溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

撤退基準のススメ


ユニクロ柳井社長の非情さ、なぜ真っ当?事業の“ご臨終”=撤退基準明確化の重要性 (Business Journal) - Yahoo!ニュース BUSINESS

 

新規事業に乗り出す際に撤退の基準を設定している会社はどの程度あるだろうか?

 

乏しい経験から言うと、撤退基準を明確に定めている会社はそうそうはお目にかからない。

そのような基準らしきものがあっても、当初の事業計画通りに進捗しない場合に事業継続を検討する、程度の曖昧なルールになっているように思う。

もちろん、実際の判断においては個別に事業環境や事業の見通しなどを検討しての結論になり、全て機械的な判断が望ましいと言うことではないが、少なくとも事業継続の再検討の俎上に挙げる基準は具体的な指標であるべきと考える。

というのも、撤退の意思決定がズルズルと遅延することが少なくないからである。

 

記事にもあるように、新規事業を始める際に撤退の話など縁起でもない、あるいはそんな甘い考えで取り組むのか、と言った話は想像に難くない。

原発の安全基準の設定等、色んな局面で見られる。

加えて、日本の会社に有り勝ちな話としては、前任、あるいは現任の社長が決定した案件については口出し無用という雰囲気があるように思う。

 

他の役員からすると、そのような人物は自分を役員に登用してくれたある意味恩人であるし 、さらにカリスマ経営者となるとその存在はもはや神格化され、一切の否定的な意見はタブーとなる。

そのようなガバナンス環境に対する一つの楔が社外取締役であるが、社長の知人友人の場合もままある…

 

あるいは、事業に参入した時期から市場環境が大きく変化し、このまま継続しても事業としての採算がとれないと分かっていても、ここまで頑張って来たのに今更撤退できるか!

と言ったエモーショナルな意見に引っ張られることもあるだろう。

(管理会計ではこのような過去に投資、費用でつぎ込んだが、将来の意思決定には何ら影響を与えないコストを埋没原価と言います)

 

そんなこんなで、日本の会社、だけでもないとは思うが、は明確な撤退基準でもないと合理的な事業撤退判断がし辛い環境にあるように思うのである。

どことは言わないが、最近でも家電業界などでタイミングを逸した事業リストラの例は見られたのではなかろうか。

 

会計監査でも、新規事業のために設立した子会社が当初の事業計画通りに進捗せず、赤字体質に陥っている場合、一定の条件に抵触すると会社に対して投資額の減損を要求することになる。ただ、子会社の場合は親会社のテコ入れで業績回復の可能性もあるので、親会社も含めて子会社をこれからどうして行くのか、子会社の事業計画の合理性が争点になる。

ところが、会社監査の指摘があって始めて事業計画を作成する例もあり、今までどういう進捗管理モニタリングをしていたのかと呆れることもある。事業計画作成の前に、会社の事業もよく知らないくせに事業を否定するとは失礼的な反論をされると、なんだか寂しくなるのである。

事業の中身をよく知っていたらもっと早く減損の指摘をしますよ』である。

 

事業撤退の遅延は、単に時期が遅れるだけでなく、追加的な損失による財務内容の悪化、従業員のモチベーション低下や離脱、新たな事業への投資機会の喪失や逸機などの問題にも繋がるため、適時に合理的な検討、判断を促す社内ルールが必要だと考えるわけである。