溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

免震装置のデータ改ざんに思う 【東洋ゴムの例】

 

headlines.yahoo.co.jp

 

東洋ゴムによる免震装置に係るデータ改ざんが公表された。不正の種類では、『不正な報告(非財務関連)』に区分される例だ。

耐震、免震、制震等の建物の需要が年々増える中で、1部上場企業によるこのようなデータ改ざんは社会的な影響も大きいと思われる。

 

報道によると、いくつかの内部統制上の不備が挙げられる。

 

①製品の品質検査を10年以上にわたり1人の担当者が担当してきたこと

②(品質検査の担当者の)上司は専門的な知識不足でチェックできなかったこと

③不正の発覚から1年後に公表、その間当該製品は継続販売されてきたこと

  

『同社は2003年に最初の認定を受け、この際は適正なデータだったが、不良品を出荷。06年と07年、11年には類似製品3件で認定を受ける際、測定データを加工するなどしたとされる。同社は会見で、担当者によるデータ改ざんの可能性を示唆した。会社側によると、問題の免震ゴムは子会社の東洋ゴム化工品(東京都新宿区)が製造。製品の評価は兵庫県の工場の課長代理(当時)が10年以上にわたり1人で担当していた。』

 また、

東洋ゴム化工品・明石工場の担当者は、免震ゴムの開発設計担当を10年間も代わっていなかった。山本社長は「高い専門性が必要で交代が難しかった。上司も専門性がなく、事実上チェックできなかった」と語った。』

とのこと・・・

免震装置の売上は東洋ゴム全体としては僅少(14年12月期の売上高は3937億円で、うち免震ゴム事業は7億円)とは言え、国との対応も、法律面への対応も必要、さらには問題が生じれば社会的な影響も大きいことは明白な事業の検査担当が1人で、というのは信じがたい。

そして、上司が知識不足って・・・それって上司なんですか?

これも信じがたいのであるが、仮に本当だとすると、事業に対するリスク評価をせぬままに事業を継続してきたとしか言いようがない。シートベルトも、点検も、保険の必要性も理解せぬまま車を運転、事故してから、必要だったんですか?というようなものだ。

 

また、昨年2月に交代した担当者が後退して間もなく過去のデータに不信を持ったと報道されているが、それから約1年を経ての事実公表である。その間、問題の免震装置は販売を継続されたという・・・

これについて、会社は、専門性が高く事実の確認等に時間がかかった、とのこと。

調査に時間がかかるのは良しとして、そのような品質基準に疑義が生じた製品を販売し続けるのはどうなんだろうか?逆に、問題がないと結論が出るまで販売中止するというのが筋ではないか。

 

記者会見で検査担当者のデータ改ざんの動機について問われた社長が、『推測だが、納期に間に合わせるためではないか』というようなコメントを述べていた。

この期に及んで推測って何?とも思うが、このコメントの通りであれば、データ改ざんによる検査担当者が個人的な利得を得る訳ではない(もっとも、人事考課を通じた間接的な利得があるかもしれないが)。潤うのは会社だ

東洋ゴムだそうだと断定はしないが、「自分の判断で納期を遅らせ、会社や得意先に迷惑をかける訳にはいかない」ことを是とするような会社の価値観、考え方(内部統制では統制環境という)が検査担当者をデータ改ざんに走らせたのではないかと思う。

とすれば、問題は担当者1人の問題ではなくむしろ会社全体の体質の問題であるが、その辺はどう考えているのだろうか?過去の話を蒸し返すのも気が進まないが、東洋ゴムは8年前にも組織ぐるみのこれも長期間にわたる不正が発覚したこともあり、その際の不祥事の総括はしっかりとされたのだろうか?と、と社長の会見を聞いていて思った。