溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

決算発表集中日 その理由とは? 【最後少しボヤキ系】

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 『東証によると、13日は計747社が決算を発表し、過去最多の「集中日」となった。東証は期末後45日以内の決算発表を企業に促し、投資家が余裕をもって決算情報を分析できるように発表の前倒しも求めた。』

先週の5月13日が3月決算会社の決算発表の集中日だった。

ここ数年、取引所の要請もあって分散傾向にあった決算発表がそのぶり返しなのか、一転して過去最多の混雑を極めたとのこと。

決算発表とは、会社が決算をまとめて外部に公表する手続きだ。記事にもあるが、取引所は45日ルール(今は緩和され望ましいレベル)、決算日から45日以内での決算発表を推奨しており、その期限前のぎりぎりのタイミング(金曜日)が5月13日(金)ということだ。これは、業績をできるだけ早期に投資家・株主に投資資意思決定のための情報を届けるという目的だ。そして、望ましいと言いながらも、50日を超える場合はその理由を開示しろという要請もあり、会社からすれば決算が遅れた理由を書かされるというのはある意味辱しめを受けるようなものなので、実質的にはルールといっても良いだろう。

 

一方で、会社からすれば外部公表した業績を会計監査で修正することになれば、訂正発表することにもなり、これもまた恥ずかしい・・・ということで、会社が決算をまとめるだけでなく会計監査もある程度終わった段階で決算発表となると、45日は結構厳しいハードルだろう。ということもあり、5月13日を含む期限前の最終週に決算発表が集中する傾向はどうしてもある。

もっとも、早い会社は早い。一番早い会社(あみやき亭)は4月1日に決算発表しているが、これは特殊としても、3月決算会社約2,400社のうち、4月20日までに発表する会社は10社程度ある。そして、1つ目のピークがGW前発表で200社程度、2つ目のピークがGW明け発表で300~400社程度となり、翌週が45日ルールの週の駆け込み発表になる。

 

取引所がもう1つ要請しているのが、決算発表の分散だ。会社の決算体制や45日開示という中でどうしても期限間際での決算発表に集中することは理解できるものの、『株主・投資者による決算情報の収集や分析に影響を及ぼし、結果として開示された決算情報の投資判断への反映が遅延するなどして、証券市場における価格形成の円滑性、効率性が低下することが懸念されるところです。』として出来るだけ決算発表日の分散を求めている。また、ピンポイントではギリギリのギリ、45日目の午後3時にオンラインでの登録が集中するとシステムがオーバーフローするなんていう問題もある。

ここ数年は、決算発表日の分散が効果として表れていた。例えば、今年の5/13、つまり45日以内の最後の金曜日に当たる以下の日程の決算発表社数は以下。

 

2015年5月15日 359社 (15.2%)

2014年5月15日 259社 (12.4%)

これに対して

2016年5月13日 747社 (約25%)

昨年対比倍以上の集中度合いになった。大幅に分散傾向が停滞(悪化)したようにも見えるが、実は昨年までは5月11日(月)~5月15日(金)の週の間での発表日の分散を図っていたということもある。つまり、直前の2,3日で分散させていた決算発表が今年は5月13日に集中してしまったということであろう。

業績が悪いとあまり目立ちたくないので他社と同じ日に発表して目立たなくする、ということも言われるが、会社の業務カレンダーは決まっていて5月の取締役会日の午後に決算発表という流れが多いのではないかと思われる。したがって、業績の良い悪いで日をズラすというこは通常はあまりないのではないかと思う。それよりも、業績予想値、特に今年は想定社内レートをどうするか、の確定に時間がかかったのではないか。また、ホンダのように(タカタのリコール問題の影響額)決算に織り込むべき数字が(監査法人との協議も含めて)確定しない状況などでは決算発表日を遅延することになる。

 

決算発表が集中した理由の1つとして記事には、

『しかし、複数企業の社外取締役を掛け持ちする経営者が増えた結果日程調整が難しくなって、決算発表が集中する事態を招いた。』

 

コーポレートガバナンス・コードの目玉の1つの社外取締役、これが決算発表の集中の原因とは、なんとも皮肉な結果だ・・・