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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

買って終わりではないM&A・・・ 【少しボヤキ系】

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKASGD17H6P_X10C15A2EA2000

 2/18/15 日経朝刊の記事。

『手元資金活用 企業動く
海外で大型M&A 近鉄エクスプレス1400億円 キヤノン3300億円 』

手元資金が積み上がってきた上場企業が、その活用に向けて動き出したという内容。

『ただ、企業の資金の使い方には投資家が厳しい視線を向けている。稼いだ資金をため込み続けると財務基盤が安定する半面、自己資本利益率(ROE)が低下する。ROEは株主から預かった資金をいかに効率よく使って利益を生むかを示す指標で海外投資家などが重視する。一般にROEを高めると株価が上昇することが多い。』

投資家からしてみれば、会社の『事業』に投資したのに、そのカネを事業投資に回さず会社内に蓄積するのはある意味、裏切行為ともなり、それであれば還元してくれということで、増配、自社株買いを増やす会社も多くみられる。また、増配や自社株買いはROEを高める効果もあることも株主、投資家の溜飲を下げることにつながる。しかしながら、会社の『(企業)価値』を高めるにはやはり『稼ぐ力』(将来キャッシュ・フロー)を高める必要があり、そのためには(将来の)事業に投資し、そしてここが肝心であるが、投資を上手く運用して投資を将来の収益に結び付ける必要がある。

そして、将来の事業投資には例えば、(海外)M&A、設備投資などの方法がある(以下、添付記事より)。 

 『板金加工機械大手のアマダは「効率を重視しながら成長のための投資を急ぐ」(岡本満夫社長)という。2015年3月期からの4年で1000億円を株主に還元する方針だが、新たに400億円のM&A枠を設けた。4月にはM&Aの専門チームを立ち上げる。

 「洋服の青山」を展開する青山商事は来期からの3年間でM&Aなどに200億円使い、1年間に稼いだ利益額の1.3倍を配当と自社株買いに充てる。利益を一切ため込まずに手元資金を取り崩すことになる。』

 

と言うことで、M&Aは会社にとって積みあがったカネを使う絶好の機会の1つであると同時に将来の稼ぐ力のための将来投資の方法の1つである。事業や市場の成熟により更なる成長が期待できない場合、M&Aによる売上高等の合算効果により短期的な『数値』の成長には貢献する。またM&Aは、既に事業活動をしている会社を買うことにより自らその事業(会社にとっては新規事業の場合もある)やその市場を開拓(会社にとっては新規開拓の市場の場合もある)するよりも失敗のリスクが軽減されたり事業が軌道に乗るまでの時間をセーブするメリットもある。

 

しかしながら、2000年以降の日本企業の大型M&Aのほとんどが失敗M&A後最高益を更新していないという意味)に終わっているという調査もある。

 

失敗の原因の多くは、

・買う相手が悪い

 買う会社は自社にとって何故必要なのか、グループの中でどういう位置づけにするのかが明確でないまま、コンサルタントなどから奨められるままに買う場合は要注意。その会社がどうして売りにだされるのか?、何故ウチに紹介してくれるのか?そんな美味い話がそんなに転がっているのかと疑ってかかるぐらいが丁度良いのにと思ってしまう。将来の事業ポートフォリオに必要なターゲット(会社)を明確にして、それに合致する会社をこちらから探すべきだろう。

 

・買値が高すぎ

 M&A専門部署を設置すること自体は良いのだが、専門部署としては予算もあることだし、一定期間に実績を出すためにどうしても『買うこと自体』が目的なることは否めない。場合によっては高すぎる価格で買うことに(高値掴み)・・・

 

・買った後のケアが悪い

 買うこと自体が目的となってしまっている場合が典型だが、M&Aも投資であるので買って一丁上がりではなく、むしろ投資をいかに回収するか、いかに将来の稼ぎに繋げるかが重要になる。そのためには、むしろ買った後のケアが重要になる。現状の無駄の改善(売りに出される会社に改善要素が無いわけが無い・・・)、あるいは新たにグループに加わることで重複するコストを削減したり、自社の強みと併せることでシナジー効果を期待したりであるが、これらは買収後に親会社から積極的に口も手もカネも出して初めて期待できる。このような買収後(合併後)の統合作業(PMI:ポストマージャーインテグレーション)が十分に実施できている例は少ないように思う。これが結構、時間もカネもかかるし、地道な作業、手続きも必要で大変だが、これを経ずにはM&Aの成果が得られないとも。だからというか、ところがというか、(相手も)買収されて環境が激変し大変な状況だろうからあれこれ口出しすると余計に負荷をかけることになる、とか、指示を出しても抵抗されると説明、交渉と色々面倒だ、ということで、『まあまあ、おいおい』という例も少なくないように思う。ましてや海外の会社となると距離、時差、言語、文化等の問題も重なり腫れ物に触る勢いということも・・・

 

ということで、M&Aは買って終わりではなく、むしろその後のケアが重要なんだけどなあ・・・とM&Aを発表する経営者の満面の笑みを見るにつけて思うわけです。