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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

AIは会計監査の信頼性を高めるのか? 【久しぶりのボヤキ系】

 


最近やたらとAI関連の情報が目につくように思う。それだけ注目すべき最先端技術であり、また多くの領域に応用展開が可能という点も話題性に繋がるのだろう。

 

そして、会計監査の分野にもAIを活用しようという動きがある。

記事にもあるように、新日本を始め4大監査法人もAIをいかに会計監査に活用するか研究に取り組んでいる、とのこと。

 

とは言え、未だ研究中ということで、外部に発表されている内容からは、

”あ~、だからAIなのね!”、と膝を打つようなアイデアは聞こえてこない。

 

一見、既に会計監査で活用しているCAAT(Computer Assisted Audit Techniques、コンピュータ利用監査技法)と同様の使い方な印象だ。

企業規模の拡大、会社取引の複雑化に伴い監査対象となる取扱いデータも莫大になると、コンピュータシステムからアウトプットされた情報を

人力のみで監査するのは非効率的だし、また、

会計監査の品質にも影響

がある。人力で監査対象としなかったデータの中の不正を見逃すリスク

があるし、会社から提出されるデータが改ざんされるリスクもある。そこで、企業内に存在する様々な各種データを直接的に監査対象とする。もちろん、コンピュータシステムの信頼性を監査した上でだ。

例えば、売上の前倒し計上が行われやすい期末付近の一定期間の売上取引、利益率が不自然に高い/低い取引、回収期限到来済みの売上債権などを網羅的に抽出して監査対象とする。 

監査対象となるデータの網羅性を確保しつつ、取引を効率的に抽出するという訳だ。

 

では、

AIに移行して、何が飛躍的に改善するのだろうか?

最近の会計監査の失敗の事例を見るに、何らかの改善を講じる必要があることは分かる。

しかし、何故にAI、については現時点では疑問だ。

確かにAIの活用によりCAATよりも精度高く監査対象とすべき、不正の可能性が高い、取引を抽出しやすくなることや、プログラムを常時ランすること(継続監査、常時監査)で、監査対象とすべき取引を適時に発見することは期待できる。

 

会計監査の信頼性とは別に、AIの活用により会計監査人の数を減らせる(コストダウン効果)や、会計監査人に求められる資質も変わるなどとも言われる

コストダウン云々はトータルコストで考えるべきで、人件費だけでなくAIの開発、導入、運用コストを併せてどうなるかが問われるべきだし、時代と共にプロフェッショナルに求める資質やスキルが変わるのは会計監査に限った話でもない。当たり前の話だ。10年後に無くなる職業など言われることもあるが、

どんな職業も全員が等しく儲かる職業などないのであって、話題性はともかくその手の議論は不毛に感じる。

 

話を戻して、

問題は、怪しい取引を発見した『後』の対応ではないかと思う。

CAATにしろAIにしろ、会計不正のニオイのする取引を発見したとして、それで問題解決とはならない。

「AIが怪しい取引と言っています。さあ、白状しなさい」と言って、

「ははあ、お見それしました。申し訳ありません」

という反応はまず期待できない。だから、東芝のようなケースに至ったのではないか…

やる方は本気だ。実際、バレたら会社の一大事、いや個人としてもどうなるか…

あっさり非を認める訳がない。

東芝の会計監査についても過去ブログに書いたが、現在の監査手法でも怪しい取引は発見されていたと思う。要は、そこから詰めきれていないのが問題なのだ、諸般の事情により…

 

過去ブログはこちら👇

東芝の不適切な会計処理 監査法人の責任は? - 溝口公認会計士事務所ブログ

 

会計監査の信頼回復ということで、何かしないといけない、それも分かりやすい形で、と言うのは分かるのだが…

一周回って、結局は、会計監査人の監査スキル、それ以前に監査クライアントとの向き合い方に尽きるのではないかと思うのだ。

もちろんAIがその力をいかんなく発揮して、僕の心配が杞憂に終わってくれればそれはそれで良いけど。