溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

日本企業は出口戦略無き研究開発(R&D)なのか!?

www.nikkei.com

 

日本の会社は技術は優秀だが、

それをビジネスにするのは不得手

という日経記事。

記事は次のように指摘する。

『数字を見てみよう。まずは技術そのものを生み出す研究開発(R&D)の力だ。文部科学省がまとめた2015年の国別の企業の研究開発費では日本は00年比で26%増。だが、この間に10倍に増やした中国企業に09年に抜かれ、米中から大きく離れた3位にとどまる。』

f:id:tesmmi:20171121182056p:plain

 

という状況に、会社の対応は

『電機業界をみると、日本の厳しい事情が鮮明だ。NECなど総合電機大手8社の17年3月期の研究開発費の合計は約2兆円と00年に比べ22%減った。売上高の3%減に比べ減り幅が大きい。』

じゃあ控えます・・・

って、この対応もどうかと・・・

 

そして、こういう記事(情報)が出ると、

『データのとり方がおかしい』といった意見(批判)があがる。

R&D投資の成果は即座ではなく、投資後の将来のいつかの時点で現れる。なので、時点の異なる投資対成果(効果)単年度の損益を測るのは適切ではない、ということだ。

また、経済環境が違う他国と単純に比較するのはおかしい、経済発展が目覚ましい国と日本のようなある意味成熟国を比較しても意味が薄いという意味もあろう。

 

なるほど、もっともだ。

データは、一見客観的な情報であるような顔をして、その実、データのどの部分をどう切り取るかによって意図を持った情報にすり替えられるリスクもある。

そういう意味では、僕もこの記事のデータを僕も鵜呑みにするつもりはない。

 

とはいえ、記事の指摘を感覚的に当たっているという肌感覚を持つ人も結構いるのではないだろうか?

中国と比べれば経済環境が違う云々は分かるが、成熟国の欧米諸国と比べても研究開発費に対する収益低いし、また日本自体でも年々数値は悪化している・・・

 『日米独仏韓5カ国で比べてみると、16年の日本は32倍と最低水準00年の47倍からほぼ一貫して落ち続けている。欧米勢も日本と同じく低下傾向だが、下がり方は緩やかだ。』(記事より)

 

また、R&Dは先行投資なんだからちょっと収益が下がったからと言って削減するべきではない、とか、地道な基礎研究が即座に結果につながるものではない、いつか花開くものだ、という意見もあるだろう。

 

それも分かる。

分かるのだが、

将来のいつか何かに役に立つだろうからやる、は少なくとも上場会社では通らない

不特定多数の投資家から預かったおカネだ。彼らの期待が乗ったおカネの投資先は合理的な根拠の無いものであっては困る。

 

ただ、誤解をして欲しくは無いのだが、

即座に結果を出せということではない

そういうことでは無くて、

 その研究開発投資で、

 

①成果は何なのか?

②いつ成果が得られるのか?

 

投資時点でのゴール設定を明確にし、合理的に説明するだけの計画性をもち、そして進捗管理をすべきということだ。もちろん、株式会社として取り組む以上、ゴール、つまり成果はマネタイズできるものとなる。

だから、そんなことやってみなければ分からないだろう、では困るのだ。

記事はこの点の戦略性の疎さを指摘しているのだろう。

 

もちろん、研究開発がすべて成功するわけでないのは重々承知だ。

だからと言って、ゴールの定まらない研究開発投資は、投資ならぬ浪費になりかねない。やっていること自体が目的化するおそれもある。

 

また、一旦決まった研究開発のその後の進捗管理も重要だ。期間が長期のプロジェクトや新規性の高いプロジェクトになれば、当初の計画どおりにはいかないことも大いにあり得る。そういう場合の状況の定期的な報告、計画対実績の差異分析、そして計画の変更に関する社内意思決定、いわゆるPDCAが適切に運用されているのか、ということだ。この点、R&Dは専門性が強いので、その内容を経営者が正確に理解しているかというと、果たしてどうだろうか。経営者とR&D部門(長)の意思疎通がちゃんと採られているのか、と言う点も日本企業はどうだろうか・・・

 

経営者とR&D部門のコミュニケーションと言う点では・・・

 

こういう記事などの意見が上がるとR&D部門から反論をよく耳にする。

(僕の周りに多いからかも知れないが・・・)多くは、

記者はR&Dの実態を知りもせずにデータの表面上の数字だけで指摘している、とか、こういう記事に乗せられて経営者は安易にR&D活動を緩めるべきでない、といったものだ。

 

R&D部門の方々は、記事の矛先が自分たちに向いていると思うのだろうか。

(あなたたちが)無駄なR&D活動をするからこんなことになるのだ、という批判に聞こえるのかも知れない。

(もしかしたら、そういった社内外からの批判がよくあるのかも・・・)

 

しかし、問題はそこではない。

会社のR&D戦略や予算はR&D部門で意思決定している訳ではないはずだ。提案はするにせよ、最終的にR&D戦略や予算を意思決定するのは経営者(取締役会)だ。R&D部門は、その方針にしたがって仕事をするのだから、彼らはその進捗に責任は負っても戦略や予算は経営者の責任だ。したがって、この記事もそうだが、出口戦略ないままにR&D活動を続けているのではないか、

批判されるべきは経営者だ。

繰り返すが、技術的な専門的な部分はR&D部門に任せるにしても、研究開発のゴール設定やそのための戦略、進捗管理は経営者の責任だ。これは、営業、製造、購買などの各部門の役割を調整、統合して会社全体のPDCAを回して成果に繋げていく役割でもある。

ところが、仮にこれらをR&D部門に一任となれば、このような会社全体の機能を統合した出口戦略は描けそうにないし、描けたとしても達成は難しそうだ。R&D部門は会社の1部門で、全部門を調整、統合する責任なんて普通無いし、物理的にもR&Dセンターなど他部門から独立した拠点を構えるケースもあり、むしろ社内コミュニケーション上は不向きだろう。専門性の壁もあるし・・・そして、R&D部門が何を進めているかしっかり理解していない経営者は、安易なR&D予算削減に走る・・・

そういう会社少なくないのかな、そんなことを感じた記事だった。