黒字倒産の典型的なパターン 【江守グループHDの例】
『しかし2015年2月6日、取引先の資金繰り悪化に伴い、中国子会社において滞留している売掛債権の回収可能性および取引の妥当性に疑義が生じ、2015年3月期第3四半期の決算報告ができない事態が発生。30日間の期日延長を北陸財務局に申請していた。このため、外部弁護士事務所などによる調査が行われ、同四半期連結決算において貸倒引当金を中心に約462億4600万円の特別損失が発生。約439億7600万円の四半期純損失を計上し、約234億2400万円の債務超過に転落していた。』
と、2015年3月期第3四半期になって事態が急転したように映るが、同社の有価証券報告書を確認すると(またこの時期になって過去の有報等に対して訂正報告が出ている)、平成26年3月期までずーっと、『黒字決算』である。
一方で、営業キャッシュ・フローは過去5期間(平成22年3月期~)はずーーっと、赤字である。
(単位:百万円)
平成22年3月期 平成23年3月期 平成24年3月期 平成25年3月期 平成26年3月期
当期純利益 1,021 1,367 1,689 1,919 3,323
営業CF △717 △6,678 △6,915 △2,670 △5,197
当期純利益と営業キャッシュ・フローの差の主たる要因は、記事からも明らかだが、中国顧客に対する売上代金の滞留と考えられる。同社のキャッシュ・フロー計算書からも明確だ。
会社は数年程度の赤字では倒産するとは限らないが、資金に行き詰まると倒産する。
つまり、損益計算書の利益だけでは会社の倒産は予測できない。江守グループHDの例でも、PLでは黒字を継続しており、さら売上も最近5期間で300%超成長している。これだけ見れば超優良企業だ。ところが、少なくとも5期間前から本業でキャッシュを垂れ流している(出血)していることはキャッシュ・フロー計算書を見れば一目瞭然である。典型的な黒字倒産の事例だ。
この例からもキャッシュ・フロー計算書の重要性が再確認される。
ところで、同社の業績悪化、資金の行き詰まりの原因は中国ビジネスの失敗と報じられている。また、同社が公表している報告書によれば、粉飾決算やコンプライアンス違反の可能も大いにあり得る。
子会社、特に海外子会社の統治やリスクマネジメントの問題も含んだ事例であり、海外展開している会社にとっては対岸の火事とは言えないだろう。
ところで、2015年3月期の第3四半期になって初めて『継続企業の前提に疑義』がついている。その後、3か月で民事再生申請・・・ちょっと遅いんじゃないの?という気もするが・・・