溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

単年度赤字は悪いのか?

少し前の件ですが・・・

「赤字って本当にいけないことですか?」東京糸井重里事務所 篠田CFO×サイボウズ 山田副社長対談 | サイボウズ式

会話の中で、『今の会計制度って、知的生産で価値をうむ事業にはちょっと使いにくいな、と思っていることが、今回共感を覚えた根底にあります。 』とあります。おそらく言葉の綾だとは思いますが、これ、僕が会計監査に携わっていた時にクライアントから何度となく浴びせられました。『こんな会計制度は当社の状況を反映していない』『こんな会計処理をしたら(当社の業績等について)投資家等に返って誤解を与える』といった具合です。もちろん、現在の会計制度、ルールには改善の余地はあります。ですが、仮に完璧なルールであったところで、ルールである以上どこかで線引きをせざるを得ず、結果として誰かにとっては有利、誰かにとっては不利になります。例えばスポーツのルールも体格の違いによって有利不利が出ることもあります。ですが、選手はルールの枠内でベストなパフォーマンスを出すよう努力します。ルールに文句を言っても何も始まりません(ルール改正の提言は良いと思います)。以前から思うのですが、会計ルールに納得できないのであれば、複数の決算数値を作成してステークホルダーに説明すれば良いと思います。1つは会計ルールに則り粛々と作成し、もう1つは会社が会社の業績や価値を反映すると考える方法で作成して、株式市場で堂々と信を問えば良いと思うのです。もしかしたら会計ルールの改正の後押しになるかもしれません。

単年度決算の赤字についても、会社の実態を表していないと言うのであれば中長期事業計画で説明をすれば良いと思います。単年度の赤字がいかに将来の収益獲得に繋がるかを合理的に説明すれば、株主、投資家等の利害関係者も納得するでしょう。納得されないのであれば、会社の主張に合理性、蓋然性が不足していると言わざるを得ません。もちろん、中には短期的な視点の株主等もいるでしょうが、会社の経営にそれほど重要な影響があるのでしょうか?むしろ、会社にとって影響が大きいと思われる機関投資家等は中長期的な視点で会社を評価することが多いように思います。減損損失等による単年度赤字であっても、会社の将来の稼ぐ力が落ちていないのであればさほど株価の下落を気にする必要は無いと思います。株価が下落するのは、単年度赤字が問題ではなくてそれにより会社の将来の稼ぐ力が毀損したと評価されているからでしょう。おそらくは多くの株主、投資家は会計ルールのこうした問題も加味して概ね適正に会社を評価していると思います。会社(経営者)の方々には、単年度赤字が経営の実態を誤解されると疑心暗鬼にならずに企業価値を高めるように経営を考えていただきたいと思います。

話は少し逸れますが、長期的な視野に立った経営を目的として非公開化する会社もあります。いつも思うのですが、では、あなたの言う長期的とは何年ですか?例えば10年であれば10年後に会社がどのようになっているのかを事業計画に基づいて説明してほしいと思います。『長期的な視野に立って経営』というフレーズが、具体的な将来の事業計画を実現するためではなく、(おそらくは上手くいっていない)現在の経営状態や株主、投資家等の指摘からの『逃げ口上』になっているとすると、もしかしたら非公開化という選択は会社の状況をさらに悪くすることになりかねません。

会社(経営者)の気持ちもわかるんですけどね・・・