溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

二重課税は何が問題なのか? 【希望の党の例】

ちょっと前の記事を引用。その後、内部留保内部留保課税について様々なメディアで識者などから意見が上がり、結果として、内部留保に対する社会的な認識が高まってきたのは良いことだと思う。このブログでも過去に何度か内部留保について書いているが、これを機に少なくとも内部留保≠現金』の理解がビジネスパーソンの常識となって欲しいところだ。

今回は、内部留保課税について少し触れてみたい。
希望の党が今回の選挙公約に掲げた企業の内部留保への課税、いわゆる内部留保課税。賃上げや設備投資を促す起爆剤にするのが小池氏の狙いとのこと。

 

https://www.nikkei.com/content/pic/20171006/96958A9E9381949EE2E49A86888DE2E4E3E2E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXMZO2191624005102017000003-PB1-7.jpg

ここで、内部留保≠現金だから、内部留保が大きいからと言って現金を貯めこんでいるとは限らない。それを理由に課税するのはおかしいという意見もあろうが、ここでは、議論の焦点をブラさないために、仮に内部留保=現金として進める。実際、10/21日経朝刊(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171021&ng=DGKKZO22528140Q7A021C1DTA000


)でも、金額はイコールではないものの、内部留保保有現金の増減はシンクロしており、総じて、内部留保の高まりが現金をため込んでいる状況の背景にあることは言える。まあ、ここでそれを言いたいわけでないが・・・

 

https://www.nikkei.com/content/pic/20171021/96959999889DE0E0E7E0EAE3E6E2E0E2E3E2E0E2E3E5968693E2E2E2-DSKKZO2252816020102017DTA000-PB1-2.jpg


内部留保課税に反対の理由として、二重課税だから、という意見が目立つ。
これについて違和感を覚える。では、

二重課税じゃなかったら納得するのか?


税制は難しい。課税には公平性、中立性が重視されるべきであるが、言うは易しで、何をもって公平、中立なのかが判別しにくい。誰から見るかによっても公平委の定義は変わり得る。


世の中に二重課税がないかというと、既に存在する。制度として運用されている、つまり認知されているのだ。もちろん、不満が無いとは言わないが、国民全体として一定の範囲で納得が得られているのだ。

二重課税の代表的な例は
相続税、配当課税や特定同族会社の留保金課税だ。
これ以外にも、ガソリン税に対する消費税も二重課税ではないかという誤解もあるほどだ。


二重課税は、一の納税者 に対して、一の課税期間において、一の課税要件事実、行為ないし課税物件を 対象に、同種の租税を二度以上課すことを指す。したがって、ガソリン税に対する消費税などは、納税者が異なるので二重課税には当たらない。


相続税も、所得に対する所得税と相続資産に対する相続税は課税物件が異なるという見方もある。この点、日本の税制では、ザックリ言うと所得税と同様に相続税は実質的に所得にかかる税金という立て付けであるため二重課税とされる(遺産取得課税方式を採用しかつ所得税の補完税として構築されている)。


配当金は、法人の所得に対する法人税と配当を受ける個人に対する所得税は納税者が異なるという意見もある(法人実在説)。一方で、法人税所得税の前取りであり、同じ課税物件である所得に対する二重課税だという見方もある(法人擬制説)。現在の税制では、後者の立場に立つ。つまり二重課税というわけだ。ちなみに、この二重課税については、申告による配当控除(二重課税の解消)が認められている。


ヤヤコシイ部分は読み飛ばしてもらって結構だが、要するに、二重課税と言っても、
二重課税自体が多義的な不確定な概念なので、見方によって玉虫色に変化してしまい、誰にとっての二重課税、いつのどの所得等に対する二重課税なのかを明確にして議論しないとそもそも二重課税なのかどうかもよくわからないことがしばしばある。


企業の内部留保に対する課税については、法人税を課税された後の所得に対する課税であるため二重課税と考えて問題ない。しかし、当期新たに発生した内部留保に対する課税なのか、それとも期末の内部留保残高に対する課税なのかによっても話は変わる。後者のストックに対する課税となれば二重課税どころか多重課税となる・・・

二重課税は筋が良い課税かというと、それはやはり筋が良いとはいい難い。二重課税を認めると担税力を超える課税となり、課税の公平性を欠き、また競争意欲を削ぐ原因となるからだ。いくら頑張って稼いでも、稼ぎのほとんど(場合によって稼ぎ以上)を税金で取られてしまっては頑張って働く意欲は減衰するだろう。

国としても

多くの卵を得ようとして、鶏を弱らせては本末転倒
だろう。

しかし、だからといって、二重課税が即悪い、とするのも早計だ。

そもそも、何故税金が必要かと言えば、市場の失敗の補完のためだろう。

簡単に言えば、市場原理だけに任せておくと、民間の企業は自分たちに直接のメリットの期待できることしかやらない。一企業としてはそれで結構だが、しかし、国や社会全体には必要公共財)というものがある。例えば、国防、警察、外交などだ。民間がやらない以上、国がやるしかないし、そのために必要な資金を税として民間から徴収する。これが税金だ。

また、経済発展のために民間の自由競争は促進するとしても、自由競争の結果、

行き過ぎた貧富の差が生まれる場合がある。

これに対して、一定の所得の再分配を促すために課税をする。相続税などの資産税や所得の累進課税などがこれに当たる。


富裕層からすれば不平等に映るかもしれないが(そもそも平等という定義自体誰を念頭におくかによって変わる)、社会全体としては平等を促す制度ということだ。

例えば、相続性。ある意味、人間を怠けさせないための戒律的な税金と言えるかもしれない。3代続けば財産は0になるという。これは相続財産に3回(代)課税されると財産が0になる(相続財産=相続税総額)ということだ。これも勝ち組を勝ち組のままにさせない、同時に誰にでもチャンスがある、常に自由競争を促し、国の経済を成長させるという目的が税制に反映されているとも言える。同様に、特定同族会社の留保金課税も配当を小さくして(その分が内部留保になる)配当課税を逃れる(租税回避)に対する懲罰的な課税だ。これもある意味、課税の公平性がベースにある。

何が言いたいのかというと、課税の大義名分は何ですか、ということだ。
二重課税だから悪いのではなくて、その理由、目的に納得感を持たせられるか、が重要だと思う。


もちろん、社会のために必要なおカネであることが大前提だが、必要なおカネは二重課税だろうが何だろうが国民から税金として徴収するしかないのである。国民にしてみれば、額に汗して稼いだおカネだ。二重課税でなくても払いたくないものだ。


何故必要なのか、そして、社会にどう活かされるのか、

大勢として納得感が得られるのか


が議論されるべきだと思う。

 「ためられてきたお金が設備投資や配当に回る」。小池氏は6日、自らの経済政策「ユリノミクス」の目玉の一つとして内部留保課税を掲げ、その目的について、こう語った。

内部留保課税で果たして実現するのだろうか・・・

 

ところで・・・

 

内部留保金課税案に対して企業経営者(経団連とか)からの反対意見はクローズアップされるが、株主や投資家からの声があまり聞こえてこない。内部留保って株主のモノなのにね(笑)