溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

株主還元と株価の関係 ~アマダの例~         (ボヤキ系記事)

http://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20141230&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO81464760Z21C14A2DTA000&ng=DGKKZO81464850Z21C14A2DTA000&ue=DDTA000

アマダ、100%の株主還元 資本効率重視で株価動く 「ここまで驚き与えるとは」

という見出して掲載された日経朝刊(2014/12/30)記事。

アマダは今後2年間の利益を全て配当や自社株買いなどの株主還元に充てるとの方針を打ち出し資本効率を重視する流れをつくるきっかけを作った、とのこと。

 

『正直に言って、ここまで驚きを与えるとは思っていなかった。結果的にアマダの株価は上がり、多くの企業に非効率にため込んだお金の使い道を考えさせるきっかけになった。自己資本利益率(ROE)に代表される資本効率を重視する外国人投資家は、アマダに『よくぞやった』と思っているだろう』

とは社長のコメントである。

記事の文面だけからだといかにも『やったった感』のドヤ顔がチラついたので思わずブログに投稿してみた。

 

アマダの100%株主還元方針は2014年5月のこと。時系列は前後するが、2014/11/25の日経記事(以下)では、

 

アマダ、利益の全額還元だけでは上がらぬ市場評価

アマダ、利益の全額還元だけでは上がらぬ市場評価 :記者の目 :企業 :マーケット :日本経済新聞

『直後の1カ月間に株価は5割近く急騰し、6月18日には年初来高値となる1143円を付けた。だが、市場が好反応を見せたのはそこまでだった。11月21日終値は1078円にとどまり、PBR(株価純資産倍率 )は1.04倍とかろうじて「解散価値」の1倍を上回るレベルだ。株主還元だけでは本質的な企業価値は高まらない。株主還元競争に火を付けたアマダに市場が求めるのは、持続的な株価上昇につながる成長ストーリーだ。』

ちなみに、2014/12/30時点の株価は1,037円と更に低下している。

確かに、100%株主還元を打ち出したことで株価はそれまでの約750円水準から1,143円へと一時は約1.5倍程度には上昇したが、記事にもあるように株主還元だけでは本質的な企業価値は改善しない。

言ってみれば、設備投資、研究開発、あるいはM&Aといった企業成長におカネを有効に投資しない、また投資を有効に追加的な利益獲得に繋げていない、ただおカネを持ちあぐねているだけ、という状況に”NO(ノー)”を突き付けていた投資家の溜飲を下げる効果はあったものの、積極的に”YES(イエス)”を言わせるには至っていない状況だ。

 

記事にも

 『ROEの分母となる自己資本の増加を株主還元で抑えても、分子の純利益が伸びなくては10%の達成は難しい。アマダは持ち株会社制への移行に合わせ「間接部門の集約や複数部門で重複していた研究開発費の圧縮などに取り組む」(岡本満夫社長)。こうしたコスト削減策に加え、M&Aの着実な実行で利益成長を果たす必要がある』

とあり、アマダの株価が株式市場から本当の意味で”YES(イエス)”と評価されるにはまだ道半ばのようである。

 

翻って、冒頭の同社社長の談話。当然ながら同社の置かれた状況をよくよく考慮しての、TPOを意識してのコメントであり、ゆめゆめ額面通りが真意ではないであろうと受け止めてみる。