溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

森社長の赤字の説明に思う 【オフィス北野の例】

tablo.jp

FBにも簡単に上げたけど、事務所ブログにも上げておく。

 

週刊新潮に掲載されたオフィス北野問題(?)に関する記事。

たけし軍団の声明に対する森社長の反論を読んでの感想。

 

疑問1~4について、それぞれ森社長の反論が書かれているが、個人的に気になったのは疑問4

『疑問・4 「昨年9月の決算で、オフィス北野は500万円ほどの赤字を計上してしまった。会社の売り上げは24億円程度ありますから、経営を根本から揺るがす赤字ではありませんし、そもそも「アウトレイジ最終章」(昨年10月公開)の製作費は既に出ていっていたの対し、映画に関する売上げが入ってくるのは半年ほど後になるというタイムラグが生じます」という部分。出版界でも原稿料の支払いは「20日締め、翌々月末払い」というのが浸透しており、タイムラグが生じるのは仕方にないとは言え、これは説明すれば納得できるものではないでしょうか。が、「たけしさんは自分が休みなく働いているのに」と怒りが収まらず、納得しません。これなども「愛人が裏で糸を引いているのでは」と邪推させる文章です(あくまで邪推です)。』

 

どのくらいの人がこの説明に納得するのだろうか?

 

もちろん、それは単純に言い訳しているとか、何となく怪しい、ということで納得しないのではなくて、森社長の主張は会計的には反論になっていないと思われる。

 

森社長の説明は、おカネの出入りについてであり、たけし軍団の指摘は(オフィス北野が)赤字だという点だ。

会計的に言うと、たけし軍団損益計算書(P/L)の赤字を指摘しているのに対して、森社長はキャッシュ・フロー計算書の資金収支の説明(反論)をしていると思われる。

 

オフィス北野の決算書の詳細は知りえないが、非上場会社とは言え、20数億円の売上の会社が現金主義で決算書を作成しているとは考えにくい(法人税法上もあり得ないだろう)。

 

映画ビジネスの会計処理については、以下を参照して欲しい。

www.shinnihon.or.jp

映画製作費は、企画段階、プリプロダクション段階、プロダクション段階のいつから資産計上するかの論点はあるが、各段階の各アクションに係ったおカネの支払いと同時にP/Lの費用とされるわけでは無く、資産計上される。

資産と言っても、棚卸資産、有形無形固定資産、あるいは投資有価証券等と形態は異なる場合があるが、ややこしくなるのでここでは簡略化して、映画製作のために支払ったおカネが即費用となるのではなく、資産とされるという点に留める。

では、その資産はいつ費用となるのかというと、映画という映像作品から得られる収益に対応させて費用化する(費用収益対応の原則)。

具体的な費用化の方法としては、映像作品の将来の予測収益に対応させて償却(漸次費用化)する方法もあれば、一定期間(例:2年)で償却という方法もある。

 

対するに収益はどうか。

映画興行会社、配給会社の例が書かれているが、細かい点はわきに置いて、例えば『興行収入は、当日券、前売券、優待券などのチケットが劇場に着券した時点で認識される仕組みになっており、それぞれのチケット単価に入場人数を乗じた金額で計算されます。』

要するに、実際に映画興行会社等におカネが回収された時点で売上が上がるわけではない。配給会社における配給収入も同様だ。

 

オフィス北野が映画ビジネスの中で具体的にどのドメイン(制作会社、映画興行会社、配給会社)に属しているかの詳細は知らないが、いずれであったとしても、P/Lの売上、費用の認識タイミングとそのためのおカネの出入りは必ずしも一致しない、ことが理解できると思う。

ザックリ言うと、森社長が主張される”タイムラグ”はおカネの出入りについてであり、損益ではできるだけ売上と費用のタイムラグを無いようにしているのである。

 

簡単な例を示すと・・・

映画製作費 増額100は当期に支払

映画興行収入 総額200は当期に放映(売上)するが、来期に回収

とすると、

 

     当期   来期

利益    100    無し 

 

おカネ  △100    200

 

となる。

たけし軍団が指摘してるのは、上段である当期の利益(設例では100)が赤字なのはおかしいということであり、森社長が反論しているのは、下段の当期のおカネが赤字(設例では△100)だけど来期に200が回収されるから問題ない、ということで指摘に対する反論になっていないということだ。

 

会計に明るい人であれば一見してオカシイと気づく点であるが、一般的にはおカネの出入りと損益とを混同してしまうことは少なくないようだ。

 

とはいえ、世間から注目されるオフィス北野の内乱。

たけし軍団の声明に対しる森社長の満を持しての反論(5時間も!!)。

専門家のサポートも得て、当然に準備に準備を重ねたことだろう。

大体それだったら5百万円ぽっちの赤字で済むわけないだろうと思うのだが・・・

 

それがこれか、と思うと、

一事が万事そういう感じなのかなあ、

と思えてしまうのだった・・・

 

 

銀行の貸倒引当金減少は善か?に思う

www.nikkei.com

 

銀行が貸倒引当金を減らしている。全体の残高は不良債権問題でゆれた1998年の5分の1、いまやバブル期と同水準にまで下がっている。戦後2番目の長さの景気拡大を背景に融資先の経営改善が進んでいるなら当然だが、どうもそれだけではない銀行の事情も絡んでいるようなのだ。』

 

本日、日経朝刊、銀行の融資先に対する貸倒引当金が減少しているとの記事。書かれているように、銀行の貸倒引当金が減少する理由は大きく2つ。

 

① 銀行の支援や企業自身の努力で経営状態が上向き、リスク区分は要注意先から正常先へと改善したため

② 企業の中期的な成長を見ようとせず、新規事業等への融資を抑制したため

①の場合は、企業の成長とともに銀行の融資も増加するが回収リスクは低下した結果、

②の場合は、企業の成長も停滞し銀行の融資も減少する、いわゆる縮小均衡ということだ。

 

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記事が問題視しているのは、特に②の場合。

『銀行として企業の経営リスクを減らす役割を果たしているなら「良い引当金減少」。ただ、企業の中期的な成長を見ようとせず、有望な事業の芽を摘んでいるのであれば「悪い例」といえる。 「善玉か悪玉か見極める必要がある」。地域の魅力研究所代表で金融庁参与でもある多胡秀人氏は、引当金がなぜ減ったのか中身をみるべきだと話す。取引先企業への融資を渋ったり引き揚げたりして、減少している場合もあるからだ。』

また、銀行の業績に対する影響へも指摘は及ぶ。

引当金の計上は銀行には費用になり、利益を下押しする。日銀のマイナス金利政策の下、利ざやは大幅に縮小し、「金利0%台」の融資が全体の6割超。マネックス証券の大槻奈那氏は「0%台でしか貸せないなら、リスクの低い融資先に絞るのは銀行には合理的なこと」とみる。リスクがある企業には貸さず融資を引き揚げる。これが引当金減少の隠れた要因だ。』

 

と、貸し渋り貸しはがしを指摘しておいて、

 

『「自らの顧客基盤を失い、ビジネスモデルの持続可能性にさらに悪影響を与える」。金融庁リスクを過度に避ける銀行の姿勢に警鐘を鳴らし、取引先の育成・支援に取り組むよう促す。』

 

もっと、ちゃんと融資しろ、と。

 

自分のことを優先して企業を痛めつけるとは何事か、金融機関としての社会的な役割をしっかり果たせ、という論調。

 

もっともといえばもっとも。

バブル後の長引く不況時にも銀行による貸し渋り貸しはがしを原因として中小企業をはじめとする多くの企業が倒産に追い込まれ、これが更なる不況を作り出したともいわれる。こうした経緯もあって、こう突っ込まれると銀行としても釘を刺された形になるのかもしれないし、社会全体としてもそうした印象を持つかもしれない。

 

しかし、である。

銀行からすれば、

 

貸せるものなら貸すよ!

 

という思いもあるのではないか。

営利企業である以上儲けは追求すべきだし、金利手数料で儲ける銀行からすれば融資はできるものならしたいだろう。実際、優良会社には融資の話は事欠かない(逆に需要はないのだが・・・)

 

もちろん、最初から結論ありきの融資引き上げや貸し渋りは良くない。

 

とはいえ、どんな企業に対しても積極的に融資しろというのも無体な話だ。回収困難と判断される分かって融資すべきでないし、そんなことして業績を大きく悪化させたらそれこそ株主から訴えられかねない。

 

例えば、

これまで継続的に赤字の会社が来期から黒字化します

新規事業を第2の会社の収益の柱とします

等々

 

熱心に説明されても、その根拠が合理的に説明されているか

 

という点に企業側が対応できているのだろうか?


融資を断わられ、

 

銀行は当社の事業の新規性や成長性を理解していない

銀行は過去の実績しか評価してくれない

 

という意見も耳にするが、ある意味それは当たり前。

 

銀行は事業の専門家ではないし、

しかも利害は対立する

批判的に見るのは当然だろう。

 

それを批判するのは簡単だが、それだけでは結果は変わらない。

銀行が気にする点を企業が合理的に説明できているかどうかを再考すべきだ。

 

一例であるが、

何故、売上が成長するのか?

⇒何を売るのか?(製商品)誰に売るのか?(顧客)どこで売るのか?(地域)どのように売るのか?(チャネル)等々

結果としての売上高が成長するというのであれば、当然にこれらに変化があるべきで、これらの点に対する説明もなく単に売上高の10%成長と言われても

個人的には、疑問しか浮かばない。

 

また、その販売を支えるための費用は、資産は?特に、 これまでとは異なる事業やチャネルでの販売となれば、当然、これらにも変化があるだろう。

 

そして、そのための資金はどの程度必要になるのか?単に運転資本が苦しいからとりあえず貸して欲しいと言われても、一体いくらの資金が必要なのかも分からない企業にはとてもじゃないが恐くて貸せない・・・

 

そして、こうした企業の事業戦略が財務予測(予測財務諸表)となって数字に落とし込めているか、という点が重要だ。

いくら熱心に言葉で説明されても、発する側、受ける側によって温度差はあるし、計画のいい面ばかり説明されても逆にリスクが気になるし、予測の幅によって売上、利益、そして資金需要をどの程度変動するのか、といった点を言葉よりも客観的な数字で表現する必要がある。銀行も組織であり、融資担当者の一存で融資判断がされるわけではない。・・・と社長が熱く語っています!で決裁が下りるわけもないことは容易に想像がつくだろう。

 

事業計画の合理性もさることながら、事業計画を数字に落とし込む点において、

人材やスキルが十分でない企業が少なくないように思われる。

金融庁は、この点の育成・支援も念頭に置いているかもしれないが、銀行だけに求めるのであればそもそも人材の確保からして難しいだろう。仮に可能としても、当然にそのためのコストが貸出金利へ反映されることになる。

 

事業に必要な資金の調達が企業にとって重要であるならば、技術、販売、製造等と同様に財務・会計の人材の調達や育成に注力すべきだと思う。

結構、軽視されがちに思えるし・・・

 

銀行の貸倒引当金の減少要因の1つである

『企業の中期的な成長を見ようとせず、新規事業等への融資を抑制したため』

は銀行だけの問題としてしまうと事態は改善しないのになあ、

 

と記事を読みながら思うのだった。

 

親子上場って有なの、無しなの? 【ソフトバンクの例】

www.nikkei.com

 

『世界で企業の新規株式公開(IPO)のルールが骨抜きになるリスクが高まっている』

との日経記事(2018/3/19)

 

ソフトバンクグループ(SBG)のソフトバンク(携帯子会社)の上場方針の公表等を例に、親子上場に対する規制が緩和される可能性を示唆している。

 

親子上場とは、その名の通り、親子そろっての株式上場を指す。

問題となるのは、子会社の株式上場だ。

 

親子上場のメリット・デメリットとして一般的に挙げられるのは、

 

【親会社のメリット】

・子会社株式を市場で売却することによる資金調達

・子会社株式の市場価値向上

・子会社に対する管理負担の軽減(子会社の信用力向上による資金・人材調達)

 

【子会社のメリット】

・親会社から独立性が増すため、経営の裁量が増える

・従業員のモチベーションの向上

 

【親会社のデメリット】

・子会社に対する支配力が弱まる

・子会社の上場による情報開示

 

【子会社のデメリット】

・親会社への依存度が低下することによる営業力の低下、管理コストの負担

・子会社の少数株主の利益が不当に阻害される

 

これらのメリット・デメリットはどの立場からかによる相対的なものが多い。特にデメリットについては、上場のメリットのためのコストとして捉える方が自然で、それをデメリットとするのもどうかと思う。

また、親会社のメリットである子会社株式売却による資金調達についても、同じ会社が2度上場するようなもの、つまり資金の2重どりだ、という指摘もされる。

 

親子上場の最大の問題は、子会社のデメリットとして挙げた、

 

子会社の少数株主の利益が不当に阻害される

 

ことだろう。

 

この点、東証は例えば『2008年度上場制度整備の対応について』で、

http://www.jpx.co.jp/equities/improvements/general/tvdivq0000004iib-att/2008program.pdf

親会社を有する会社の上場は、上場制度として禁止するのは適切ではない、としながらも、少数株主との利益相反のおそれなどの内在する弊害や問題点があること、昨今の経営環境においては上場会社には本格的な連結経営が求められていることを踏まえれば、投資者をはじめ多くの市場関係者にとって必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない、として、全国の取引所と協調して、実質的に一体の親会社及び子会社による上場を認めないことを明確にしている。

上場する子会社には親会社(支配株主)が存在し、親会社の判断によって子会社に不利な条件による取引を強要される、子会社から資金を吸い上げられる、上場後短期間で再度非公開化される等々、親会社以外の子会社の株主の権利や利益が不当に損なわれるおそれを指摘してのことだ。

 

『親会社と子会社が共に上場する親子上場は、株式持ち合いと並び欧米ではほぼ見られない日本独特の資本政策だ。親会社が自らの利益を優先し、子会社の一般株主の利益を損なう恐れがある。』

 

株式公開して上場会社になることをgoinng publicと言う。

公共の存在、社会の公器となるという意味だ。

理屈抜きにして、直感的にどこかの会社の子会社が上場会社になるって変だと思わないだろうか?

初めて耳にした時に、大人の事情はともかく、おかしな制度だなと感じたのを覚えている。

 

日本では、ソフトバンクとヤフー、NTTとNTTドコモ、キャノンとキャノンマーケティング、等々以前から親子上場する企業はある。世界的に見ても多い部類だろう。

世界では、ロシア、ブラジル、イスラエルにいくつか例は見られるが、世界的な大市場であるアメリカや欧州では見られない(というか僕は知らない)。

 

日本市場における外国人株主が増加するにつれて、

親子上場っておかしくね?

といった指摘の声が強くなり、2006年度をピークに減少傾向が続いている。日経記事によれば、

海外投資家からの批判も強く、2016年度末は270社と10年前のピークから3割減っていた。

とのことだ。

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ところが、だ。

潮目が変わりつつあるとのこと。それも、世界的に。

 

日本では、

『半面、IPOを逃す恐怖もちらつく。ロンドン単独上場を選ばれてしまうと「自国の大企業に見切りをつけられたとして、世界からの評価が下がってしまう」(東証幹部)。東証の苦しい胸の内を見透かすように、SBGは条件緩和を迫る。東証には上場企業の子会社が1部に上場する場合、親会社は持ち株比率を65%未満に下げるルールがある。経営の重要事項を単独で決められる「3分の2以上」に達しないようにするためだ。ただ上場を目指す企業が海外に上場している場合は緩和されることがある。SBGはソフトバンクのロンドン同時上場でこの例外規定の「ウルトラC」を狙っており、上場後も7割程度を持ち続けたい考えのようだ。』

この動機と屁理屈、と苦笑いがやっと・・・

事情は分からなくもないが、会社と言い、東証と言い、

恥も外聞もないとはこのことか。

 

そして、この流れは日本(東証)に限った話ではない。  

香港取引所、シンガポール取引所、ロンドン証券取引所、世界の取引所が時を同じくしてルール緩和に向かっている。

 その背景には、世界的なカネ余りがある。現在のIPOはもはや成長資金の調達が目的ではなく、既存株主の換金場所の確保へと変わってきたという。

また、

『18年1~3月の世界のIPOによる調達額は337億ドル(16日時点)。かたや世界IT大手8社は同期間にこれに迫る249億ドルの買収を実施した。上場企業の非公開化も増え、17年末の日米英の上場企業数は計約1万1500社と20年前から約2200社減った。』

 

要するに、投資機会の減少が続く投資家にとってはそうは言っても親子上場は1つの投資機会、そしてもはや公共の利益を守る存在から営利企業に変貌した取引所にとっても取引は多いほどありがたい・・・

 

そういう事情もあってのルール緩和だろう。

『投資家と企業の間に立って市場の規律を保つのは本来は取引所の役目だ。「基準にそぐわない企業のIPOを認めない毅然とした態度が求められる」(野村総合研究所の大崎貞和氏)。』

 

願わくば、証券取引所の矜持に期待したい。

もっとも、証券取引所だけの問題ではないのだけれど・・・

グローバル監査体制は画期的なことなのか? 【あずさ監査法人の例】

www.nikkei.com

 

今回は(も?)マニアックねた。

 

正直驚いた。

 

いや、極めて真っ当で、一般には

『何当たり前のこと言ってんの?』

と思うかもしれない。

 

が、この業界でにとっては当たり前でもない。

 

何の話かと言えば、富士フィルムの監査体制の話。

記事によれば、先の(富士フィルムの子会社の)富士ゼロックスの不適切会計の摘発のウラに新日本監査法人からから交替したあずさ監査法人の監査体制が寄与した、とのこと。

 

富士フイルムは2016年6月末の株主総会後に会計監査の担当を新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えた。国内はあずさが監査し、海外グループ会社はあずさと提携するKPMGが各地域を受け持つ体制だ。 「日本のあずさがまとめ役となり海外から情報を吸い上げる仕組みが効果的」富士フイルムのグローバル監査部の花田信夫部長はKPMGのネットワークを評価する。』

 

 

特に評価されているのは、あずさの監査体制の

グローバルネットワーク

だ。

 

グローバルにビジネスを展開している(日本)企業は、海外に多数の子会社等の拠点を持つ。

有価証券報告書提出会社であれば、

自身の会社のみでなく、

国内外の子会社を含めたグループ全体

の業績を反映した連結決算書を作成、開示する義務がある。

 

ということは、子会社を含めた連結決算体制を整える必要がある。

とは言うものの、これがなかなか難しい・・・

 

何が難しいかを書くと長くなるので別の機会に書きたいが、記事にもサラッとこんな件が・・・

『あずさで監査の品質を担当する金井沢治専務理事は「一般的に親会社の財務担当者が海外子会社について外部の視点で客観的な情報を入手する機会は多くない」と会合を開催した狙いを明かす。』

 

本来はこうであってはダメなんだけど・・・

 

で、その

フォローアップを監査法人に任せる

という構図が出来上がる。

 

会計監査は、会社が作成した決算書、子会社であれば子会社が作成した決算書、親会社がであれば親会社が作成した決算書(連結決算書含む)が全体として業績等の実態を反映しているかどうかを監査すれば良いのだけれど、なんせ会社(本社)だけでこれだけの作業とそのための子会社等とのコミュニケーション(むしろこっちがネック!)をするだけの体制が整っていないことが少なくない。

そこで、監査法人に白羽のが立つ。

 

また、監査法人として、海外子会社を含めたグループ全体の決算数値の作成をいかにスムーズにサポートするかは差別化要因、会社に対してはアピールポイントとなる。

 ☟

『海外ネットワークの整備が急ピッチで進む。あずさは海外の会計事務所とのやり取りを密にするため、海外赴任経験のある人材を大幅に増やした。』

 

言うは易しではないが、実はこれは簡単にはいかない。

1つはスキルを含むメンタリティの問題。

もう1つは監査法人の建付けの問題。

 

スキル&メンタリティについては、語学力&チームをリードすることに長けていないということだ。語学力は言わずもがなで、当然コミュニケーションは英語がベースになる。この点は想像に難くないだろう。そして、それ以上に厄介なのが、不特定多数の多国籍の監査チームをリードする(というかしたがらない)メンタリティにあると思う。日本人というか、さらには公認会計士の気質というか、職員気質の会計士が多く、組織をコントロールする意識が高い人はそれほど多くない。自分も経験があるが、グローバルクライアントになると、国内外の子会社数(連結会計の対象とする)も数十、百社なんてこともあり、各国の監査チームも相当に上る。これらに指示を出したり、作業の進捗をコントロールしたりするだけでも相当の労力が必要になる。ましてや、日本人みたいに期日を守ってくれないし、時差もある(アメリカだと早朝会議とか・・・)。基本WEB会議、メール、電話でのやり取りになるので、経験がある人は分かると思うが、フェイストウフェイスのコミュニケーションに比べて圧倒的に不便だし、お互いの理解度も低下する。語学だけでなく海外のファームの事情をよく理解した人材を監査チームに増加したというのもその対応だろう。

 

監査法人の建付けの問題というのは、KPMGに属するアカウンティグファーム(監査法人をグローバルでは通常こう呼ぶ)といっても本社、支店といった関係ではなく、同じ看板を掲げてはいるが『別会社』だ。ちなみに、資本は各国のファームのパートナー(職位)が拠出している。あずさ監査法人であれば日本国の公認会計士(でパートナー職)が出資している。

つまり、それぞれのファームが独立しているので、トップが右向け右!といってもそう簡単に物事が決まるものではない。ちなみに、日本の監査法人の中の意思決定も同様だ(1つ決めるのにも多くのパートナー(出資者)の同意が必要なので、やたら時間がかかる・・・)

なので、監査法人が監査クライアントに対するアピールでよく使う『ウチのグローバルネットワークによって御社グループ全体にスムーズなサービスを提供します』というのも嘘ではないが、あくまでもネットワークをスムーズに運営できれば、という前提が必要になる。

普通に考えて、同じ看板というだけで上司でも無い会ったことも無い人間にいきなりあれしろこれしろと言われたら『何だ!?』と思うだろう。

 

また、あずさ監査法人にとって(親会社が)重要クライアントであっても、子会社を担当するファームにとってその子会社が重要かどうかは分からない。したがって、プロフェッショナルのアサインや諸々の対応等で優先的に便宜を図ってくれるかどうかは何とも言えない。

といった状況も考えられるのだが・・・

 

ちなみに、日本の監査法人が『海外子会社の監査で揉めた時も同じメンバーファームであれば調整しやすい』なんてセールストークに入れるのは、上記の理由によりあまり期待しない方がいい。かえってメンバーファームじゃないファームの方が監査法人を変更される緊張感が大きいので融通が利くなんてこともあるとか無いとか・・・(笑)

 

『さらにグローバル企業を担当する国内の監査チームが、海外子会社を担当するKPMGの現地事務所の監査チームに直接指示を出す体制に切り替えた。「現地の情報を収集しやすくなり、不正につながる情報も素早く把握できる」(金井氏)

 かつてあずさは現地拠点を通じて国内と海外の監査チームが間接的に情報をやり取りする体制だった。今は国内で監査全体のリーダーを務める会計士は、海外の監査チームの人事権までも持つ。』

 

ということで冒頭の驚きにつながる。

もちろん、グローバル企業に対する(監査)サービスの在り方としては当然あるべき対応だとは思うが、先述の問題もあって中々実現できていない監査法人も少なくないのではないかと思う。

富士フィルム富士ゼロックス)の場合は海外子会社の担当であるアカウンティングファームにとっても重要なインシデントであり彼らにとっても対処すべき重要案件という理解もあっての今回の体制かもしれない。同時に富士フィルムにとっても再発防止のため、あずさとがっちり協力体制を敷いたということもあるだろう。仮にそういった事情があったとしても、日本の監査法人(チーム)がグローバルに監査チームをリードする(それも権限を持って)のは容易ではない。が、そうあって欲しいという思いを持ってあずさの取り組みに期待したい。

内部通報者保護は何のため⁈

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180213&ng=DGKKZO26811360S8A210C1MM8000

 

本日(2/13 ’18)日経朝刊一面記事

 

内部通報者の保護厚く 企業の報復防止へ罰則 
政府、年内にも具体案 

 

内部通報者保護に関する記事。

 

政府は不正を告発した内部通報者報復的に解雇したり異動させたりした企業に、行政措置や刑事罰を科す検討に入った。現在の制度は企業が通報者に不利益を与える行為を禁じているが、民事裁判で解決するしかなく実効性が乏しい。通報しやすい制度を整えることで、企業のリスク管理能力を向上させ不正を抑止する。消費者が企業の品質不正などで被害を受けないようにする狙いもある。』

 

内部通報者に対する報復人事を防止したり、報復人事に対する法的是正措置を強化するということだ。これによって、内部通報の実効性を高めようという狙い。

 

少し古いデータになるが、AFCE JAPAN調べでは2009年10~2010年9の社内で発覚した横領着服等の不正について、外部・内部通報が端緒となって摘発された割合が圧倒的に多い。

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外部監査による摘発が3%というのも何とも情けないが(ま、ある意味”外部”としてはこんな程度とも思うが)、内部監査を含む内部統制も上回る数値だ。

 

ちなみに、ざっくりと

外部通報は取引先などの会社に外部の関係者による通報

内部通報は従業員などの会社内部からの通報

 

粉飾決算、横領着服、データ改ざんなどの企業不祥事は後を絶たず、コンプライアンスの点からも社内外から企業不祥事に対する防止や早期摘発体制の整備・運用を迫られる会社(経営者)としては、内部通報や外部通報制度の実効性を高めることが効果的だということが分かるだろう。

 

本日日経朝刊の別記事にも内部通報による不正摘発例が紹介されている。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180213&ng=DGKKZO26813650S8A210C1NN1000

 

 

ところが、である。外部通報に比べて社内内部通報、つまり従業員等による通報の少なさが気になるだろう。

不正が悪いことと分かってはいるが、内部通報は、

 

チクリ行為、仲間を売る行為

 

にもなる。


内部通報によって不祥事が明るみに出た会社は、刑事罰(不正を働いた本人あるいは法人)はもとよりマスコミなどの報道により社会的な制裁も免れない。

そして、その影響は、不正を働いた個人や法人に留まることなく、ブランドの既存や不買行為などを通じて会社の従業員へ広く及ぶことになる。

 

要するに、不正摘発は社会的に見れば確かに賞賛すべき行為ではあるが、

会社の従業員にとっては大迷惑な行為にもなる。

 

こうした事情もあって、不正を働いている人間が内部通報者の上司や人事権を持っている場合はもちろんだが、そうでない場合であっても内部通報者に対する報復的人事はなくならない。

 

以下は、2015年にエンロン粉飾決算を内部通報したワトキンス氏が来日した際のインタビュー記事だ。

toyokeizai.net

『──2002年1月、議会で貴方が内部告発者であることが明るみに出て、2月の上院聴聞会で、スキリング氏やファストウ氏の犯罪を裏付ける証言をし、一躍ヒロインになりました。

ただ、どこの国でも内部告発者は、結局はトラブルメーカーという烙印を押され、なかなか再就職は難しいようです。あなたもそうでしたか。

そのとおりです。私自身、二度と米国企業では働けないということは自覚しています。エンロンを辞めたあともオファーはいろいろあったのです。大学で教えないかとか、取締役会向けのコンサルティングをやらないか、とか。でも最終段階でいつもダメになる。』

内部通報者”whistleblower”は組織では”危険分子”とみなされ、

当社だけでなく他の会社への就職の機会も奪われることになりかねない。

 

これでは会社の不正行為の重要な抑止、摘発手段である内部通報制度の実効性が損なわれる、ということで今回の措置ということだろう。

 

もちろん、報復人事は巧みに遂行される(例として『空飛ぶタイヤ』(池井戸潤氏)参照)。

法の目をかいくぐるような手立てもあるし、仮に内部通報者が法的には保護されたとしても(社内の)”周りの目”までは止められない・・・

 

とはいえ、である。内面、実質を変えるにもまずは形式、法整備からというのは賛成だ。

 

願わくば、内部通報者保護強化により不正行為に対する抑止力が高まり、

結果として”抜かずの宝刀”となって欲しいが・・・

 

ICOの会計処理ってどうなるの!? 【メタップスの例】

www.nikkei.com

『仮想通貨技術を使った資金調達

(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)

に関する会計処理問題が浮上している。きっかけが15日に決算発表した、決済代行サービスなどを手掛けるタップス。昨年ICOを実施したが、会計処理を巡り監査法人との協議が難航。深夜に決算を発表する異例の事態となった。』

 

とのこと。会計処理を巡って会社と監査法人が揉めている、と聞くと、

所謂、”不適切な会計処理”

を思い浮かべるが、このケースは事情が異なる。

というのも、拠り所になる

会計ルールが整備されてない

のだ。

ルールブックが無ければ、〇✖を判断する根拠が示しにくい。

 

会計法(ルール)は、財産法の1つではあるが、広い意味で社会が円滑に機能する

ための常識や価値観を明文化したものであると思うので、ルールブックが無くても

原理原則に立ち返って、本来どうあるべきか?という観点から考えれば良い、

という意見もあるが、そうは言っても会計処理如何によって業績が左右される会社

からすれば、(特に意に沿わない会計処理を監査法人から提示される場合)

依拠すべきルールブックが無いというのはどうにも具合が悪い。

 

さておき、何を揉めた(記事には、協議、とあるが)かというと、

ICOの会計処理』

とのこと。

 

『ICOでは企業などが「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行。事業に賛同する投資家はビットコインなど流通性の高い仮想通貨で代金を払う。メタップスの韓国子会社の場合、昨年のICOで仮想通貨イーサリアムを当時のレート換算で約10億円調達した。』

 

ICOは、企業などがビットコインイーサリアムなどの仮想通貨と交換できるトークンを発行し、新規事業などに必要な資金を集めることを言う。

 

会社の新規株式公開をIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)言うが、

株券の代わりに、トークン』を発行するイメージだ。

 

『メタップスの場合、ICOで得た資金を貸借対照表(BS)上の負債

として取得時価格で計上した。だが前例は少なく「どの勘定科目に計上するかを含め、見当がつかない」(公認会計士)との声もある。』

 

実は、依然として監査法人と協議中とのことで、平成30年8月期の第1四半期(9-11)の決算発表がされていないので詳細は不明だが、記事から類推すると、

会社の会計処理は

 

(借)現金及び預金 *** /(貸)前受金 ***

 

と思われる。

 

で、IPOの類似取引ならば、資本取引(会社と株主の取引)だから、本来は

 

(借)現金及び預金 *** /(貸)資本金 ***

 

とするところを、『ICOについては法律上の位置づけが明確でない』、つまり、

ICOにより調達したおカネが会社にとって資本と認識してよいかどうか判然としない、ということでとりあえず手形借入金的に負債勘定で処理したのかと思っていた。

 

ところが、その後、会社のプレスリリースを読んで驚いた・・・

 

☟会社のプレスリリースはこちら

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1545014

 

プレスリリースによれば、

 

『2. 会計処理について  本ICO は、仮想通貨 Pluscoin(PLC)の販売であり、本 ICO において受領した対価は将来 的には収益として認識いたします。但し、収益認識の方法やタイミングについては引き続 き協議中ですが、本四半期においては、受領した対価の全額を負債(前受金)として計上 するのが妥当であると判断しております。』

 

現状の前受金での処理は暫定で、将来的には、

『収益』として処理するとのことだ。

 

ううう・・・

 

僕は、ICOを何らかの事業(計画)に対して必要なおカネを集める既存のIPO

などに代わる手法として認識していたが、会社はそう考えてはいないようだ。

 

IPO的に考えれば、まだ実現していない(これから実現する)事業計画に対しておカネを出すのは投資行為であり、会社から見れば資金調達行為だ。先述したが、

これは資本取引と言って、それ自体から損益は発生しない

そして、資本取引後のおカネを基に事業を遂行する過程で生ずる取引が損益取引と言って、これらが売上、費用のP/Lを構成する。

 

会計ルールでは、

資本取引と損益取引は明確に区分

している。

 

難しい話はわきにおいても、例えば、株主から1億円の出資を受けた会社が、その期のP/Lに株主に対する売上高1億円と計上するのは何となくおかしいと思うのではないか。

 

タップスの主張はまさにそれにあたる。

 

とはいえ、

それがオカシイとなるのは、あくまでもICOが資本取引であることが前提

だ。

確かに、現状ではICOの法的な位置づけが明確でないとのことだし、

トーク保有者の法的な権利も同様だろう。となると、ICOが資本取引なのか、

はたまた、トークンという『商品』を売って完結の販売取引なのか、

現状では判別が難しいのかもしれない。

販売取引ということであれば、会社の主張は当然だし・・・

 

どうなることか、今後の検討を待ちたい。

ICOに限らず、仮想通貨に関する法的な位置づけ、それに伴う会計処理については

またまだ今後解決すべき課題が多そうだ・・・

 

いつもそうだが、新しいビジネスが生まれるとその成長、つまり社会的な

影響力が高まるにつれて色んな課題が浮かび上がってくる。

ある意味、成長を妨げることにもなるが、それでも成長し続けるビジネス

だけが本物として確立するためのプロセスと思いたい。
 

 

会計の数字は本当に客観的なものか? 【ソフトバンクの例】

www.nikkei.com

「日本、いや世界で最も複雑な財務諸表かもしれない」。トーマツ幹部がこう形容する担当企業がある。それは大型M&A(合併・買収)を繰り返し、姿が大きく変わり続けるソフトバンクグループだ。担当会計士は当然、エース級を送り込んでいる。』

 

何が「最も複雑なのか分かりにくいんじゃないだろうか?

記事は続く。

担当会計士を悩ませる原因の一つはソフトバンク資産評価だ。』

 

資産評価が(日本の会社の中で)最も複雑で、会計士を悩ませる、という。

ソフトバンクの場合は、巨額買収によりバランスシート(B/S)の総額の内、

 

のれんが約16%を占める。

金額では4兆3,900億円にも上る

 

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のれんについては、当ブログでもいくつか記事を書いているが、買収金額と買収先の会社の純資産の差額であり、買収金額>純資産の場合、ソフトバンクのように資産側にのれんが発生する。簡単に言えば、

買収金額が高くなればなるほどのれんは大きくなる。

 

のれんは、目に見えない資産(無形固定資産)だ。目に見える資産でも時価の査定はそれなりに難しいが、無形資産となればなおさらだ。

仮にのれんが”価値無し”となると、

のれんの減損損

が必要になる。

減損損失当期純利益を悪化させるだけでなく、

その分の純資産も吹っ飛ぶ

ことになる。

ザックリ言うと、ソフトバンクの場合、

純資産の16%が吹っ飛ぶことになる。

(正確には税効果分が考慮されるので、吹っ飛び分はもっと小さくなるが・・・)

ちなみに、平成30年3月期の第2四半期(平成29年9月末)時点では純資産比率は19.5%なので、インパクトの大きさがイメージできるだろう。

 

では、のれんの評価はどうするのか?

 

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記事にもあるように、のれん発生後、年に一度、あるいは事業の収益環境などが悪化した際に減損の要否をチェックすることになる。

 

そして、事業の収益環境などの悪化とは、要するに足元の業績だけでなく、

将来の事業見通しをどう評価するか

に掛かってくる。

 

 「(あらゆるモノがネットにつながる)IoTが普及すれば、このくらいの売上高と利益は出る」。孫正義会長兼社長は本社の会議室で

アームの成長性について熱弁を振るった。

面談相手は投資家ではなく、トーマツの担当会計士だ。』

 

記事のこの部分が、この状況を物語っている。

仮に足元の業績が悪くても、

『このビジネスは、将来、”カクカクシカジカ”で成長するのです』

と会計監査を担当する会計士を納得させられるかどうか、

のれんを減損するかどうか、の分かれ目となる。

(カクカクシカジカの部分が重要なのだけれど)

 

これは、のれんに限ったことではない。現在の会計ルールのトレンドからは、B/Sの多くの資産、負債を時価評価することになる。その際の、中古市場などの実際の直近の売買の実績価格が把握できる場合はその金額を時価とみなすが、そういった市場がない場合は、のれんと同様の方法、つまり将来その資産からどれだけのキャッシュを見込めるか(その現在価値)、から時価を把握する。

会社が保有する資産の内の多くは後者で時価を把握することになるが、これは、

時価は経営者の将来見通し次第ということを意味する。

 

(会計の)数字は客観的なものと思われるかもしれないが、

意外にそうでもないことが分かるだろうか。

 

現在の資産評価は依然、取得原価主義だ。

つまり、B/Sの資産、負債の金額は、当初その資産、負債を

ゲットした際に支払った/受け取ったおカネの金額

で据え置かれている。

この良し悪しは置いておいて、少なくとも過去の一定時点の実績としての金額で評価されている。その意味では、金額にそれなりの客観性を見出すこともできるだろう。

 

しかし、今後益々、資産、負債を時価評価する流れは進むと考えられる。

つまり、

”経営者の将来見通しが会社の数字を決める

ことになる。

極端になるが、同じ事業、同じ業績の会社であっても、楽観的な経営者の会社であれば楽観的な数字、悲観的な経営者であれば悲観的な数字となることもあるので、会社の数字を活用して会社との関わり方を判断するステークホルダーとしては、数字だけでなく、

数字の前提となる経営者の事業見通しやその妥当性を理解する必要性が今後益々重要になるだろう。

 

会計士が会計監査でチェックしてくれるんじゃないの?

確かに、会計士は会社の数字を会計監査する。

 

君和田氏は「会計士は過去のことを見るのは得意だが、

将来の見積もりは不得意」と指摘する。』

 

会計士は、会計、監査には詳しいが、

経営や会社が営む事業のプロではない

少なくとも、そのようなスキルは試験制度にも無いし、教育研修にもそれほど時間を割かれていないだろう。

ぶっちゃけ、

経営者が提示する将来の見積もりが明らかに合理性を欠いたり、蓋然性に乏しかったりしない限り

 

”ノー”は言えないだろう。

 

ということで、一般のビジネスパーソン

アカウンティングリテラシーの重要性

が今後益々問われることになる、というお話でした。