溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

アパレル業界は何故SALEをするのか?

運転資本繋がりでこんな記事もあったので、紹介したい。

 

『カジュアル衣料大手、しまむらの2015年3~11月期の連結営業利益は、前年同期比4%増の310億円程度になったようだ。秋口に例年より涼しい日が続き、ロング丈のカーディガンなど婦人衣料が好調だった。在庫管理を徹底し、商品の売り逃しも減った。減益だった3~8月期決算から回復傾向が鮮明になっている。』

 

しまむらが業績好調とのことだが、営業利益率の改善と在庫管理はどう結びつくのだろうか?

 

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『在庫管理を専門で担う部署を導入した成果も出た。機動的な商品投入で、需要が大きい季節の変わり目での売り逃しが減少した。不良在庫もなるべく減らし、値引き販売の抑制にもつなげた。』

 

例えば、大量に見込発注(メーカーであれば生産)した春夏商品が売れ残ったとする。売れ残った商品をそのままにして更に秋冬商品を仕入れると、その分の仕入資金が必要になる。つまり、運転資本の増加する。しかし、無尽蔵に借金を増やす訳にもいかない。在庫の保管コストもバカにならないし…

 

さて、どうしたものか?

 

そこで、売れ残った春夏商品を値下げ販売してでも商品を現金化して秋冬商品の仕入に充てることになる。

 

アパレル業界に代表されるように季節性が高い製品商品を扱う業界はこのような事情で定期的に在庫一掃セール、SALEを行うことが多い。

 

とはいえ、アパレル事業者にとってはこのようなSALEの常態化は決して望ましいものではない。そこで、しまむらのように在庫管理を強化する、例えば一度に大量発注するのでなく、小ロット発注してリードタイムを短縮して納入、その上で一定の利益を確保する体制を構築するなどが考えられる。また、こうすることで手元資金を維持して売れ筋商品と見ると瞬時に資金投入することができる。記事に言う、機動的な商品投入で売り逃がしを減少、ということだ。 

また、大量に見込み発注(生産)するのではなく、予約販売の形態を採ることも対応の1つである。事前に顧客からの受注を得ることで見込み発注(生産)による売れ残り(→大幅値下げによる在庫一掃セール)のリスクを転嫁するわけだ。事前に予約、あるいは一部予約金を要求することにより、事業者は予約金を仕入の支払いに充てることができるので資金繰り的にも得策である。一方で、顧客にとっては商品を手に入れる前に(一部)支払いを求められるため不利と言えば不利になる。そこで、例えば、事前に予約すれば10%OFF、といったメリットを与えることも必要になる。要するに在庫を巡るリスクを事業者と顧客との間で綱引きをしているようなものだ。

 

このように、アパレル事業者にとって在庫管理を強化することは、資金効率を上げると同時に利益率も改善するという訳だ。

このような取り組みが増えてくると、SALEを心待ちにしている消費者にはあまりありがたくないかもしれないが…