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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

中核利益(core earnings)とは何か? 【武田薬品の例】

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO86878190W5A510C1TJ2000

 

リクエストに応えて(笑)

先日の武田薬品の決算発表の報道

武田薬品工業が15日発表した2015年3月期の連結最終損益(国際会計基準)は1457億円の赤字だった。赤字決算は1949年の上場以来初めて。』

『武田の15年3月期は売上高が5%増の1兆7778億円、訴訟関連費用の引当金が響いた営業損益は1292億円の赤字だった。訴訟関連の費用負担がなくなる16年3月期は営業損益が1050億円の黒字に転換し、最終損益も680億円の黒字を見込む。』

 

企業会計の知識がある人は、『訴訟関連費用、それも3,200億円もの費用を営業損益に含めるものなのか?』『特別損失(特損)に計上して営業利益からは除外すべきではないのか?』と思うだろう。

 

日本の会計基準では、通常このような費用は特別損失に計上する。

実は、武田薬品の採用する会計基準はIFRS(国際財務報告基準)であり、IFRSでは日本の会計基準では特別損失で処理するような項目も『販売費及び一般管理費』に含められる。

 

IFRSのP/Lのイメージ(名称も、純損益計算書と言う)

売上高    1,000

売上原価   700

売上総利益  300

販管費    150 ←訴訟関連費用や固定資産の減損損失もここに含まれる

営業利益   150

金融収益/費用  50

その他      10

税前利益     90

税金費用     40

当期純利益    50   

 

IFRSでは、このような一時的な損益も販管費に含められ営業利益に反映されるため、通常の状況下で本業の収益力を知りたい場合には有用でないことがある。

そこで、会計基準(IFRS)が要求する利益ではないが、一時的な要因を排除した会社の本来(本業)の収益力を示す指標として、会社が自発的に公表する利益を中核利益(core earnings)という。日本の営業利益に近い利益概念だろう。non-GAAP情報の1つだ。

http://www.takeda.co.jp/investor-information/highlights/ (武田薬品の例)

 

何でIFRSは訴訟費用、買収により取得した無形資産の償却費、リストラ費用、減損損失のような一時的な損失も販管費に含めるのか?おかしいではないか?という意見もあろうが、それは日本の従来の考え方をベースにした考えであって、お国や世代が変われば常識も変わるようなものだ会計基準を変更するということは、ある意味、考え方を変える(パラダイムチェンジ)を受け入れる、ということだ。

とはいえ、IFRSに沿って財務情報を開示すれば全てのステークホルダー(会社と関わりを持っている法人、個人)は納得するか、というと、中核利益の例からも明らかなように、そうではない。だったら日本基準のままで良いではないか?という声も聞こえてきそうだ。会社としては、どの会計基準と採用するにしても常に自社を等身大に伝えるためにはどのような情報を開示すべきなのか?投資家、株主にどのように伝えるべきなのか?を能動的に考えて行動する必要が常にある、ということだろう。