http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKASGD18HK5_Y6A510C1EN1000
5月19日日経朝刊から
『一部の投資家は、これまであまり注目されてこなかった、ある数字をもとに銘柄選別を始めている。ある数字とは、1株あたり利益だ。』
と言うことで、1株当たり利益に注目した記事。
1株当たり利益の何に注目したか、
1株当たり利益の伸びが当期純利益の伸びを上回る会社は、株価が堅調
と言うことだ。
1株当たり利益が伸びている会社の株価が上昇しているとのことだが、その立役者が自社株だ。
『日本の株式市場では長らく、企業業績を純利益の増減率で評価する習慣が続いていた。他方、自社株買いが旺盛な欧米では、1株利益の増減で判断することが一般的になっている。』
過去ブログにも書いたが、株価の1つの目安としてPER(株価収益率)がある。
株価=1株当たり利益*PER
なので、1株当たり利益が高まると株価が上昇する関係にある。
自社株は1株当たり利益を算定する際に、発行済み株式数から控除されるため、例えば、10,000株発行している会社が2,000株の自社株を購入すると場合、
当期純利益が1百万円とすると、
1株当たり利益は125円(=1百万円÷(10,000株-2,000株))となる。
自社株を取得しない場合(100円)よりも株価が25%高まることになる。
『インテリア商社大手のサンゲツのように、17年3月期の純利益が減る見通しなのに、1株利益は逆に増加を見込む企業もある。』
という極端な例もあるように、純利益の額が低下したにもかかわらず、自社株を取得することで1株当たり利益が高まる方が株価に好影響らしい。
こんな事情で株価が上昇ってどうなんだろうか?
利益額が下がって自社株を買ったことが、株主にとっての会社の価値が高まっていると言えるだろうか?
もっとも、適正株価と言っても、誰にとって適正かにもよる。
株主にとっての適正株価と言っても、長期保有目的の株主もいれば、短期保有目的の株主もいる。
どの株主が正しくてどの株主が間違っているということもない。
まあ、短期保有目的の各株主にとっては株式の価値は高まったと言えるかも知れない。
しかし、会社が生み出す利益額が減少している場合、もう一つ言うと前提条件が変わらなければフリーキャッシュフローが減少しているとすれば、企業価値は減少していることになる。
ケーキ自体は小さくなったのに、食い扶持が減ったことで、1人あたりの分け前が増えただけ、だ。
そして、自社株は株式交換やストックオプションの付与などで再放出すればその瞬間に1株当たり利益は下がることになる。
食い扶持が再び増えることもあるわけだ…
経営者も株主、投資家も事情の分かった者同士の化かし合いならお好きにどうぞだが、よもや、会社の価値が高まったと真顔で受け取る人がいないことを願うばかりだ…