溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

損益計算書の利益の読み方

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20150401&ng=DGKKZO85115100R30C15A3DTA000

 

3月決算会社の決算発表シーズンということで、先日の日経朝刊にも『決算の読み方』の特集記事が掲載されていた。

今回は、損益計算書(P/L)の『利益』の読み方について書いてみたい。

 

『企業活動の成績表である決算にはいろんな「利益」が登場する。なかでも重要なのが営業利益、経常利益、純利益の3つだ。

 売上高から原材料費や人件費など事業の運営に必要な費用を引いた残りが営業利益で、いわば「本業のもうけ」だ。ここから借入金に対する利払いを引いたり、出資先から得た配当金などを足したりした金額が経常利益となる。企業の総合的な収益力を示す。』

企業活動ではリストラに伴う費用や保有株の売却益など、一時的に発生する損失や利益がある。これを特別損益と呼ぶ。経常利益に特別損益を足し引きし、税金を引いた残りが純利益だ。期間中に企業が稼いだ最終的な利益となる。』

 

P/Lは収益から費用を差し引いてその期間の儲け、つまり利益を計算する決算書であるが、いきなり最終利益である当期純利益包括利益はここでは割愛)を計算するのでなく、売上総利益、営業利益、経常利益と段階を踏んで当期純利益を導く(段階利益と言う)。

 

それぞれの利益の意味はざっくり以下のとおり。

売上総利益は、製品、商品を販売して得られる利益。あるいは、一回の取引で得られる利益というイメージでも良いだろう。

営業利益は、会社の本業を維持運営した上での儲け。販売にかかる費用や会社を運営するために必要な費用(販売費及び一般管理費)も売上高から控除した利益(売上総利益-販売費及び一般管理費)。

経常利益は、本業以外の活動(営業外取引)も含めて毎年継続的に行っている事業活動から得られる利益。営業外取引とは主に財務関連の収益(例:受取配当金、受取利息)と費用(例:支払利息)。

当期純利益は、結局いくら儲かったのかを表す利益。臨時的な損益や税金も差し引かれる。 

何故このように利益に段階を踏むのかというと、ファミリーマートの例を見てもその方が会社の活動によって創出される利益の性格が異なるからである。

例えば会社の将来利益を出し続ける力(将来の収益性)を知りたい場合、ある年度の当期純益が大きくてもその要因が土地を売却した利益(特別利益)によるとすると来年はその傾向は続かないだろう。同様に、経常利益の高い理由が為替差益(営業外収益)によるものであれば来年以降、為替が会社にとって有利に働く保証はない。つまり今年の利益が将来も続くかという点では、営業利益、本業と言われる活動から利益を出している方が望ましい。という訳で、注目すべき利益は営業利益ということになるだろう。さらに言うと、利益の源は売上総利益であり、世の中の高収益企業と言われる会社はまずまちがいなく売上総利益率が高い。

また、『企業は純利益の一部を配当に充てるのが通常だ。株主還元の原資となるため、株主の観点からみて純利益は最も重要な利益項目といえる。』株主の立場であればやはり配当金が得られるかどうか、ということで当期純利益に注目するだろう(赤字でも配当は可能であるが、赤字配当は避けられる傾向)。

なお、営業利益と経常利益は営業外取引の有無により異なるが、実際のところ両者の金額はそれほど違わないことが多い。支払利息が違いの最大要因ではないか。営業利益と経常利益の違いがあまりに大きい会社は、営業外、つまり本業でない取引が多い=自社でコントロールがしにくい取引が多い、というでもあるので要注意とも言える。