溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

意外に使える会計的思考法のススメ 【複式簿記の例】

簿記の検定試験を受けたことがある人は

『時間内にたくさんの処理をさせられて、あげく貸借が合わない・・・』

と、あまり良い印象を持っていないのではないだろうか?

かく言う僕も簿記は大の苦手だった。あのせわしなさと言い、チマチマした感と言い、どうも性に合わない(笑)

 

さて、試験はともかく、この貸借バランス、つまり貸借対照表の左右の金額が一致するのは『複式簿記』という考え方によるものだ。

『複式』とは、『2つ』ということであり、複式簿記の会計処理では常に2つの項目が1セットとして動く。

例えば、『自動車を購入した』であれば、会計処理は

借方)車両 100(*) 貸方)現金 100

(*)100は仮の金額

となる。借方/貸方はこの際どうでもよくて、重要なのは、日常会話では『自動車を購入した』というと片一方の『自動車』しか表現としては現れないが、その裏で現金が支払われているという事実複式簿記は詳らかにするのである

つまり、『自動車を得たこととその結果現金が(100)失われた』という2つの事実を同時に表現することになる。

一方で、日常会話で『自動車を購入して、100の現金を払ったよ』と言うと、なんとなく冗長に感じるのではないか。もしかしたら、こうした日常表現と複式簿記の感覚の差が簿記検定試験で貸借が合わない原因かもしれない(笑)

 

ところで、この複式簿記の考え方は、物事には表と裏、メリットがあればデメリットがあるという考え方に通じるように思う。 

住宅ローンが大変、というのはローン(借金)という負債の側を見ているのであって、住宅ローン=負債だけが存在することはない。負債によって存在するもう1つ何かが存在するはずである。この場合は、住宅(土地建物)という資産である。資産の裏には負債が、負債の裏には資産が存在する。

住宅ローンの返済が大変でないと言っているのでないので念のため)

 

敷衍すると・・・

我々の身の回りで起こっている物事の多くは絶対的に正しい、間違い(正しくない)とは言い切れない見方や立場によって、賛成/反対も変わり得る相対的あるいは優先順位の問題のように思う。

何事もメリットもあればデメリットもある。僕は何か話を聞いた時に良い面だけでなく同時に悪い面というかそれに伴い発生するコストやリスクを常に意識するのも複式簿記の考え方に慣れているからかなとも思ったりする。もともと性格がゆがんでいるからかも知れないが・・・ 

なので、政治家の方々が、原発反対、増税反対、社会保障の充実等々の主張、公約をされるが、このようなシングルイシューというか、物事の一面だけを取り上げた主張は懐疑的に思えてしまうのである。

そもそも、その主張が何の追加的なコストやリスクを伴わずに可能なのであれば誰も反対する訳がない。エネルギー調達の安全性の裏にはコストアップ、消費税増税反対の裏には国(政府)の財政問題、社会保障充実の裏にはそのツケはどこに回されるのかの問題等々、反対意見はそのための代償を考えるからではないか?これは、まさに複式簿記の考え方である。

 

複式簿記の考え方は、物事を一側面からしか見ない考え方から自分を解放してくれるように思う。物事を多面的に見ることによって、今まで見えなかった良い/悪い部分を意識するようになり、結果としての判断が正しいものになるように思う。