溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

だったら、AIに会計監査を代わってもらえば?

 

www.nikkei.com

『大手監査法人人工知能(AI)を活用した会計監査が広がっている。監査法人トーマツは財務情報などを自動分析するAIシステムの分析件数を2割増やす。EY新日本監査法人も会計の異常値を検出するシステムを導入した。大企業の会計不祥事が相次ぎ、監査の信頼性向上が課題となるなか、AIの導入で不正を発見しやすくする。業務効率化で会計士不足に対応する狙いもある。』

 

AIの進化によって駆逐される仕事の代表に会計士(会計監査)が挙げられる。

賛否はあろうが、AIがやった方が速く正確でコストも安いのならば、一刻も早くAIに進化してもらいたいと個人的には思う。

担い手が不足(なり手が減少)する不人気な仕事を無理に続ける必要はない

(それも一般に難関と言われる試験をクリアしてまで)。

 

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確かに、会社の取引規模が大きくなると会計監査でサンプリングする取引数も膨大になる。数を熟してナンボの仕事は自動化した方が効率的だし、記事が言うように、

『2017年度は1300件強だった分析数を、今年度は2割増やす。データを専門的に扱うデータサイエンティストも増員する。「会計士が専門的な業務に集中できるようになる」』

というのも表面的には理解できる。

 

しかし敢えて問いたいのは、

 

会計士が集中すべき専門的な業務って何?

 

定型業務は自動化して、人間(会計士)ならではの専門的な業務へ集中、

耳障りは良いが、一体どんな業務を言っているのだろうか?

 

AIが検出した怪しそうな取引を関連証票から検証して、不正を暴く、ことを意味しているのだろうか?

会計監査は、不正を暴くというより批判的機能(会計処理の間違いを指摘)と指導的機能(間違いを正すように会社を指導)だが、それを意味しているのだろうか。

 

だとすると、

 

無理だね(たぶん)

 

もちろん、AIが膨大な取引の中から会計処理の間違いや不正、いわゆる不適切会計処理を検知するかもしれない。その可能性は大いにある。

 

しかし、会計監査で問題になる、つまり不適正意見の原因となるような間違いや不適切会計処理は質もさることながら量、金額的な重要性も考慮される。

ちりも積もれば山となるように、細かい間違い等を積み上げた結果それなりの金額になることはあろうが、昨今、不適切会計処理で問題となった会社の例を見れば明らかなように問題はそういうレベルではない。

人力では発見できないような細かい不適切会計処理の話をしているのでなく、もっとデカい話でしょう、問題は。

仮に手口が巧妙であるなど発生直後はタイムリーに(発見)指摘できなかったとしても、意図した不適切会計処理は継続的に行われる

しかも、その金額は累積的に大きくなる。


つまり、そんな大きな問題ならAIでなくても気づくだろうし、AIの助けを借りないと集中できない業務ではない。

 

問題は、不適切会計処理を発見しても、会社に指摘できなかったり、指摘しても修正等させるように指導できなかったりする環境ではないだろうか。

 

巷では、監査対象の会社から直接監査報酬を得ているから適切な指摘ができない等、そもそもの会計監査制度の欠陥を指摘される。

それも確かに一因だろうが、それだけでもない。

会社から監査報酬を得ているといっても、会社を窓口として得ているのであって経営者から得ているわけではないから『会社』に遠慮する必要はないのだけど・・・

 

ぶっちゃけ、会社も、そして当の会計士自身も

会計監査を重視していない

ことが根幹のように思う(この点は深いのでまた次の機会にでも)。

 

取引発生の事前に会社に相談されない時点で

会計監査は失敗

だと思う。

会社が質的にも金額的にも大きな取引を為そうとする場合、当然その後会計処理の話になり決算数値へ影響するのだから、会社の想定通りで問題ないか監査法人へ照会するだろう、普通。そうしないということは、会社は少なくともそうするだけの重要性を感じていないということだろう。

であれば、そんな相手から間違いだと指摘されたとしても反応は言わずもがなだ。

 

会社(経営者)と監査法人の関係を改善しないことには、

会計士が専門的な業務に集中しても根本的な解決にはならないと思う

 

例えば、

AIが指摘したら事態は変わるのだろうか?

 

だったら、一部と言わずに会計監査の全部をAIに代わってもらいたいものだ。

 

ちなみに・・・

以前は(と言ってもそんなに昔でない)は、会社(経営者)と監査法人が『良い』関係を築いていた例が多くあったと思う。経営者と堂々とやり合っている先輩会計士を見て憧れたものだ。経営者にとって担当の会計士(パートナー)は耳の痛いことを言われる存在ではあるが、それでも会社や自身にとって必要な存在だという認識が感じられた。経営者と会計士が互いにリスペクトする環境だったから、我々は会社(クライアント)の方々からも多くを学ばせてもらい、会計の専門家としてだけでなく社会人として成長することができたと思う。そうした環境で得た知見をクライアントたる会社に提供し、お互いが学び高めあう関係、そんなに難しいことだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

大塚家具のGC注記の本当の理由とは!?


www.nikkei.com

8/14に大塚家具が開示した2018年1~6月期の決算短信「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」が記載された。ゴーイングコンサーンGC)注記については、こちら☟に記載しているので参考にしてほしい。

globis.jp

備忘録として事務所ブログにも記載しておく。

 

簡単に言えば、近い将来会社が倒産する可能性が高いと考えられる場合にGC注記は記載される。投資家などステークホルダーにとっても極めて重要な注意喚起となるため、財務諸表の直後(注記の筆頭)に記載される。

 

近い将来の倒産リスクといっても、その大小が経営者の主観によってブレてはいけない。そこで、開示ルールでは近い将来の倒産を示唆する以下の具体的な状況を例示列挙して、これらの状況に該当する場合にはGC注記の要否を検討して判断することになる。

 

GC注記が必要となる会社の状況例】

・売上高の著しい減少
・継続的な営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスの発生
・借入金等の返済の困難性
・新たな資金調達の困難性
・主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・重要な市場又は得意先の喪失
・事業活動に不可欠な人材の流出
・ブランド・イメージの著しい悪化 等

 

財務諸表の注記は本来、財務諸表の作成責任者である会社の経営者が判断することになる。しかし、普通の神経ならGC注記は避けたいところだろう。自らウチの会社は近い将来倒産するかもしれませんよ~、と公言することになる。

対象になる会社は主として上場会社であり、監査法人の会計監査が必要になるため、実務的には監査法人が開示ルールにしたがってGC注記の必要性を経営者へ指摘、経営者と検討協議して判断に至ることになる。

 

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大塚家具のGC注記は、

営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続

を主たる原因している。

 『継続的な』営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスとは最短で言えば2期連続となるが、実務上は2期連続で赤字が確定してもその時点では来期計画が策定されており、

3期目が黒字計画であれば3期目の計画達成を見てのGC注記判断

となることが多い。

 

大塚家具は、

2017年12月期の決算発表時点での

2018年通期計画では

 

売上高    45,663億

営業利益   200億

当期純利益    1,390億

 

と黒字計画を公表していた。ちなみに、第2四半期までは、営業&経常赤字の計画。

ところが、当第2四半期の決算発表時点で、通期計画を以下に修正した。

 

売上高          37,634億

営業損失        5,100億

当期純損失    3,426億

 

つまり、第2四半期の業績発表時点(通期の8.5か月経過)で、

3期連続営業赤字(そしておそらく営業キャッシュ・フローも赤字だろう)が見えたため、このタイミングでのGC注記となったと思われる。

 

しかし、それ以上に要注意なのが現金(現金及び現金同等物)の状況だ。

 

会計監査の賞味期限は1年だ。

GC注記に関して言えば、仮にGC注記を記載しない財務諸表に適正意見を付した場合、その会社が1年以内に倒産すれば監査意見の適正性が問題となる。つまり、GC注記が記載されたということは今後1年以内の倒産可能性が高いという状況を意味する。近い将来の倒産というのは具体的には今後1年以内ということだ。

継続的な営業赤字や営業キャッシュ・フロー赤字ももちろん問題だが、実はそんな会社は結構存在する。2,3年の赤字では会社は倒産しないケースは多い。

 

会社の生死を分けるのはおカネだ。

出血しても輸血があれば当面生き延びる

ことができる。

 

大塚家具の最近の現金残高と営業キャッシュ・フローの状況をチェックすると以下。

 

【現金及び現金同等物期末残高推移】

         (単位:百万円)

2015年12月期   10,971

2016年12月期     3,853

2017年12月期     1,806

2018年  6月期     2,205

 

2.5年の間にざっと80億円以上のおカネが減少した。

特に、2015年から2016年にかけての現金残高の減少が目を引くが、例のお家騒動の影響で60億近い営業キャッシュ・フロー赤字に加えて配当金支払などで一気に70億の減少となった。2018年の第2四半期は保有資産の売却などで何とか少し残高を回復させているが、当第2四半期の22億という水準は、2018年の通期予想売上高で

手元流動性は約21日と1か月を切る水準だ。

 

【営業キャッシュ・フローの推移】

                                 (単位:百万円)

2015年12月期   269

2016年12月期 △5,770

2017年12月期 △4,785

2018年6月期   △2,080

 

直近2年度は、毎年50~60億の現金が事業により流出している。この調子で営業キャッシュ・フローの赤字が継続すると、いずれ手持ち資産の売却も底をつくだろうし、資本提携先など大口のスポンサーの登場無しでは

手持ちの現金がすぐに底をつく

ことは想像するに難くないだろう。

 

GC注記には、会社の状況改善策も併せて記載されている。

大塚家具では、対応策として
①店舗規模の適正化によるコスト圧縮
②人員再配置によるコスト圧縮
③売上改善策
④安定的な財務基盤の確立

その中でとりわけ重要視されるのが④だろう。日経記事にも、

『「資本増強や事業シナジーを生む業務提携について様々な選択肢を多面的に検討する」との文言も付された。ただ「提携先などについて具体的に決まっていることはない」(広報部)という。』

との記載。①~③ももちろん重要だがすぐに出来るか、効果が出るかというと定かではない(だったらとっくにやっているだろうし・・・)。

会社の生死という意味ではまずは資金流出を止血することが重要だろう。

 

大塚家具の第2四半期財務諸表にGC注記が記載された原因は営業損失やマイナスの営業キャッシュフローの継続とあるが、それを補う

資金調達の宛てが確保できていない

短期的な事業継続の可否と言う点では、これこそが問題だろう。

現在候補として挙げられている会社との提携がどう進捗するかは大塚家具にとって

バイタルだ。 

四半期情報開示は不要なのか?

 

r.nikkei.com


少し前になるが、日経に
四半期開示は不要か?
と言う記事があった。

四半期情報の開示(四半期報告制度)は、2008年4月1日開始事業年度から義務化された。対象は上場会社等。つまり、上場会社はマスト。非上場会社でも有価証券報告書を提出している会社(継続開示会社)は半期報告書の代わりに四半期報告書を提出することもできるというもの。

四半期報告制度導入以前は、上場会社等は半期報告書を開示していた。想像に難くないが、

イムリディスクロージャー(適時開示)が変更の趣旨だ。要求したのは、投資家。

投資家の投資行動の変化、投資期間(投資してから収益を認識するまで期間)が短期化したことが理由とされる。
四半期情報はアメリカで既に導入されており、日本の株式市場に外国人投資家の存在感が増したため、彼らの要求を日本市場も受け入れた、ということだ。

さて、四半期報告制度、そもそも導入時に
本当に要るのかな?
と疑問だったのを覚えている。

従前から半期決算情報を含む半期報告書制度があるわけだし、四半期といっても
短縮期間は90日(3か月)。


その90日が勝負を決めるんだ!!と言われれば、そうなんかなぁと言わざるを得ないが、当時の僕には90日を短縮する積極的な理由はイメージできなかった。

また、半期の業績報告の間、会社から何も情報開示が無いかと言うと、そうではない。上場会社は、一定の要件を満たす重要イベント(社長の交代や業績の上方下方修正など会社にとって重要なイベント)は東証の適時開示ルールにしたがって、イベント発生後速やかにその旨や影響等をディスクローズする必要がある。

www.jpx.co.jp
半期ごとにまとまった業績報告をしてその間の重要イベントは発生ベースで対応
これで十分ではないか、という疑問を導入当初に感じた。


コストの問題もある。追加コスト無しであればまだしも、会社からすれば決算報告が年2回だったのが、年4回に倍増する。事務コストの増加は必至だ。また、監査法人のレビュー業務も必要だ。半期報告書に含まれる半期決算書までは監査証明が必要だったが、四半期決算書に対してはスピ―ド重視でレビュー報告書と言う監査よりも若干手続きを省いた手続きとなる。とはいえ、最低限必要な作業はあるので、やはり回数が増えれば監査コストは増える(実際、これを理由に年間の監査報酬を増額してもらってたし)。

四半期報告書に含まれる情報は、会社からのコスト負担の要請を受けて導入当初から3年後に簡素化された。具体的には、一定の注記を条件に、第1四半期と第3四半期の(連結)キャッシュ・フロー計算書の作成等の省略が可能になった。

そんな四半期報告制度だが、ここに来て疑問視する声が上がっているらしい。

記事には、
短期で成果を出すよう経営者や投資家に心理的な圧力
を掛けるというものだ。』

この点は、アメリカの著名な投資家であるバフェット氏も指摘してる☟ 


www.nikkei.com


少し引用。
『企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ』

短期間の業績開示が、経営者に対する短期成果主義へのプレッシャーとなり、長期的な視点に立った経営がおろそかになる、それどころか粉飾決算を助長する、というものだ。
バフェット氏に限らずこういった批判は少なくない。
(バフェット氏に限っては、情報開示のあるべき論というよりは自社の都合と言う面もあるようだが・・・)

日経記事では、『英国では07年に導入された四半期開示の義務が14年に撤廃された』
とのこと。

しかしながら、同時に、次のようにも言っている。

『最近発表された学術論文は、わずか7年で制度が大きく変化した英国を取り上げた。開示義務の導入と撤廃が企業や市場に与えた影響について、その論文は分析。上場企業の設備投資や研究開発費を見る限り、義務化で経営が短期志向になるとか、撤廃で長期志向になったとの変化は見いだせないと結論づけた。』

会社視点、投資家視点では意見の相違もあろう。会社側の視点に立ってきた感想としては、IRへの度重なるコスト増加や投資家からの短期での成果要求などはかえって

会社を弱体化させるのではという思いも理解できる。しかし、
投資家あっての会社だし、会社あっての投資家、
どちらかの主張では無くお互いの合意、あるいは
合意に至るコミュニケーション
こそが重要ではないかと思う。

コストを費やして四半期情報を作成しても投資家に有用な情報とはなり得ない、というのは、会社が決める話ではなく、投資家が決めることだ。投資家にとって有用な投資情報であるならば会社はそれに応える責任がある。もちろん、一部の投資家の要求が偏っているとか不合理な場合もあるだろう。その場合は、行き過ぎた情報開示のコストは会社のフリーキャッシュフローを引き下げ、企業価値を低下させるため、投資家へブーメランで返ってくることになる。

 

また、投資家が短期志向になっているからと言って、会社の経営視点が短期化する必要もない。それを言い訳にするのは筋違いだ。会社と投資家の見解に違いがあれば、ギャップを解消すべくコミュニケーションを取るなりの努力をすれば良いだけのことだ。イギリスの例でも紹介されているが、四半期情報の開示が無くなったからと言って会社の事業戦略が長期化した訳でもないらしい。自分たちができないことを他責にするのはどうかと思う。

当時は成り行きとして導入された四半期情報開示だが、改めてその是非を検討することは、企業と投資家がお互いの存在意義やそれを踏まえて資本市場の一層の成熟には必要なプロセスではないかと思う。

 

と、こんな情報が・・・

 

 

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 この方もバイアスがかかってそうな気もするが、近々動きがあるかも・・・

在庫評価益って何だ?(再び) 【昭和シェル石油の例】

先日、別件でこちらのコラムを書いた☟

 

在庫評価益って計上しても良いの? | GLOBIS 知見録

 

在庫評価益の概要についてだが、こちらではもう少し突っ込んでみたいと思う。

 

このテーマについては過去数度書いているので既読の方もいると思うが、

まとめということで理解いただきたい。

 

何に突っ込むかと言うと、

 

在庫の仕入価格変動と

す在庫評価方法の関係

 

だ。

知見録コラムにも書いたが、昭和シェルのような相場モノを扱う会社では

在庫の価格変動が業績へ与えるインパクが大きくなる可能性が高い。

そのため、仕入れ価格の変動を業績説明でも大きく取り上げる。

 

では、そのような会社はどんな在庫評価方法をとっているのだろうか。

 

会計方針に記載される在庫(棚卸資産)の評価方法には、大きく

 

先入先出法

 

平均法

 

がある(他に、個別法、売価還元平均法、最終仕入原価法もあるがここでは省略)

 

コラムで使った設例を使って説明する。

 

設例

期首に@100円の商品が100個 あり、当期中に@150円で900個仕入れ、800個販売し、期末に200個残ったとする。

期首  100個 @100円
仕入  900個 @150円
販売  800個 @ ?円
期末  200個 @ ?円 

在庫評価方法によって、?部分、つまり

期末在庫単価、そして差し引きで販売された在庫単価が変わる。


平均法の場合、

期末在庫の単価=(@100円*100個+@150円*900個)/1,000個=145円
また、総平均法の場合は販売された在庫の単価(売上原価)も@145円となる。

 

売上高は@200円とすると、

売上高=@200円*800個=160,000円

利益=売上高―売上原価=160,000-116,000(@145*800)=44,000円

先入先出法だと、以下。


先入先出法:
期末在庫単価:@100円(期末残200個は当期中仕入の900の内200個が残ると考える)
なので、期末在庫金額は@150円*200個=30,000円となり、
売上原価=(@100円*100個+@150円*900個)-30,000円=115,000円

 

売上高=@200円*800円=160,000円
利益=売上高―売上原価=160,000-115,000=45,000円(>平均法:44,000円)


先入先出法では、仕入れ値が低い(値上がっていない)在庫から先に払い出す(売上原価)ため、仕入れ値の値上がり局面では、平均法に比べて利益は高く、期末在庫金額も高くなる。

 

ちなみに、現在は使用不可であるが、後入先出だと以下。

 

後入先出法:
期末在庫単価:@100円(期末残200個は当期中仕入の900の内100と期首100個が残ると考える)
なので、期末在庫金額は@100円*100個+@150円*100個=25,000円となり、
売上原価=(@100円*100個+@150円*900個)-25,000円=120,000円

売上高=@200円*800円=160,000円
利益=売上高―売上原価=160,000-120,000=40,000円(<平均法:44,000円)

 

後入先出法では、値上がり後の高い在庫を優先して払い出すだめ、売上原価が最も高くなり、利益は最も低くなる。

 

先入先出法:利益 45,000円   大 
総平均法法:利益 44,000円 中
後入先出法:利益 40,000円 小

 

では、先入先出法が会社に最も好ましいのかというとそうではない。以上は、在庫の値上がり局面での話であるので、逆に値下がり局面では後入先出法が最も有利になる。

つまり、先入先出法、先入先出法は在庫の仕入価格の変動の影響が大きく出やすい(有利か不利かは相場による)ということだ。

昭和シェルなどが、平均法を選択しているのは仕入価格の変動が利益に与える影響を中和するためとも言えるだろう。

 

なお、後入先出はIFRS(B/S重視)の影響もあって2010年4月1日開始事業年度以降(3月決算会社だと2011年3月期)廃止となったので現在は使用不可。

後入先出法は、売上原価を通じて現在の仕入単価を『利益』に反映する、つまりフレッシュな利益を計上することに意義があると言える。計算上、利益の大小で有利/不利と言うことだけでなく、経営管理上は実勢価格と計算される利益の一致が経営課題の把握や対策の検討に有用だ。現実に起こっていることと数字とに乖離があると経営判断が間違う可能性が高まるということだ。

ラグによって数字が良く見えるのは、

アパレルショップのやせて見える鏡のようなものだ。

 

MRJ 消えた4,000億円の行方を追え!? 【三菱重工の例】

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180620&ng=DGKKZO31979490Z10C18A6EA1000

 

6/20付日経朝刊の記事。

 

あ~、ついにMRJも減損か・・・

 

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と思って読むと、何と

 

『損失なしで資産減額』

 

とのこと。

 

記事を読んでなるほど、そういうことね。

でも、この内容って分かりにくいよな(記者もよく理解していないのでは?)ということで、三菱重工が発表した減損無しで資産減額のスキームをこちらのコラム☟で説明してみた。

appapi.globis.jp

 

【損失なしで資産減額のカラクリ】

 

P/Lに減損損失を計上することなくMRJに係る資産を減額するスキームを理解するには、

 

減損会計(それも日本基準とIFRSの違い)

 

IFRS適用初年度の処理

 

の2つを理解することが前提になるため、会計に多少明るいビジネスパーソンにとっても理解は容易ではないと思うのだがどうだろうか?

 

今回の三菱重工の会計処理(といっても、2019年3月期の業績予想に関する発表なので正確には未定なのだが)は①②がそろって初めて成立する

 

減損会計の日本基準とIFRSの違いについては、減損判定プロセスに違いはあるものの、仮に三菱重工が以前からIFRSを適用していて2019年3月期にMRJの減損が必要と判定されるのであれば、2019年3月期のP/L(連結P/Lだが、ややこしいのでP/Lとする)に減損損失として計上される。日本基準では特別損失、IFRSでは営業費用と損益区分の違いはあるものの、いずれの基準であっても減損損失はP/Lへ計上される。

 

ちなみに、IFRSに比べて日本基準の減損判定がユルいというか慎重なのは、減損の『戻し入れ』の可否が1つの理由だろう。

日本基準では、一旦減損するとその後資産の収益性の回復が認められたとしても減損の戻し入れはしない。IFRSでは、のれん以外の減損の戻し入れはありだ。そのため、IFRSでは

『ユー、減損しちゃいなよ、後で戻せばいいんだから』

と気軽に減損ゴーとなるのだが、日本基準では一旦減損したら後戻りはできない。

『気軽に減損するなよ~、するなよ~』

ということだ。

 

話を戻して、IFRSでも減損はP/Lに計上されるが、ここで効くのが②だ。

 

IFRS適用初年度に関しては、以前からIFRSを適用してきた体を作る。つまり、日本基準で作成してきた過去の決算書を全てIFRS遡及修正する必要がある。とはいえ、IFRS適用初年度に有価証券報告書に開示される(連結)財務諸表は2期分のみ(適用初年度とその前期分)だ。それ以前の(連結)財務諸表を開示する必要はない。そのため、コラムに記載のとおり開示対象の2期分以前の日本基準とIFRSとの差異の金額は、適用初年度の前期の期首のB/Sに集積されることになる。

 

そして、ここがミソだが、日本基準の減損判定なら今までMRJの減損は不要だったがIFRSならとっくに減損必要だったよね、ということで過去の日本基準の(連結)財務諸表を修正する、

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これらの結果、4,000億円とも言われるMRJ減損損失が2019年3月期に開示される2期間のP/Lには表れないことになる。

 

これが損失無しで資産減損のカラクリだ。

 

 

ちみなに、IFRSの適用初年度の遡及修正も過去の見積もり自体を見直すことはできない。あくまでMRJから期待される将来キャッシュ・フロー自体は以前の見積もりのままで単に割引前(日本基準)だったから減損不要だった、割引後(IFRS)なら減損必要になったということで、どさくさに紛れて将来キャッシュ・フローの見込みをこの際グッと引き下げて減損損失を過去に葬り去る(P/Lに出さないために)のは✖だ。

 

まあ、対外的に発表しているということは監査法人との協議の上だろうから、そういうことはないのだろうし、会計上は問題ないということだろう。

 

IFRSと日本基準の違いだけでもこうはならない。

IFRS適用初年度というタイミングが合わさってこそ

会計処理、損失無しの資産減額。

 

なるほど、考えたものだ。

 

【2018年度決算に与える影響】

 

三菱重工の2017年度決算説明資料

https://www.mhi.com/jp/finance/library/result/pdf/h30_05/setsumei.pdf

 

によれば、MRJに関連する減損見込みは約4,000億円で来期(2018年度)の連結純利益は約800億円だから、仮に日本基準のままで進行期(2018年度)にMRJの減損をしたら2018年度は赤字ということだ。

 

ということは・・・

 

性格の歪んでいる僕はどうしても穿った見方をしてしまう。

 

監査法人時代であれば、仮に会社からこういう相談されてもそんなのB/S見れば過去分に減損損失巻き込んだのすぐバレるから意味ないですよ、却って逆効果だと思います、と回答したと思う。

 

けど、意味なくないんだよね、多分。

 

一般の人は、P/Lしか見ないし(笑)

B/S、しかも過去のB/Sまでチェックするのは会計の専門家ぐらいだろうか。

 

だとすると、会社にとっては結構な意味のある処理とも言える。

 

ルールの範囲内ではあるけれども、ルールの隙間を突いたというかなんというか、

 

相撲で言えば、猫だまし

野球で言えば、隠し玉

サッカーならば、ボール回し(ちょっと違うか?)

 

といったところか。

 

三菱重工の決算発表を見ていないから何とも言えないが、

どういうトーンでこれを発表したのだろうか。

 

ドヤ顔

 

でなかったことだけを願うばかりだ。

 

それにしても、今回のMRJを巡る三菱重工の処理、一般のビジネスパーソンに理解しろと言うのも酷な話(ぐらいの難易度)だが、さりとて金額で4,000億円、そして会社の業績が赤黒逆転するという質量ともにインパクト大な事象となれば、まったく理解しなくて良いとも言い切れないのではないか。

 

巨額の減損予備軍を抱えた会社

IFRSへ移行する例が今後増えないとも限らない・・・

 

益々、ビジネスパーソンのアカウンティング・リテラシーが問われるようになることは間違いなさそうだ・・・

 

粉飾分析官は機能するのか?


www.nikkei.com

 

少し前の記事(日経)になるが、会計評論家の細野氏に関する興味深い記事。

 

東芝富士フイルムホールディングスなど、企業の会計不祥事が後を絶たない。背景には会社に雇われている監査法人が、顧客である企業に強い姿勢で臨めない構造上の問題があるとされる。そんな中、数多くの有名企業の粉飾決算を暴いてきた会計評論家の細野祐二氏が主要企業の財務諸表を分析したリポートを出した。』

 

ということで、独自の企業分析の手法の概要の記事。

 

『「キャッシュフロー(現金収支)」や簿外債務など計78項目をピックアップし、独特の重み付けで評点した。』

 

 

5段階に区分され、営業キャッシュ・フローが赤字、

M&Aによる多額ののれん等を抱える会社の評価が低くなる仕組みとのこと。

 

会計監査を担当する公認会計士の頭の中を整理して数値化したものというイメージだ。専門家の頭の中を見える化したという意味で、意義のある分析資料だと思う。

 

意義深い分析資料だとは思う、一方で、

実際の活用局面を考えると色々と疑問も浮かぶ・・・

 

【分析資料をどう使うのか?】

 

分析報告書は東京経済が販売するとのことで、おそらく一般に入手可能と思うが、一体だれが購入するのだろうか?

 

企業が、ウチはどう評価されているのか?

投資家が、危ない会社はどこか?

銀行も、危ない会社はどこか?(←取引先、従業員も)

 

など考えられる。

この分析報告書がどれくらいの社会的なインパクトがあるかにもよるが、

あくまで専門家による1オピニオンである(と思う)。

しかもおそらくは、会社ごとの個別事情を斟酌した判断ではなく、いくつか(記事には78項目)の基準に照らした『客観的』評価結果であろう。

とすれば、評価結果の活用は分析者のリテラシーが問われるのではないかと思う。

つまり、財務評価についての専門知識を持たない人が当該分析結果を

鵜呑みにして、あの会社は危ない、と盲目的に信じると(で、行動に移すと)それこそ危ないな、と・・・

 

青山学院の町田教授は記事で以下のコメント。

 

『町田教授は「実際、専門能力があり独立した立場にありながら、企業の内部に立ち入って事業をみられる監査人だけが判断できる。監査人が適正だとした判断を疑う合理的根拠を我々は持ち合わせていない」と話す。』

 

『町田教授は細野氏の手法について「財務諸表の分析でもかなりのことがわかるのは確かだが、事業の詳細や将来計画までは外部から知り得ない圧倒的に情報が不足している外の人間が『不正』と言うのは乱暴な議論だ」と指摘する。』

 

全く同感。

会社の財務諸表を通じて財政状態や経営成績に対する判断(監査意見)を下せるのは担当する監査法人のみだ。

 

監査法人にとっては有用か?】

 

会計監査を担当する会計士にとっては、この分析結果はさほど影響はないと思う。というのも、先述のとおり、分析結果は会計士の頭の中を見える化したものに過ぎない。細かいリスク分類はともかく、会計監査上問題になりそうな(不適正意見や意見差し控え)レベルの会社であれば、まともな会計士の意見も分析結果の『危険』や『警戒』と一致するだろう。

細野氏も指摘しているが、問題は、会計士がこのような危ない会社を見分けられないのではなく、

分かったうえでNOと言えない構造的な問題

ということだ。

 

『会計に詳しい青山学院大の町田祥弘教授は「細野氏の主張の焦点はまさにこの点で、『監査が甘いのではないか?』と挑戦しているに等しい」と指摘する。これは細野氏が「監査法人企業から高額の監査報酬を受けているから、顧客と対等な立場でモノを言えない」という主張と重なる。』

 

この点は、粉飾決算(最近は不適切会計などという曖昧な表現が多様されるが・・・)の度に指摘される。この点については過去記事参照☟・・・

 

tesmmi.hatenablog.com

 

【分析資料は会計監査を後押しか?】

 

是非はともかく、監査法人にとっては黒を黒と言えない事情がある。

会計監査は、会社と監査法人の言わば密室で行われる。密室での判断だからこそ、場合によっては(危ない会社ほど)歪んだ判断となるおそれがある、したがって、

会計監査の見える化の作用がこの分析資料にはあると思う。分析資料の利用者は自ら会社の財務状況に対するジャッジを下さないまでも、事前情報として(細野氏の)分析結果を利用する。それと監査法人の会計監査の結果を照らし合わせて、

会計監査の結果の妥当性を判断する。

もし、分析結果とはかけ離れた監査意見が表明されたとすれば、社会的な視点からのチェック(例えばメディアなどを通じて)が入る、という感じだろうか。監査法人に対しても会社に対しても、

歪んだ監査意見に対する抑止力

として期待される可能性はある。

 

【粉飾分析官の位置づけは?】

 

粉飾分析官という制度は(日本)には無い(と思う)が、記事には欧米では慣行があるとのことから『公認不正検査士(CFE)』とは異なるのだろう。

 

『欧米の資本市場では監査法人とは別に、会計に詳しい「粉飾分析官」なる者が企業の財務諸表を読み込んで警告する慣行がある。細野氏が目指すのもまさにこれだ。「監査法人とは異なる立場で企業を監視し、多面的に会計を分析する土壌を日本でも根付かせたい」と話す。財団法人の設立も検討しているという。』

 

どうなんだろう・・・

確かに粉飾の手口や摘発のスキルという点では期待できるかもしれない(会計士は粉飾のチェックを専門としているわけではない)。しかし、粉飾を含む不正の手口や摘発にはCFEも相当のスキルは有していると思う。

ということは、独立性の強化ということだろうか?CFEは企業の従業員だったり、コンサルタントだったりすることが多く(弁護士、会計士等の専門家がCFEを兼ねる場合もある)、『報酬はどこから問題』

に照らすと粉飾の当事者である会社(経営者)に対して強気で向かえるのか?という問題がある。

粉飾分析官は、会社から報酬を得ない公務員的な存在なのだろうか?加えて、警察や税務署のような強制捜査反面調査権を持つのだろうか?

気になるところだ。

 

自身も公認会計士である細野氏が監査法人体たらくに業を煮やしての粉飾分析官の提案ということかもしれない。

粉飾決算に対する抑止力として期待したいが、

個人的には監査法人(会計監査)に頑張ってもらいたい、と思うんだけどなあ・・・

 

 

 

 

イニエスタの人件費は販管費なのか!? 

www.nikkei.com

 

 サッカーは詳しくない(あまり観ない)のだが、さすがにイニエスタは知っている(といっても、知っているだけ)。


イニエスタ選手の獲得でJ1神戸では入場料やグッズ販売を増やす考え

 

 

 

へ~、Jリーグに来るんだ~

 

程度の認識でいたら、とんでもないビッグニュースだったと知る・・

(と指摘され気づく)

 

サッカーファンにとっては、

イニエスタが日本に、Jリーグにやって来る、

あるいはその年俸額に驚いたかも知れないが、

 

僕は日経の記事に驚いた…

 

この書き方、わざとなのかな・・・

楽天は傘下のサッカーJ1神戸がスペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手を獲得したことで、2018年12月期に年俸の約半分の十数億円を販管費として計上する。』 

 

イニエスタ⇒年俸⇒販管費

⇒広告宣伝費

 

と連想する人も多いのではないだろうか。

 

だとすると、敢えてミスリードするような記事に思える。 

 

【サッカー選手の年俸の会計処理】

 

サッカー選手の年俸の通常の会計処理は☟

を参考にしてほしいが、

 

選手の年俸は通常は売上原価

 

に計上される。

 

appapi.globis.jp

 

一般公開されているJリーグ加盟クラブの決算情報は添付のように詳細までは把握しにくい。特に売上原価と販売費及び一般管理費の区分が掴みにくい。

 

Jリーグ加盟クラブの決算書一覧は☟

https://www.jleague.jp/docs/aboutj/club-h28kaiji_02.pdf

 

コンサドーレ札幌(北海道フットボールクラブ)は、一時期継続開示会社に該当したため有価証券報告書を提出していたので、決算情報が詳細に把握できる。

 

www.consadole-sapporo.jp

 

コンサドーレ札幌のH25年度の有価証券報告書

http://www.consadole-sapporo.jp/wp-content/uploads/2015/05/yukashoken-h2512.pdf

 

36,38pを見ると選手の人件費が売上原価へ計上されているのがわかるだろう。

 

【費用の区分方法】

 

費用の区分方法に形態別分類機能別分類がある。

詳細説明は別の機会にしたいと思うが、簡単にいうと、費用の

名目で区分する方法が形態別分類だ。

給料として支払ったら人件費という具合だ。これに対して、

機能(目的)で区分する方法が機能別分類だ。

広告宣伝活動に従事する従業員に対する給料は会社にとっては広告宣伝活動費用の一環というこ意味で広告宣伝費に含める。

 

機能別分類は管理会計では使用されるが、

財務会計、つまり決算書作成では形態別分類を適用する。

ただし、研究開発費機能別分類の考え方だ。

会社の将来性を評価する上で、研究開発活動が重視されるため、研究開発の投じた費用を広範囲に把握しようという目的だと思う。

とは言え、研究開発費のように研究開発部門に属する人員や活動がほぼほぼ研究開発活動に従事しているように、部門や活動内容が明確であれば費用の把握はしやすいが、年俸の内、一部が製造活動、一部が研究開発活動となると、

人件費を活動ごとに区分する必要が生じる。

区分の基準として、それぞれの活動に従事した時間で区分することが考えられる(面倒だが)。

 

イニエスタの場合はどうか?】

 

イニエスタに当てはめると、そもそもサッカー選手としてプレーが中心(契約)だろうし、選手としての時間と(ヴィッセルの)広告宣伝活動としての時間はさほどだろう(よく知らないが)。

では、効果による配分はどうか、となると、

将来の効果をどう合理的に見込むか

が問題になる。

 

仮に合理的な基準を設定して売上原価と販管費に区分したとしても、結局は売上原価か販売費かの区分に過ぎず、営業利益は不変なので、苦労して区分するインセンティブも無いのではないだろうか。Jリーグの決算情報では売上原価と販売費を区分してる会社も多くないことだし…

 

また、形態別分類は費用を発生(あるいは支出)タイミングで把握する。

例えば、給料として従業員に支払った際に『人件費』を把握するので、費用の管理(予算と実績の比較も)がしやすい。

 

では、日経記事の販管費とは何を意味するのか?

 

正解はなんのことはない、営業費用を意味しているのではないかと思う。

 

実は、日経記事の後半部分にも以下の記載がある。

 『年俸は下期からチームを運営する子会社

楽天ヴィッセル神戸」の人件費に計上する。

連結では営業費用となる。』

 

実は、楽天会計基準IFRS国際財務報告基準だ。

 

楽天の2017年度決算短信は☟

https://corp.rakuten.co.jp/investors/assets/doc/documents/17Q4tanshin_J.pdf

 

ちなみに、楽天は2013年度からIFRSへ移行したが、2012年度までは日本基準だったので、

 

売上高-売上原価(=売上総利益)-販管費(=営業利益)

 

のP/Lフォーマットだった。

 

IFRSのP/Lフォーマットでは、売上総利益はマストではない

つまり、売上原価と販管費を区分することなく

 

売上原価+販管費=営業費用

 

とすることも可能だ。

もちろん、会社の製造業など事業によって、会社の業績をより分かりやすく伝えるために売上原価と販管費を区分することもできるが、楽天はその必要がないと考えたのだろう。

そして、当然ながら、

 

営業費用≠販管費だ。

 

ということで、おそらくは記事の書き間違いではないかというオチ(笑)

 

だが、

 

もしかしたら・・・

 

今期のヴィッセル、そして楽天の決算が楽しみだ。

 

 

ところで、

 

イニエスタ選手の獲得には移籍金は発生していない。』

 

ちなみに、移籍金が発生する場合は、無形固定資産に計上して一定期間(通常は契約期間)で償却されるらしい。

第185回(A) 「サッカー選手の移籍金と会計処理」【ケース・スタディー】|メールマガジン|株式会社ディーバ