溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

人件費は『投資』なのか?


やみくもな人減らしはマイナス (カルビーCEO松本晃のシンプル経営教室) :日本経済新聞 

いきなり失礼な話で恐縮であるが、おそらく会計なんて学問として勉強したことはないだろうと思う経営者でも、こちらが『なるほど』と唸ってしまうような意見をお持ちの経営者もいらっしゃる。それなりの,、というとこれまた失礼な話であるが、それなりの会社の経営者にその傾向は強いという印象がある。
著名な経営者にも独自の会計観を持たれる方もいる。

 

『僕はね、いつも(月次)現金と在庫を見ているの』


私が担当したある製造業の社長の言葉。
現金がついてきているか、在庫が積みあがっていないか、事業が健全に進捗しているかどうかのキーポイントとのことだった。

ここで気を付けたいのは、じゃあウチも現金と在庫を意識しておけば良いのか!、と安直に反応しないということだろう。

 

これはあくまで『その』会社での話。事業環境も事業の特性もさらには、業界の中における会社の位置づけ、取引先との交渉力等の外部環境によって会社において重視される経営指標も変化するのは当然といえる。

上記の会社の社長の例は、そういったことを事業経営の中で日々肌で感じながら生み出した、経験の産物とも言える。

 

カルビーの松本社長(添付の記事)もカルビーと言う会社の直面する課題をいかに克服するのか、そしてそれを社内の多くの従業員といかに共有して協働するのか(ここが重要!)に真摯に取り組んだ結果、そのような費用の区分、重要視する費用項目等の判断に至ったのだと思う。

 

同じアイデアがすべての会社に当てはまるとは限らない。その判断に至ったプロセスこそを参考にすべきだと思う。

 

このような他社の成功モデル(経営指標や経営管理手法)をそのまま『形式的に』取り入れる会社も少なくないと思う。
会社の抱える課題を何とか解決したいということは理解できるが、すべてが万能薬とは限らない。
月次の経営会議資料には新たな情報(経営指標等)が追加されたが、結局有効に機能せず、会議資料作成の労力だけが増えたなんて笑えない話も耳にする・・・

 

さて、このように会社が自社の経営が計画通りに進捗しているかどうか、問題があればどうやって速やかに発見するか、さらには改善施策策定のために役立つ情報を提供するのが、いわゆる『管理会計』(で作成される経営管理ツール)と言われるものだ。

管理会計は個々の会社の実情に合わせてカスタマイズ可能であるため、外部公表の決算作成のベースとなる会計ルール、すなわち『財務会計』とは相違する。
例えば、会社(管理会計)は『人件費は投資』と考えても外部公表用の決算上はあくまで『人件費は費用』として取り扱われる。

(注)財務会計でも製造工程で発生した人件費は製品等の在庫の金額に含められ販売まで資産として扱われるが、いわゆる『投資』とは異なると理解。

 

財務会計上は会社が将来のための投資と考えて投じた人件費は、今年の費用となり、その成果は将来の収益となる。費用が先行する結果、最悪今年の利益は赤字になってしまうかもしれない。
会社が人件費を将来のための投資、すなわち、人件費を『今』投じることが『将来』の収益(投じた人件費をはるかに上回る)をもたらすと合理的な根拠のもとに考えるのであれば、堂々と赤字決算(あくまで極端な例)を発表したら良いと思う。

 

外部の投資家やアナリストからの指摘は当然あるだろうが、あくまでも今年の利益ではなく、現在の企業価値を高める(将来の収益、利益が高まることにより)ことを説明して理解を求めればよいと思う。

 

何が何でも今年の決算数値が悪化するのを避けるのではなく、ましてやそのために将来の収益獲得のための投資を犠牲にするのではなく、事業計画の合理性、そして社内の利益管理体制が対話のベースとなり、その上で今年の決算数値が議論されるというのが望ましいと思うのだが・・・