10/17/2014 日経朝刊
『米デルタ航空が16日発表した2014年7~9月期決算によると純利益は前年同期比74%減の3億5700万ドル(約380億円)になった。会計処理上の特殊要因が発生した。』
会計処理上の特殊要因となんとも意味深な表現なのだが、内容に触れている記事が
見当たらないので、デルタ航空のプレスリリースをチェックしてみた。
何のことはない、non-GAAP情報のことだった(笑)
『特殊要因』の内容は、
747機体等のリストラの加速に伴う損失 397MIL
重油の先物取引の時価評価による損失 215MIL
債務の償還(買い入れ?)による損失 87MIL
訴訟の結了による利益 42MIL
と言うことで、要は『通常は発生しない』特殊な原因で生じた損益、
日本で言うところの『特別損益』に類似した内容である。
米国会計基準では、いわゆる特別項目(extraordinary items)は日本よりも項目が
限定されるので、このような損益も営業利益(ordinary profits)に含められることが
多い。
デルタとしては、投資家等に対してコア事業の業績をより分りやすく伝えたいとの意向であろう。
このような会計ルールでは認められていないが、会社がそうした方がより投資家にとって有用と考え、開示する情報をnon-GAAP情報という。
EBITDAなども有名ではあるが、会計ルールにおけるコンセプトではないのでこれもnon-GAAP情報の1つである。
当四半期のデルタ航空では、
【2014年9月】
会計ルールベース(GAAP)純利益 357MIL
調整項目(特殊要因) 657MIL
会社ベース(non-GAAP)純利益 1,014MIL
1株当たり純利益は GAAP:0.42ドル ⇒ non-GAAP:1.20ドル
【2013年9月】
会計ルールベース(GAAP)純利益 1,369MIL
調整項目(特殊要因) △157MIL
会社ベース(non-GAAP)純利益 1,212MIL
と、言うことで、会計ルールベースで比較すると、前年同期比で純利益が1BILドル
(70%)以上も落ち込んでおり、会社からすると『違うんです。これは特殊要因の影響が大きいんです。これがうちの実力ではないんです』ということだろう。
会社がコアビジネスがそれほどの落ち込みがないと考えるならば、これを数字通りに理解されてしまうと投資家をかえってミスリード(誤解)させることになるという主張も解らなくもない。
意地悪な言い方をすると『言い訳』にも聞こえるのだが、少なくともGAAPの数字をコソッと変更するよりはましである。
non-GAAP情報は非監査対象でもあり、会社が独自に作成するもので、往々にしてGAAP利益よりも大きくなる傾向もあり、『これってどうよ?』という信憑性の問題が議論された経緯もある。しかし一方で、会計ルールに従った数字はそれはそれで粛々と作成し、会社が納得しない部分についてはその理由とともに別の数字(non-GAAP)を作成して投資家の信を問うというプロセスは、情報が十分に入手できる立場にない外部の投資家等にとっては一定の評価があっても良い。
もっとも、それを見極める目は必要にはなるが・・・
翻って日本では、良くも悪くも言い訳を良しとしない文化である。まして、(会計)ルールは絶対の存在であり、それから逸脱した情報なんて・・・
とは言え、というかだからこそと言うべきか、数字を(予算に)合わせる執念は相当なものがあるように思う(経験から・・・)。
会計ルールには納得できないが、自分たちの事業には自信があるということであれば、non-GAAP情報を活用して外部とコミュニケーションをとることも選択肢の1つだと思う。どだい、会計の数字だけで会社の全てが説明できるわけでもない。数字はコミュニケーションツールの1つに過ぎないのだし・・・