溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

『失敗しない経営』の意味 

 

headlines.yahoo.co.jp

ラーメン店と言うと、個人商店系、職人系、とおよそ会計とは疎遠な分野

に思えるが、こういう分野にも会計は生かされているということで紹介したい。

 

シンプルな業態を題材に『失敗しない経営』を考える上でのポイントを紹介する内容であり、同プロジェクトを推奨するものではないので予め申し添える(笑)

 

『矢田さんのプロジェクトの特長は、新規出店費用の少なさ。通常、1000万~2000万円程度の初期費用が必要だが、矢田さんのプロジェクト費用は、のれん代とオープンサポート費などで235万円に抑えた。』

 

ポイントは

①固定費を抑えて利益の出やすい体質を作る

②先におカネを払わないような資金の流れを作る

の2点ではなかろうか。

 

①固定費を抑えて利益の出やすい体質を作る 

トータルコストが膨らむ大きな要因は新規出店費用ではないだろうか?いざ開業、新規出店となるとどうしても乾坤一擲、商売に賭ける思いや意気込みも重なり、とかく立地、店舗の内装や設備におカネを掛けがちである

それに対して、業界の経験から、おカネをかける点とかけない点を峻別することで、開業に係る初期費用を抑えている。 

このような新規出店に係る店舗投資額(内装、外装、厨房設備、什器備品等)は開店後、減価償却費といった固定費として店舗経営を圧迫する。つまり、立派な店舗を作るほど、その後の減価償却費負担は大きくなる減価償却費は店舗の売上が0だろうと容赦なく経営に伸し掛かる

簡単なモデルで説明すると、A:初期投資250万円 B:初期投資1,000万円

(いずれも10年定額で減価償却)。500円/杯のラーメン何杯で利益が出るかというと・・・

                          (単位:千円)

           A             B                 

売上     250(@500円*500杯)  1,000(@500円*2,000杯

減価償却費  250(2,500/10年)    1,000(10,000/10年)

利益      0               0 

Aは、年間500杯売上げれば損益がトントン(損益分岐点売上)になり、Bは、損益トントンには年間2,000杯売上げる必要がある。もちろん、それ以下の売上だと赤字になる。実に、利益が出るようになるまでの売上が4倍差がある。もちろん、店主としてより高い売上を目指すことは良いが、少なくともラーメン店が軌道に乗るまではハードルは低い方が良いのではないか?そう、固定費は経営を黒字化するために乗り越えるべきハードルとも言える。実際には店舗運営には減価償却費以外にも、地代、家賃都などの固定費、原材料費等の変動費が見込まれるためなおさらだ。また、外食産業は景気のあおりを受けやすい産業だ。今年商売が繁盛していても来年急に落ち込むかもしれない。そういう場合でも、固定費(=ハードル)が低ければ赤字になりにくい。

 

②先におカネを払わないような資金の流れを作る

限られた予算の中で開業しようとすれば、不測の事態に備えてできるだけ手元に現金は残しておきたいものだ。そういう意味でも開業前にキャッシュアウトする新規出店費用は本来は出来るだけ抑えるべきだ。そこで、自前で購入する部分を出来るだけ抑えて賃借り、リースにより調達することが考えられる。リースだと本体価格分に金利手数料等がオンされるため、トータルコスト的には購入するよりも不利だが、リースは使用期間にわたって支払うことによりキャッシュアウトのタイミングを遅らせることができる。

例えば、手元資金300万円で新規出店費用が250万円とする。Aは全て購入、Bは全てリース(5年均等払い)とすると、1年目の売上は両店とも250万円、他に原材料費等の支払費用が150万円かかったとすると、両店舗の1年目終了時の手元資金は・・・

 

A:初期手元300-出店費用250+売上250-原材料費等150=150万円

B:初期手元300-リース料50+売上250-原材料費等150=350万円

Bの方が200万円手元に残るおカネが多くなる。Bはリースを活用することで店舗で使用する設備の使用コスト(リース料)を前もって支払うのではなく、売上で得たおカネから支払うことができる。会社が潰れる時はおカネが底を突いた時。もし、営業が思わしくなく赤字が出るような事態になっても、Bの方が200万円分Aよりも潰れにくい。

 

失敗しない経営=潰れない経営とすると、ディフェンス的な色合いは濃くなる。つまり、いかなる状況が訪れても赤字になりにくく、手元におカネがある状態をキープすることがポイントになろう。もっとも、常にこの2点にプライオリティを置くかというとそうでもない。ある程度店舗が軌道に乗ってきたら、多少ガードを下げて新規出店や購入によるコスト削減等オフェンシブに出ることが必要な場合もあるだろう。会計の考え方やツール管理会計)を活用して経営の課題を冷静に見る洞察力、事業環境を敏に察しての判断と行動力、バランスが重要だ。