溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

決算早期化は投資家のためだけなのか!? 【あみやき亭の例】

www.nikkei.com

あみやき亭の決算早期化に関する記事だ。
ビジネススクールのアカウンティングクラスで、決算には何日必要か?

という質問をするが、最も早い会社が1日と言うと(解答)結構驚かれる。もっとも、決算業務に何が必要なのかを理解している人も少ないので、何日かかるかと言われてもピンと来ない人も多いが・・・


とはいえ、外部に公表する決算数値となれば、ザックリこれくらいといった粗いモノだとマズいのは想像に難くないだろう。決算発表に監査法人の証明書(監査意見)は不要とは言っても、公表後の決算数値の修正は宜しくない。監査法人の実質的なOKが得られるレベルの決算数値の確定となると、それなりの決算作業が必要になるのは分かるだろう。

3月決算上場会社の決算発表の集中日が5月中旬(所要日数約45日)であることからも、あみやき亭の決算日の翌日発表(所要日数1日)は相当早いスピードであることは理解できるだろう。記事によれば、決算日の翌日に決算発表する会社は今やあみやき亭だけ、のようだ。

 

「同社の佐藤啓介会長は「やるからには1番にこだわりたい」と意気込む。」


確かに、決算を早期に公表することは投資家に対してもアピールにはなるが、当然それに伴うコストは発生するのではないか。

そこまでして決算発表を急ぐ必要はあるのか?

と思う人もいるかもしれない。

実はそこまで急ぐ理由は外向け(外部公表)だけではない。

内部的なメリットもしっかりあるのだ。

 

「日時決算のデータは会計士のもとに毎日送られる。会計士は不自然な点が見つかればその都度、会社側に確認する。あみやき亭の経理部門と担当会計士は情報を共有し、売り上げが落ち込むなど店舗に減損処理の兆候が見られれば即座に対応する。」

 

一見、監査作業の増加⇒監査報酬増加となりそうだが、どうだろうか。作業工数自体はそれほど変わらずに、作業のタイミングを分散しているにすぎないかも知れない。

「会計士側も決算集中日を避けて業務を分散できる利点がある。」

 

日本の会社は3月決算、12月決算が多いので、どうしても期末決算監査期間(決算日後~約1.5か月程度)に監査作業が集中する。ピークに合わせて人員を採用すると、それ以外の期間は稼働率が落ちる(人が余る)ため、作業を分散化することは実は監査法人にとってもリソースの平準化となる。


また、固定資産の減損のような監査イシューをタイムリーに把握することも、結果として監査業務の品質や効につながる。どういうことかというと、決算数値のほぼ固まった状況の中、例えば期末決算監査で減損処理の必要な店舗が検出された場合、会計ルールでは減損処理すべきであったとしても会社としては社内的にも着地の数字は固まっており修正したくないと考える。そうなると、減損処理をしないですむような理屈(往々にして屁理屈が多い)を作り、その妥当性を監査法人が検討することになる。問題(金額)が大きくなるほどに、監査チームだけでは抱えきれなくなり(監査法人の)本部を巻き込む。そもそも屁理屈(であることが多い)から、本部⇔監査チーム⇔会社とのやり取りが何往復にも登る・・・という具合に、膨大な監査作業工数が発生することなる。また、あってはいけないことだが、屁理屈が通ってしまうこともあるかもしれない・・・
監査イシューを前兆段階で、会社と会計士が把握して互いに検討、協議することによって、より合理的な解決策を見出すことができる可能性が広がる。

 

また、以下の点も見逃せない。

「「カギは単純化と平準化だ」と佐藤会長は強調する。あみやき亭では交通費などの即日精算は当たり前。経費は原則、当日に現金で払い戻しを受ける。経費を勘定システムに入力するのはパート社員で、経理部門の正社員は2人のみだ。」

 

純化することで、オペレーションのミスが減るし、パート社員による対応が可能となる。平準化により、転属、コンバートによる一時的な効率ダウンも回避できる。つまり、単純化、平準化の制度構築(マニュアル整備など)のコストがかかるが、

オペレーションコストの低減が期待できる。また、本業に集中しており、本業以外の営業外活動など非定型業務が少ないことも要因だろう。

 

「あみやき亭の17年3月期の売上高に占める販管費の割合は53%と同業の安楽亭などに比べ10ポイントほど低い監査法人と協業した高速決算が業務の効率化を促している。」

 

また、業務が複雑、ユニークで属人化すると、その人以外が業務内容を理解しておらず、第三者が不正に気付きにくくなる。

純化、標準化は不正リスクを低減する効果も期待できる。

 

記事の表題は監査法人の人手不足が迫る効率化だが、企業側からの視点として、会計監査を“敵”や“厄介な存在”としてではなく、外部リソースとして上手く活用して

ディスクロージャーの向上やオペレーショコストの削減に繋げた事例ではないかと思う。