溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

貸借対照表(B/S)には特許権の価値(時価)が表されるのか?

企業経営における知的財産の重要性が年々高まっている。

個人的には、知的財産単体だけでなく、それらを前提にしたビジネスを構築して、さらに、そのビジネスモデルをコントロールする、仕組みを支配することが重要と考える。

 

それはさておき、知的財産、例えば特許権は会社の決算書上、B/Sの無形固定資産に計上されるが、特許権の金額は何を表しているのだろうか?

特許権の価値、と言いたいところだが、実は違うのである

まずは、特許権は自社における研究開発活動の結果生み出されたものであることを前提に話を進めることにする。

 

会計のルール的には、自社での研究開発の結果特許を出願して取得した特許権については、その取得に費やした金額を持って資産計上するのだが、実際にかかった費用のほとんどは研究開発費であり、研究開発費は発生時に年々費用処理されてしまっている。つまり、研究開発後の特許の出願料や登録料などのいわゆる付随費用程度が無形固定資産の金額の対象となる。さらに、これにしたって全額が無形資産となるわけではない。特許は出願すれば100%登録できる保証はない。となると、出願料を支払った時点で無形資産とするのは時期尚早ともいえ、おそらく多くの企業は支払い時に費用処理しているのではなかろうか。結局、実際に無形固定資産としてB/Sに計上されるのは特許権登録のための事務手数料の一部に過ぎない、ということになる。

総合家電メーカーなど知的財産権を多数保有する会社のB/Sの特許権の金額を保有する特許件数で割ってみると、1件当たり数10万円程度となるだろう。およそ、特許権の価値が数10万円とは考えられないというのはこういった事情があるのである。

 

会社にとって最も重要な資産がそんな金額でB/Sに記載されているとは・・・

研究開発の努力が報われないのではないか・・・

何ともやりきれない、と思う方もいるのではないだろうか?

 

安心してください、その価値はしっかり株価に反映されていますよ(笑)

こういった点も1株当たりの株価と1株当たりの純資産額の金額の乖離の原因となる。

PBR(株価純資産倍率)が大きい会社ほど(B/Sに表れないという意味で)目に見えない知的財産を多数保有する会社という見方もできるだろう。

 

もちろん、中には随分と金額の大きな特許権が計上されている会社もあるだろう。その場合は、他社が保有している特許を買い取ったということが考えられる。2つのパターンが考えられる。

1つは、M&A特許権等の知的財産を持った会社を買収する場合である。上述のとおり、実際に特許を開発し取得した会社では特許権は事務手数料程度の金額であるが、企業買収においては買い手がその特許の価値も含めて会社の価値を評価して買収金額が決まる。つまり、買収金額はB/Sの資産の金額とは異なる(往々にして買収金額>B/Sの資産額)。現在の会計ルールでは、買収した会社はこの差額のうち特定の無形資産に起因する差額は該当する無形資産として認識する。要するに会社を定価(B/S金額)よりも高くプレミアムを付けて買う場合には、そのプレミアムの原因、例えば特許権であれば特許権がいくらと値を付けて、つまり特許権の価値を(買収会社の)(連結)B/Sに記載する。

もう1つは、特許を持つ会社から特許権を買い取る場合。この場合も、その特許の価値を別途評価して特許の時価で取引され、取得した会社は買った値段(特許の時価)でB/Sに記載することになる。

 

自分で取得した場合には特許の価値は(B/Sに)表れないが、他社から買い取った場合には表れる・・・一見違和感を感じるかもしれないが、実はこういう事情なのである。