溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

会計監査の信頼が遠く霞んだ日・・・ その2

www.nikkei.com

 

長くなりそうだったので分割。

その2は、内部統制監についてだ。

 

これも釈然としない・・・

 

日本の内部統制監査において、「不適正意見」はまず無い

あり得なくはないが、まず無い。

 

まず、少し内部統制報告制度、監査制度を簡単に説明すると・・・

 

内部統制報告制度は、

会社(経営者)が、内部統制報告制度に則って、適正な財務報告を行うに足る社内体制(内部統制)を敷き適切に運営しているか、チェックをしているかを定期的に確認して(金融庁に)その結果をレポートする制度のこと。

 

それを受けて、

内部統制監査制度は、

会計監査人(監査法人)が会社(経営者)が採った自社の内部統制の評価の範囲や評価手続き等が妥当かどうかについての監査意見を表明する制度のこと。

 

ざっくり言うとこういうことである。

 

ポイントは、監査法人が監査の対象とするのは会社(経営者)の評価プロセスと結果であって、会社の内部統制そのものでは無い、ということだ。

少々分かりにくいかもしれないが、JSOX制度導入時に監査コストの上昇などの懸念から日本ではこのような制度とした。ちなみに、アメリカでは監査法人が直接会社の内部統制が有効か否かの意見表明をする(これを、ダイレクト・レポーティングと言う)。

 

こういう制度のため、少々分かりづらい状況が発生する。

例えば、会社(経営者)が自社の内部統制を評価して当社にはこういう内部統制上の問題(報告すべき重要な不備)があります、とレポートし、会計監査の結果、確かにそのような問題がある、と判断される場合は、内部統制監査上は『無限定適正意見 』となる。

 

と、言うことは、内部統制監査で『不適正意見』が意味するところは、

会社(経営者)と監査法人との内部統制に関する『意見が不一致』

ということだ。

 

で、実際の内容を確認すると、以下。

 

あらた監査法人の主張は、

例の特定の工事損失(工事損失引当金)6,522億円を本来会社の決算財務報告に係る内部統制が有効に機能していたら、あるべき2016年3月期に適正に計上されていたはずで、それが当期ずれ込んだことが内部統制上の重要な不備だと主張している。争点となっている内容は財務諸表監査と同様。まあ、これは普通。

 

一方の東芝経営者の主張は、簡単にまとめると以下。

監査法人から指摘された不備は、M&Aに関して発生した特別の会計処理に関するものであり、その会社自体が(再建中で)評価すべき内部統制の範囲から外したので現在の会社の内部統制に実質的な問題は無い、というもの。要は、

患部を切り取ったので問題なし、ということだろう。もともと、ウチの会社じゃ無かったしということも含まれているのかもしれないが、それを言い出すとM&Aは今後出来なくなるな・・・

 

ものすごい違和感・・・

意見相違があることは無くは無いが、そこ争う所じゃないでしょう。

ぶっちゃけ、仮に会社の内部統制自体は99%有効に機能していたとしても、1%の隙間を突いて不正が発生、発覚したとする。その場合であっても、会社としては、確かに問題は起きましたがこれは全くの偶然の産物であって、当社の内部統制上の問題は有りません、とは言えないものだ。JSOXにおける内部統制は、会社が正しい決算報告をするための内部統制に限定しているため、内部統制(プロセス)の評価と、決算数値(結果)の評価は独立せずに相互に関係する。そのため、不適切会計などが結果として生ずると内部統制(プロセス)は結果責任を取らされることになる、というわけだ。

また、会計監査では不適正意見が表明されると上場廃止が問題となるが、内部統制監査あるいは会社の内部統制報告制度にはそのような規定は無い

 

つまり、会社として、どうしてもウチの内部統制は有効なんです、と主張する理由は何なのだろう?という疑問。

 

ここからは完全に個人の憶測となるが・・・

 

もしかしたら、バーターかな?と。

とりあえず、守るべき会計監査で曲がりなりにも『適正』をキープして、比較的ダメージの少ない内部統制監査で『不適正』を出させて監査法人のメンツを保つ、みたいな。

いや、これは完全に浅はかな憶測に過ぎませんが・・・

 

ちなみに、東芝は2016年3月期の内部統制報告において

・経営トップらに対する監督強化

 取締役会(メンバー)の構成 

 指名委員会の構成機能

 監査委員会の構成・監督機能

・内部統制機能強化

 予算統制見直し(チャレンジ)

 業務プロセス(工事の進捗管理

 内部通報制度の強化

 など

・マネジメント・現場の意識改革

といった内部統制上の報告すべき重要な不備を報告している。

 

その多くは、個別の業務フローを単純に見直せばすむという不備ではなく、会社の企業文化とか社風と言った会社全体レベルの統制も含まれる。

これら会社全体レベルの統制に関する不備は、一般的には改善に時間を要すると言われるが、これらの不備も1年で全て改善した、と報告をしている。

このゴタゴタの1年の間にである・・・

 

ホンマかいな・・・

 

だとすると、何としても内部統制は有効(不備は改善された)とする事情が別にあったのだろうか・・・