溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

日本企業の利益率が低い理由とは!?

bizgate.nikkei.co.jp

 

面白い記事があったので、少しコメント。

 

主張としては、

日本企業の利益率が低い(ローリターン)はローリスクによるものだから、リターンだけで(各国と)比較するべきでない。

リスクも合わせて比較すれば日本はそれほど収益性は低くない

というものだろう。

リスクに対してより効率的にリターンを上げた、つまりシャープレシオの考え方だ。

「日本は世界38か国中、利益率の時系列ボラティリティが最も低いのです。この数値が低いということは、利益率のブレが小さいということを意味します。ROAが高くなることも少ないが、下振れも小さい。」

利益率をROE,ROAをベースに比較しているが、これら財務指標の相違の根本的な原因は主にROS(売上高利益率)にあるので、要はP/Lの利益率が低い、あるいはブレが少ないという理解。

利益率のボラティリティが低いということは、利益の予想がしやすいということでもある。投資家からすれば、当たり外れが大きい会社(利益のボラティリティが大きい)よりも来期(将来)の利益の予想がし易い、これが(バラつきの)リスクが小さい→安心感につながる。

言ってみれば、

順位自体の優劣はともかく、万年3位のチームと、毎年1位と6位を繰り返すチームの来期の成績を予想する場合に、どっちのチームが予想し易いか

ということだ。

 

ところで、

利益=リターンのブレ幅が少ないのは何故だろうか?

日本の会社は総じて利益のブレ幅が少ない「産業」に投資しているということを指摘しているのだろうか?単純に、諸外国は利益のアップダウンが激しい産業中心、日本は利益のブレ幅が少ない安定的な産業中心か、ということだ。確かに、オーストラリア、カナダのような天然資源・鉱物関連中心の産業構造とは異なるが、日本の中心産業も為替変動の影響など決して経済環境が安定しているということでもない。それなのに、何故、日本の利益の時系列ボラティリティが際立って低いのか、ということを指摘して欲しいなあ、と思うのだ。

 

この点について、

・安定志向

・売上高至上主義

・儲ける気がない

の3点ではないだろうか。

 

安定志向は言わずもがなだろう。日本の伝統的な思考だ。多くの会社は現在でも加点主義よりも減点主義ではなかろうか?アップダウン、つまりアップがあるということは「相対的に」ダウンが発生する。アップが+2、ダウンが-2なら平均は0のはずだが、心理的に-2を重く受け取る傾向がある。この点はファイナンス理論でも指摘(プロスペクト理論)されているが、心理的な作用として日本人には強く働くのではないかと考える。

 

売上高至上主義も日本の経済社会には根強い。業界No1の称号を利益ではなく、資産活用の効率性ではなく、売上高という(P/L)の1項目で決定する習わしがこの国にはある。ということは、経営者のモチベーションとしては、多少割の悪い商売であっても採算度外視であっても売上規模拡大のインセンティブが働くのだ。もしかしたら、競合が利益率が低いという理由で撤退した市場へシェアを求めて乗り出すなんてこともあったかもしれない(80年代に米国に進出した日本企業など)。もちろん、最近はまさにこの点を投資家、株主から指摘され、重視すべき経営指標を見直す会社も増えている。

 

「儲ける気がない」だが、伊藤レポートにも指摘されていたと思うが、長らく日本の会社はメインバンクによる統治(デッドガバナンス)が中心だった。

物言う株主の台頭や会社は誰のもの的な議論はせいぜいここ20年程度の話だろう。銀行としては、あまり会社の儲けられると貸出金の繰り上げ返済にもつながり、ヨロシクない。元利が計画通りに回収されるのが良い。その程度の稼ぎを会社に期待する。安定的に。

つまり、会社にとってはハードル設定がそれほど高くはならない

そして、対前年比や同業他社との比較を気にしたり、さらには特別損益を利益の調整弁に使うことも少なくない。

こういう状況で、自己記録の更新を目指して高い目標に挑む会社がどれだけあるだろうか?自分の実力の範囲で安定的な成績を出すことが評価されるのであれば、敢えて高い目標に挑戦して失敗する(評価が下がる)リスクを冒す必要もあるまい

要するに、

大抵のことがあっても自己調整できる程度の目標設定と

それを許容するガバナンス

だ。

コラムに言う、ローリスク・ローリターンの背景にはこういった従来日本企業を取り巻く環境があったように思うのだ。まあ、最近はそういった環境も変わってきているが、未だ上場会社の多くは旧態依然のようにも思う。

  

成長は必要なのか?2番じゃダメなんですか?

分からなくはないが、(売上や利益の)成長、順位は「結果」だ。

逆に最初から現状維持や2番を目指して達成できるとも限らない

相手あってのこと、競合はどうだ?日本の競合も同じように考えているのか?

 

冒頭の平均利益率の高い諸国、確かに利益の振れ幅は高い(ハイリスク)かもしれないが、時系列平均利益率は日本を優に上回る。

失敗もあるが、成功した時はデカい

失敗から学ぶからこそ大きな成功につながる

とも言える。

先日ノーベル賞を受賞された大隅教授も日本のお家芸とされる各界の基礎研究の分野にも警鐘を鳴らされていた。

大きな成功はそれに見合うコストも必要になる。何事も安定、安定ではイノベーションの期待薄だし、それこそ必死に成長しようとする諸国に勝っていけるのかと将来が不安になる。

それに、判断基準がオモロイかオモロナイか基準の自分としては、

そんな世の中はオモロクない。