溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

ガバナンスランキングに思う


企業統治アジアランキング、日本3位 :日本経済新聞

 

9/26/14 日経朝刊から

 

企業統治アジアランキング 日本3位 らしい。

この評価の妥当性はちょっと置いておくとして・・・

 

ここで言う企業統治コーポレートガバナンス)は、要は

企業の外にいる株主、投資家、債権者等のステークホルダーから見て

企業の活動や業績の”透明性”が高いかどうか、というアングルからの評価

が中心だと思う。

 

業績の良し悪しももちろんだが、『え~、あの会社こんな不正やっていたの!?』

コンプライアンス違反するような会社とは思わなかったがな・・・』、

『あんな大それた横領着服するような従業員がいる会社は信用できん』といった

ように、ある日突然びっくりするようなインシデントを起こされるとそれまで

その企業を信用して付き合ってきたステークホルダーにとってはビッグアップセット、色々と思惑が外れることになるかも知れない。

悪いなら悪いで『ウチはやばい会社ですよ』とフラッグでも立てておいてもらえれば、対処もし易いというものだ。と、いうことで”透明性”が重要なのである。

 

組織としてみた場合のガバナンスは少なくとも2つの要素があると思う。

1つは組織の構成員のモラル、そしてもう1つは組織としてのルール。

組織の構成員、すなわち従業員のモラルは、教育水準、経済的余裕度、コミュニティの治安等に影響を受ける部分が大きいように思う。この点においては、例えばアジア諸国の中でも、また世界的にみても日本は高い水準にあるように思う。いや、むしろ皆まで言わずとも理解する、1を聞いて10を知る、しかもお天道様に顔向けの出来ないことはしない、という教養、モラルの高い従業員(国民)が故に、組織のルールの問題があるのかも知れないが・・・

 

一方で組織としてのルールについては、例外的対応や属人的な手続等が多い企業も少なくないように思う。特に海外子会社の統治という面になるとこの点はテキメンに表れ、現地主義と言ってみたりやリソースの少ない子会社に過度に負担を掛けてはいけない、を言い訳に管理手続上必要な指示も出せていない企業もある。その結果として、現地で不正が発覚なんて事例も珍しくはない。

 

また、経営における意思決定プロセスも結局は社長の鶴の一声、しかもそれは経験とか過去のしがらみとか、意思決定に至るまでに合理的、論理的な意見交換があったのか?と思わせる事例もこれまた尽きない。最近の社外役員導入が盛り上がっているのはこういう背景があるとも言える。

 

こういった点が外部の視点からは企業の活動が”不透明”に映る要因ではないだろうか?

善意的に解釈すると、”中途半端な状態で悪い情報を外部に公表すると返って混乱を招いたり、要らぬ心配、迷惑を掛けることになる”ということかも知れないが、外部の声としては『お気遣いありがたいが、それはこっちで判断しますから適時に情報を開示してください』ということかも知れない。

東日本大震災の際の福島原発事故の対応を見ても、これは企業に止まらず国家的レベルでも同じことが言えそうだ。

 

もともと、エージェンシー理論もそうであるが、企業の経営者と投資家との利害は対立する関係にありながらそれでいて情報の非対称性は明らかな環境であるので、企業活動の”透明性”に対するニーズは高くならざるを得ないだろう。

 

さて、改めてランキングを見ると、1位:香港、2位:シンガポール、3位:日本

上記のような課題はあるものの、3位かぁ?と思ってしまう。

評価主体が香港が拠点の投資家団体アジア企業統治協会(ACGA)と投資銀行CLSAであることが大きいのではないのかな?

何も偏りがあるということを問題にしているのではない。世の中そんなものである。

 

誤解を恐れずに言うと、今の政治、経済、スポーツ、”世界の評価者”からすれば自分たちに近い思考、生活様式、文化、宗教に根付く国を”透明性が高い"と考えるのは至極当然のことと言える。

日本は改めて自分たちの立ち位置を認識して然るべき対応を採るべきである、とまあ、そういうことになるのだが、『そんなことは分かっている』と言う企業も少なくないと思う。

 

僕もそう思う。もう何をすれば良いかを考えるステージではなくて、”just do it”、とっととやる、やりきることが問われているのだと思う。