溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

自社株消却と株主還元姿勢との関連とは? 【日産の例】

www.nikkei.com

日産自動車は23日、7月1日から今月21日までに自社株買いで取得した1億800万株すべてを30日付で消却すると発表した。発行済み株式数の2.46%に相当する。大成建設も23日、2.09%に当たる2451万6千株を30日に消却すると発表した。自社株買いで1株当たり価値を高めるとともに、市場に再放出する懸念をなくして株主還元の姿勢を明確にする。』

 

久々の自社株ネタ。

自社株買いが、1株当たり利益を高めたり、ROEを向上させたり、ひいては株価を上昇させたり、の効果があることは過去ブログにも書いた。

 

・ 自己株式を買うとどんなメリットがあるのか?

自己株式を買うとどんなメリットがあるのか? - 溝口公認会計士事務所ブログ

 

・自社株買いと株価の関係 最近の傾向

自社株買いと株価の関係 最近の傾向 【少しボヤキ系】 - 溝口公認会計士事務所ブログ

  

今回の記事も内容的に特に目新しいということではないが、これまでの記事の確認も含めて書いてみたい。

 

会社が自社株を購入すると、自社株は1株当たり利益の計算上の発行済株式数に含められないため、見かけ上、1株当たり利益が高まる。

例えば、当期純利益10,000 発行済株式数1,000とすると、1株当たり利益は10

となるが、自社株を200買うと、計算上の発行済株式数が800(1,000-200)となるので、1株当たり利益は12.5上昇する。

 

また、純資産比率50%(負債:純資産=1:1)の会社の財務レバレッジは2(=総資産/純資産)であるが、純資産の2割(総資産の1割)に相当する自社株を購入すると会計上、自社株は純資産のマイナスとして処理されるため、純資産比率は44.4%、財務レバレッジは2.25となる。要は、相対的に借金の割合が大きくなるのだが、これが、ROEを高めることになる。この場合は、財務レバレッジが2→2.25と12.5%高まるので、他の要因(当期純利益率、総資産回転率)が変化しないとすると、ROEも12.5%改善することになる。

 

そして、

株価=1株当たり利益*PER(株価収益率)

なので、自社株買いによって1株当たり利益が上昇すると、PERが据え置かれるとすると株価は高まるというわけだ

 

いずれも、自社株を『購入』した時点で得られる効果である。

 

そして、今回の日産のニュースは、『購入後』の自社株を『消却する、ということである。

自社株を『消却』することが『株主還元の姿勢を明確にする』ことになるのだろうか?

自社株を消却することで、更に1株当たり利益、ROE、株価が高まるということではないが、『市場に再放出する懸念をなくして』すことで、これらの数値を低下するリスクを払拭することである。

 

自社株は会社が購入しても会計上の取り扱い(1株当たり利益計算から控除)や会社法上の取り扱い(配当請求権、議決権がない)はともかく、株式としては以前存在する。

会社が自社株を再利用することは可能だ。実際、株式交換によるM&A、ストックオプション、従業員の退職金の支払い(へ自社株を利用)のような使用例がある。

そして、会社が自社株を再利用するということは、すなわち、会社が以外の第3者が新たな株主になるということであり、結果として、1株当たり利益、ROE、そして株価も元の水準に戻ることを意味する。

つまり、自社株を消却することは、一旦高めた1株当たり利益、ROE、株価を元の水準に戻さないという意味で、自社株の再利用による会社の財務数値へのネガティブインパクトのリスクを排除する、ということで株主に報いるということになる。