溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

(IFRS)リース会計基準改正の影響は?

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 『日本企業の間で国際会計基準IFRS)への警戒感が広がりつつある。焦点のひとつが、企業が建物や設備などで活用している「リース取引」だ。IFRSをつくる国際会計基準審議会(IASB)は2015年末にも、リース会計の改正最終案を公表する見通しで、実現すれば流通業や航空会社などの財務諸表に大きく影響する可能性がある。』

国際会計基準を適用する企業は2019年から、このルールに従わなければならない』と、何とも危機感をあおる内容・・・

もっとも、対象はあくまでIFRSを採用している日本企業であって、日本基準を採用している会社が即対象となるわけではない。とはいえ、IFRSに合わせるように日本の会計ルールが変更されている昨今の例を見ると、対岸の火事と言ってもいられないかも知れない。

 

具体的に何がどう変わるのかを示してみたい。

記事もそうだがリースの借り手を想定する。

リース契約ということはリース物件の所有権は、貸し手であるリース会社が持っていることになる。借り手はその使用権を一部借りているにすぎないとして、借りた期間の使用料を費用として処理する、これが原形だ。

単純化した例)リース期間 5年 毎月リース料100*60回

リース料支払時 リース料 100 /現金 100

 

ところが、リース契約にはそれってレンタルとは言えないんじゃないの?買ったも同然じゃないの?というものもある。例えば、リース契約書にリース期間終了後に所有権が借り手に移転する記載があるとか、そんな記載は無いが リース途中で実質的に解約ができない(できたとしても残りのリーズ料をペナルティで支払う)ようなリース契約だ。このようなリース契約は、契約形態はリースであるが、実態は(借入をして)リース物件を購入したも同然と考えられ、自社の資産と同様の処理、つまり貸借対照表(B/S)に資産計上される(その後、減価償却で費用化)。

単純化した例)リース期間 5年 毎月リース料100*60回 中途キャンセル不可

リース契約時 リース資産 6,000 /リース債務 6,000

リース料支払時 リース債務 100 /現金 100

決算日    減価償却費 1,200 /リース資産 1,200

(リース契約~決算まで12か月とした)

 

このようなリース契約を、会計ルールでは『ファイナンス・リース』と定義している。リース契約内容から、リース物件に対するファイナンスリースほどの縛りはないと考えられるリース契約は『オペレーティング・リース』と区分され、原形のとおりリース料を(支払うたびに)P/Lで費用処理する。

両者の大きな違いは、B/Sに記載するか否かだ。

 

記事に書かれているIFRSのリース会計の変更は、オペレーティング・リースであっても契約期間の残リース料をB/Sに記載するというものだ。

 

単純化した例)リース期間 2年(リース資産の耐用年数は5年) 月次リース料100

リース契約時 リース使用権 2,400 / リース債務 2,400

リース料支払時 リース債務 100 / 現金 100

決算日    減価償却費 1,200 / リース使用権 1,200

(リース契約~決算まで12か月とした)

 

実は、日本にリース会計が導入された際(平成5年)、リース業界がこれに猛反発した。リース業界はセールストークの1つとして、リース契約のオフバランス効果を挙げていた(今も)。オフバランスというのは、購入した資産のようにB/Sに載せなくてもよい、ということだ。これがどういうメリットなのかというと、主なものは

 

・財務数値の改善

事務管理コストの削減

 

だろう。財務数値の改善は例えば、ROAが高くなる、自己資本比率が高くなる点が挙げられる。

高島屋の場合、オペレーティングリース(将来の支払い義務を示す未経過リース料、2015年2月期)は906億円と1年間で4倍強に拡大した。仮にIFRSを適用して、これが全部負債に乗れば自己資本比率は計算上、(41%から)38%程度まで押し下げられるしかも高島屋が1年以内に支払うリース料は15億円程度で、仮にこの水準が続けば59年先までリース債務を背負い込んでいることになる。』

会計士になりたての頃(日本にまだリース会計が導入されていない頃)、会計監査の現場で先輩に、『何でリース契約の残リース債務の注記情報の妥当性をチェックするか解るか?』と聞かれたことがある。その答えが『リース・コミットメント』だ。リース契約がオフバランスとされると、リース資産が見えないだけなく同時にリース債務も隠されてしまうことになる。したがって、リース契約がオフバランスなら注記の妥当性をチェックする、と言うわけだ。現在もオペレーティング・リースはオフバランスであり残リース債務などの情報は注記として記載されているが、今回予定されている変更はそれをオンバランス、注記でなくB/Sに載せることでより読者にとっては会社が有する負債情報を読み取りやすくなるということになる。会社にとってはメリットが失われるというような方向の報道がされるが、それは同時に財務数値の利用者にとってはメリットとなるのである。