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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

ROEを高める錬金術とは!? ~ボヤキ系~

 

http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO91774990V10C15A9DTA000

昨年来こういった手法を採用する例が増加し、その都度、何だかな~、と方々でボヤイテいたのでブログにも当然書いていると思っていたらハイブリッド債(三菱商事)については過去に書いたがリキャップCBについてはまだ書いていなかった(少し言及した記事はあり)。でも今更な~と思っていたら、先日、日経新聞の記事に取り上げられており、図も解りやすかったので改めて紹介してみたい。

 

『「資本になる負債」や「元本保証付き株式」。常識を覆す工夫を施した資金調達が増えている。企業の背中を押すのは企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の導入を機とするガバナンス重視の波だ。足元の刻々変わる金融環境に対応すると同時に、資金調達をテコに長期的に目指す姿に近づく。一石二鳥を狙う模索が始まった。』

 資本になる負債とは三菱商事が発行したハイブリッド債、元本保証付き株式とはトヨタのAA型種類株式のことだろう。

常識を覆す工夫を程とした資金調達とは、単に資金調達という目的だけでなくプラスアルファの効果を期待したということで、まさに一石二鳥の資金調達手段だ。

 

中でも、リキャップCB(転換社債)に関して、

『米国から7~8年前に日本に上陸。以来、年数件だった発行がここへきて急増している。アイ・エヌ情報センターの調べでは、2014年の発行件数は15件と前年の3倍に拡大し、今年は既に13件と昨年を上回るペース。ミツミ電機やLIXILグループなどが発行した。将来株式に変わる可能性のあるCBで資金を調達し、それを元手に市場で自社の株式を買う。資本を増やすのか減らすのか分からない、一見矛盾した行為だが、自己資本利益率(ROE)が上がるのがミソだ。』

まさに、資本を増やすのか減らすのか分らない行為だが、これがROEを上昇させる効果があるというのだ。一連のスキームは以下の図が分りやすい。

 

社債(CB)の発行⇒資金調達⇒自己株式取得(資金の流出)という一連の流れの結果、何が起こったかというと、バランスシート(BS)の右側の構成割合、つまり、資本と負債のバランスが変わった(資本の割合が減った)ことがわかるだろう。

(会計ルール上、自己株式は資本のマイナスとして扱われる)

これが、ROEを高めるのに効果があるというのだ。どういうことかというと・・・

 

ROE=利益/資本 なので、利益が同じであれば分母の資本が小さいほどROEは計算上高くなるという関係を利用したモノだ。

もう少し分解してみると、

ROE=利益/資本=利益/売上高*売上高/総資産*総資産/資本

と展開することができる。要は、ROEを高めるには、事業の利益率を高める、無駄な資産を削減して売上に繋がる事業投資に集中すること以外に、借金の割合を増やすという手もあるのだ。リキャップCBは、まさに借金の割合を増やすことによってROEを上げる手段なのである。資金を調達してなお、ROEを上げる、一石二鳥というわけだ。

 

 『アベノミクス下で日本企業共通の数値目標となった感もあるROE。いかに少ない元手で多くの利益を上げるかが問われる。企業統治指針も「資本の効率性を経営計画に盛り込むこと」と求める。無論、利益率を上げるのが正道だが、ROEの数値は負債を増やして計算式の分母の自己資本を減らし、財務レバレッジをかけても高まる。』

今年6月からスタートしたコーポレートガバナンスコードにも謳われているように、ここ最近、長期的な企業価値向上のための基軸にROEの向上が重要視されている。何とか早期に対応すべく対応に苦慮している会社も少なくないだろう。そんな会社にとっては、リキャップCBやハイブリッド債のような商品は渡りに船、地獄に仏、大海の木片なのかもしれない。

 

ところが・・・

08年に日本初のリキャップCBを発行したヤマダ電機。1500億円を調達し、700億円を自社株買いに回す計画だったが、自社株買いは230億円にとどまり、その後の株価下落でCBも一部、買い入れ消却した。同社は昨年、再び1000億円のリキャップCBを発行したが、現在の時価総額は08年当時のほぼ半分に沈む資金調達は魔法のつえではない。企業価値を継続的に高める取り組みが欠かせない。』

 

事業の利益率を高める、無駄な資産を削減して売上に繋がる事業投資に集中する、つまり会社の事業を良くしていく、その結果のROE等の指標の向上を株式市場は期待しているのであって、短期的な数字いじくりに対しては冷静なようだ。

錬金術は一時的な幻は見せてくれるかもしれないが、幻はいつまでも続かないのはどの分野でも同じのようだ・・・