溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

『全額配当』に対する日本電産永守社長の意見

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO81942950U5A110C1DTA000

 

 以前、総還元性向の上昇傾向や、100%配当性向について投稿した。

上昇基調の総還元性向 - 溝口公認会計士事務所ブログ 

株主還元と株価の関係 ~アマダの例~ (ボヤキ系記事) - 溝口公認会計士事務所ブログ

 

個人的にもなんだかな~と思っていたところに、先日、日経朝刊で日本電産の永守社長がこの傾向について意見を述べられていたので紹介したい。

 

(以下、記事の抜粋) 

 ――自己資本利益率(ROE)の目標は。

 「ROEは10%以上を確保し、15%を目標にしている。ただ、ROEを高めるために自社株買いをするようなことは考えていない。以前に自社株買いをしたのは自社の株価が安すぎると思ったから。保有する金庫株はグループ会社を完全子会社にするのに使った。残りは新株予約権社債転換社債=CB)の償還に使う予定だ」

 「利益の全額を株主配分に回す会社もあると聞くが理解に苦しむ。そんな経営をしていたら会社は伸びない。手元資金は買収など成長に使い、そこからお金を生んで株価を上げて、配当も毎年着実に実行していく。連結配当性向は30%を目標にしている。来期は大幅増益を達成し、株価も1万円に乗せてほしい」

 

要はおカネの使い方なのであるが、将来の事業成長が期待(というかこれは本来しないといけないと思うのだが・・・)出来る会社は株主に配当なんぞしている余剰資金は無く、おカネをどんどんと将来のための(事業)投資に回すべきであるし、そうすることが株主の期待に応えることにもなり、結果として株価も上昇する。『過度な』内部留保も発生しないのである。

これに対して将来の成長が期待できない会社は、おカネを持っていても使い道が乏しいため毎年の内部留保が蓄積していく(それでも赤字でないのでまだ良いのだが・・・)。そして、株主からは我々の投資に対する成果を持っていても有効に使えていないというマイナス評価となり株価も低迷する。なので、せめてマイナス評価を和らげるべく、苦肉の策として利益全額配当となる。

 

いずれが会社の目指す方向かは自明であろう。

いつまでも成長するのは難しいという声が聞こえてきそうだ。確かにビジネスラのライフサイクルから見ても同じビジネスが永続することは難しい。したがって、『会社』として成長を継続するためには、常に企業内のビジネスの新陳代謝が必要となる。常に『次の飯のタネを探す』、トップマネジメントに期待される最も重要な経営課題の1つだと思う。日本の会社の役員の多くは現業業務の所属長(例:取締役営業本部長)を兼務していおり、現在の事業の対応に時間を割かれることが少なくない。もしかしたら、『次の飯のタネを探す』阻害要因の1つになっているかも知れない。