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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

簿外債務の衝撃 ~未経過リース料~【スカイマークの例】


スカイマーク、民事再生法 負債710億円、運航は継続 格安と競合で業績悪化 西久保社長が退任 :日本経済新聞

 

少しだけタイトルを刺激的にしてみた(笑)。

先月1/28にスカイマーク東京地裁民事再生を申請し(受理され)た。

スカイマークについては、以前から経営危機が噂されており、終に・・・という感もある。

同社については、そもそもの事業戦略に無理があった、LCCの台頭等による市場環境の激化に上手く対応できなかった、エアバス社からの航空機購入(以前はリース)への方針転換が拙かった等、インターネット上でも評価されているが、ここでは、改めて同社の財務内容を財務安全性にスポットを当ててチェックしてみた。

 

                                                                                                 (単位:百万円)

       25年3月31日 26年3月31日 26年6月30日 27年9月30日

現金及び預金   23,155    7,065    7,223    4,549

負債総額     27,406     34,082    38,611     38,546         

流動比率       224.9%   139.3%   122.9%   109.5%

当座比率                    194.5%             77.0%             62.7%             49.5%

純資産比率                  63.1%              56.7%             50.2%             50.3%

 

平成25年3月期以降、財務安全性は押し並べて悪化しているが、中でも当座比率の悪化、現金及び預金の減少が著しいことが分かる。平成25年3月期から平成26年3月期の現金及び預金の主たる減少要因は、エアバス社からの航空機購入(6機、総額約1,900億円(@102円換算)の手付金95億円の他総額137億円の設備投資だ。一方、同期間の負債総額は定期整備引当金の積み増し35億円主要因だ。なお、これは資金の流出は伴わない。

手元流動性は、平成25年3月31日時点では3.2か月分であったが、平成26年3月31日時点では0.99か月分と1カ月を切り、平成26年9月30日時点では0.6か月分まで低下した。

 

と、確かに財務安全性は悪化しているものの、これだけだとそこまで危機的な状況なのかなぁと思える。実際、当座比率や手元流動性がもっと悪い会社(生きている)は存在するし。

 

添付の記事によると負債総額は710億円とある。平成26年9月30日時点での負債総額は400億円に満たない。数か月の間に負債額が倍近く増えたことになる。いったい何が増加したのだろうか?

 

ここで、同社の有価証券報告書(平成26年3月期)の事業等のリスク』をチェックすると、

国内路線における航空機材はオペレーティング・リース取引により導入しており、未経過リース料がその時点で約900億円であり、B/Sには計上されていない

との記載。

会計ルールでは、リース取引を『ファイナンス・リース』取引と『オペレーティング・リース』取引に区分して、前者については自社購入の固定資産と同様にB/S計上(オンバランス)するが、オペレーティング・リース取引についてはB/S計上を求めていない(オフバランス)。この時注意しないといけないのは、固定資産がオフバランスになるだけでなく、未経過リース料(負債)もオフバランス(簿外債務)になるということだ。

これは、オペレーティング・リースは基本的にいつでも解約可能であり、解約時点で違約金といった追加支払(債務)が発生しないという考え方に立脚しているが、会計ルール上、解約不能期間のリース料がある場合はB/Sにその金額を注記することを求めている。同社の26年3月期の該当する注記には、

オペレーティングリース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料 約900億円

ということで、『事業等のリスク』に記載の未経過リース料が全て『解約不能』であることが分かる。平成26年9月30日時点で同社のB/S上、約23億円のリース債務(ファイナンス・リース分)が計上されているが、それをはるかに上回る金額だ。

 

未経過リース料に関しては、以下のニュースが報じられている。

スカイマークの大口債権者、最大は147億円のGE系リース会社 | Reuters

東京地裁に提出された申立書によると、最大の債権者はGEキャピタル・アビエーション・サービス(GCAS)で債権額は147億6615万円。

このほか、AWASアビエーション・トレーディング・リミテッド(137億4621万円)、アビエーション・キャピタル・グループ(74億7731万円)などが名を連ねる。

民事再生の申立書に『債権者』、『債権額』と記載されているということは、スカイマークにとっては確定した債務と言うことなのだろう。

ちょっと微妙な表現にはなるが、わかり易く言うと、これまでは確定された債務ではないと考えていた(のでオフバランスだった)未経過リース料(の一部)が突如として実際の確定された債務となって負債総額を増加させることになったと言うことだ。

 

スカイマーク民事再生という特殊な状況であるものの、簿外債務がある日突然にB/Sに計上される負債(オンバランス)となり、会社の財務安全性、資金繰りを圧迫することも十分に考えられるため、会社の財務状況をチェックする際にはB/S,P/L、キャッシュ・フロー計算書といった財務諸表の本編だけでなく、注記欄を併せてチェックすることをお勧めする。

 

なお、エアバス、納入解約通告 スカイマークに違約金要求へ :日本経済新聞

記事にもあるように、エアバス社と交渉中の違約金は最大7億ドルと報じられるが、こちらもオフバランスである(雲行きが怪しくなってきたら引当か)。

 

ちなみに、ゴーイングコンサーン注記は平成26年6月、つまり平成27年3月期の第1四半期から付されている。これまで営業赤字1期だけだし、営業キャッシュ・フローもまだ赤字にはなっていないし、で財務諸表だけみると、ちょっと早いかな~とも思えるが、簿外債務(ともすれば確定債務)を含めて見ると妥当だろう(結局1年内に民事再生だし)。