『東京証券取引所は17日、上場企業が「リキャップCB」を発行する際の留意点を公表した。新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行して、自社株買いの原資とする手法で、長期投資家から「小手先の財務改善だ」との批判が根強かった。』
リキャップCBについては、このブログでも度々取り上げてきた。
詳しくはこちらを参照☟
ROEを高める錬金術とは!? ~ボヤキ系~ - 溝口公認会計士事務所ブログ
ROEを高めるためには結局・・・ ~リキャップCBに限界~ 【日本ハムの例】 - 溝口公認会計士事務所ブログ
リキャップCBは、簡単に言えば、借金をして得たおカネで自己株式を取得して会社の純資産と負債の割合をリバランスするスキーム(金融商品)。何のメリットがあるかというと、負債割合を高めることで、ROEが改善する。
要は、おカネで財務改善を買う、ということだ。
初見から、あざといというか記事のように小手先の財務改善、
という印象だった。おカネかけてまでするか~!?っと。
ということもあり、ブログで密かに警鐘を鳴らしてきた(笑)
だから、今回の東証の提言も方向性は同じだ。
『東証は企業に対し、発行の理由や資金使途、株式への転換が進んだ際の対応策などを投資家に説明するよう求める。』
ところで、日経に記事についてまず言いたいのだが、この記事を読んで皆さんはどんな印象を持つだろうか?
発行体である会社に対してリキャップCB発行の際にはこんなことも必要になるよ、と安易に発行することを抑制する印象を持つのではなかろうか?
実際の書面はコチラ☟
http://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000002btoz-att/nlsgeu000002btrk.pdf
一読いただきたいが、日経記事とは随分印象が異なる内容に思えた。
日経がそういう風に読者を印象付けたい意図があったのだろうか?
新聞記事だけで理解しては恐いな、と、改めて原本に当たる必要性
を感じた。
さて、東証の提言は、要するに、
『会社の皆さん、やみくもに内部留保は悪、株主還元は善とすべての投資家が考えているわけではないですよ。また、投資家は実力の伴わない見かけだけの財務改善を期待している訳ではないですよ。ましてや割に合わない手法を用いるのであれば、かえって期待を裏切ることになりますよ。本当にわかっていますか?』
と言うことだ。
冷たい言い方をすれば、
リキャップCBを財務比率改善の手段を使うも使わないも会社の自由だ。
会社のROEなどの財務指標が会社の経営努力によるものなのか、はたまたこのような小手先の錬金術なのか、更にはそういう手段を用いる会社なのかといった要は会社の『質』、その是非は投資家が見極めて投資意思決定
すれば良いだけの話だ。理にかなわないことをしているとなれば、その会社は証券市場から淘汰されていくだけだ。
今回の提言は、あまりにも多いミスコミュニケーションに業を煮やした東証がたまりかねて”口下手な”会社にサジェスチョンをするに至ったということだろうか?
『それっとどうなのよ?』ということであれば、機関投資家と会社が直接コミュニケーションをとって意識ギャップを解消すれば良いものを、と思うのだが・・・
同じような事例☟
「相談役就任、経緯開示を」 元トップの院政にNO! 経産省研究会が報告書 :日本経済新聞
親切と言えば親切だが、箸の上げ下げまで言わなあかんか・・・
と思ってしまうのである。