預け金、つまり、実際に発注した商品が約束通り納品されて初めて納得するだろう。仮に、不良品や納品されなかったりすれば商社に対して預けたおカネを返せ~!となるだろう。であれば、商社にとっては顧客から入金されたおカネはあくまで預り金であり、顧客との約束を果たして初めて自分のモノとなる。つまり、前金入金された時点ではあくまで顧客のおカネを預かったに過ぎない。なんなら返還義務もある、ということで負債なのだ。実際、てるみくらぶでも旅行申込者から前金の返還請求が発生しているみたいだし、会社としての履行義務が果たせない場合は前金の返還が契約上も取り決められていたのだろう。
なお、上の例で、4/5に商品が納品されると、
(借) 前受金 100,000円 (貸) 売上 100,000円
となる。おカネの入金と売上のタイミングは異なるということだ。
てるみくらぶのような事例は少なくない。記憶に新しいところでは、エステサロンの『ミュゼプラチナム』(の当時の運営会社であるジンコーポレーション)や英会話スクールの『NOVA』の事例があった。
両者は、てるみくらぶよりも顧客からの前金入金されたおカネをもっと
積極的に活用していたようだ。例えば、ミュゼでは、広告宣伝費や新店舗拡大や高性能設備への投資に使われていたようだ。誤解を招かないように言っておくが、そういった事業への投資それ自体を否定しているのではない。むしろ、事業を大きくするためには事業への積極的な投資は必要である。そして、そのためにはおカネが必要だ。問題は、
おカネの調達方法をちゃんと理解していたのか?
ということだ。端的に言えば、
顧客から融資されたおカネを使っている自覚があったか?ということだ。前受金は『借りたおカネ』だ。積極投資をするなとは言わないが、そのためには顧客との契約を履行する必要があり、そのためには契約履行のための人件費や経費などのランニングコストがかかる。当然ながらそれら事業運営にかかるおカネを確保して、
投資に充てられる範囲で事業投資をしていたのか?
ということだ。ミュゼでは、14年8月期(倒産直前)の売上は約390億円で契約未履行の前受金がそのうちに相当を占めると言われる。つまり、
前金を『売上』として会計処理していた。会計処理が原因ということではないと思うが、そのような会計処理をするような感覚はもしかしたら
前受金を自分のモノと思っていたのではなかろうか?
ミュゼの社長は事業拡大のための積極投資以外にも、個人的なおカネの流用も指摘されている。
おカネが降って湧いてくる感覚があったのではないだろうか?
NOVAについても同様の指摘がある。顧客から預かったおカネを将来の事業投資へ充てるにしてもそれが期待されるリターンを産む保証は無い。増してや、リターンを産むはずのない経営者の道楽に使われていたとすれば・・・
NOVAでは、
経営者による前金の使い過ぎ⇒講師の人件費を削る
⇒講師が退職する⇒生徒、予約が取れなくなる
⇒退会する⇒受講料の返還請求⇒支払い不能で経営破たん
となったようだ。
顧客から前金を受けるビジネスモデルは本来事業を運営する資金繰りは楽なはずだ。
しかし、あくまで顧客から借りたおカネを運用しているという自覚を持たず、自分のおカネと勘違いして無計画に使ってしまうと、レバレッジを効かしている分返って仇となる。
追記
記事にコメント、感想をいただき、思いついたので。
あるからじゃなくて、要るから使う、
当たり前の考え方が忘れられるのかな、と。
貸借対照表だと、まず左側、事業を成長させるために何にどれだけ投資するか、おカネが要るかを考える。そのおカネをどうやっておカネを工面するか、つまり右側を考えるのはその次だ。
あるから使う発想は知らず知らず識らず予算管理が甘くなる。M&Aに予算枠取りするのも危ないっちゃ危ないかも…