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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

繰延税金資産のルール変更が利益を振り回す!?

zasshi.news.yahoo.co.jp

『2015年12月28日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「繰延税金資産」を計上する際の”回収可能性”について、指針を公表した。』

 

細かい内容は横において、これが会社の決算(利益)にどういう影響があるかというと、

繰延税金資産の回収可能性というルールを変更すると、税引前利益には影響しないものの、最終利益には影響してくる。回収可能性がなくなれば繰延税金資産を取り崩すことで、取り崩した決算期に、最終利益の減益要因となるのだ。反対に、回収可能性が新たに生じれば、繰延税金資産を積み増すことになり、最終利益の増益要因となる。』

 

繰延税金資産の会計ルール(仕組)については、過去のブログ記事を参照(繰延税金資産の計上ルール変更は会社にとって得なのか? - 溝口公認会計士事務所ブログ

してもらうとして、簡単に言うと、

繰延税金資産が増える⇒当期純利益は増える

繰延税金資産が減る ⇒当期純利益は減る

という関係にある。

 

したがって、今回のルール変更が、『企業に甘い』となると、

繰延税金資産が増える⇒当期純利益は増える

という方向ということになる。会計ルールの設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は明言はしていないが、要するに今までであれば認められなかったケースでも繰延税金資産を認める(増やす)『余地』を広げる、ということだ。

売上高や営業利益といった”業績”が同じであっても繰延税金資産をどれだけ認めるかによって当期純利益の金額が変わる可能性が高まる、と言うことだ。

 

『しかし、小賀坂副委員長は、「緩めているつもりはない企業が判断する局面は増えるが、監査が緩くなるわけではないIFRSには分類がなく、すべてを企業の判断に委ねているが、だからといって緩いかというと、そうでもない。緩いか緩くないかは、今後出てくる決算で、判断されるべきものだ」と、そうした見方に反論した。』

 

まあ、それは確かにそうなんだろうけど、実際、このルール変更により(当期純)利益を良く見せるための選択肢が増えることになる会社がそれを使わないということは無いし、その適用の妥当性を判断する監査法人も会社に対してどこまでリミッターを効かせられるか・・・

 

『今後、新たな実務指針を”悪用”する会社が出てくるか、どうか。第2、第3の東芝新日本監査法人が、現れはしないか。それはひとえに、企業自身の自律、監査法人の姿勢にかかっている。』

 

アメリカの銃社会ではないが、使える余地が増えるということは同時にそれによる危険度も増すことになる。ルールの趣旨、意義の正確な理解と何よりもルールの担い手の倫理感が前提になると思う。

が、

『これは2016年4月1日以降に始まる決算期から強制適用となる。つまり3月期決算が多くを占める日本企業では、来2017年3月期以降だ。第1四半期(2016年4~6月期)から、企業はこの指針に従わなければならない。ただ、早期適用をしたい会社なら、今2016年3月期から、すなわち、2015年4月1日にさかのぼっての適用も可能である。』

 

倫理感を醸成している時間はなさそうだ・・・