溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

イニエスタの人件費は販管費なのか!? 

www.nikkei.com

 

 サッカーは詳しくない(あまり観ない)のだが、さすがにイニエスタは知っている(といっても、知っているだけ)。


イニエスタ選手の獲得でJ1神戸では入場料やグッズ販売を増やす考え

 

 

 

へ~、Jリーグに来るんだ~

 

程度の認識でいたら、とんでもないビッグニュースだったと知る・・

(と指摘され気づく)

 

サッカーファンにとっては、

イニエスタが日本に、Jリーグにやって来る、

あるいはその年俸額に驚いたかも知れないが、

 

僕は日経の記事に驚いた…

 

この書き方、わざとなのかな・・・

楽天は傘下のサッカーJ1神戸がスペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手を獲得したことで、2018年12月期に年俸の約半分の十数億円を販管費として計上する。』 

 

イニエスタ⇒年俸⇒販管費

⇒広告宣伝費

 

と連想する人も多いのではないだろうか。

 

だとすると、敢えてミスリードするような記事に思える。 

 

【サッカー選手の年俸の会計処理】

 

サッカー選手の年俸の通常の会計処理は☟

を参考にしてほしいが、

 

選手の年俸は通常は売上原価

 

に計上される。

 

appapi.globis.jp

 

一般公開されているJリーグ加盟クラブの決算情報は添付のように詳細までは把握しにくい。特に売上原価と販売費及び一般管理費の区分が掴みにくい。

 

Jリーグ加盟クラブの決算書一覧は☟

https://www.jleague.jp/docs/aboutj/club-h28kaiji_02.pdf

 

コンサドーレ札幌(北海道フットボールクラブ)は、一時期継続開示会社に該当したため有価証券報告書を提出していたので、決算情報が詳細に把握できる。

 

www.consadole-sapporo.jp

 

コンサドーレ札幌のH25年度の有価証券報告書

http://www.consadole-sapporo.jp/wp-content/uploads/2015/05/yukashoken-h2512.pdf

 

36,38pを見ると選手の人件費が売上原価へ計上されているのがわかるだろう。

 

【費用の区分方法】

 

費用の区分方法に形態別分類機能別分類がある。

詳細説明は別の機会にしたいと思うが、簡単にいうと、費用の

名目で区分する方法が形態別分類だ。

給料として支払ったら人件費という具合だ。これに対して、

機能(目的)で区分する方法が機能別分類だ。

広告宣伝活動に従事する従業員に対する給料は会社にとっては広告宣伝活動費用の一環というこ意味で広告宣伝費に含める。

 

機能別分類は管理会計では使用されるが、

財務会計、つまり決算書作成では形態別分類を適用する。

ただし、研究開発費機能別分類の考え方だ。

会社の将来性を評価する上で、研究開発活動が重視されるため、研究開発の投じた費用を広範囲に把握しようという目的だと思う。

とは言え、研究開発費のように研究開発部門に属する人員や活動がほぼほぼ研究開発活動に従事しているように、部門や活動内容が明確であれば費用の把握はしやすいが、年俸の内、一部が製造活動、一部が研究開発活動となると、

人件費を活動ごとに区分する必要が生じる。

区分の基準として、それぞれの活動に従事した時間で区分することが考えられる(面倒だが)。

 

イニエスタの場合はどうか?】

 

イニエスタに当てはめると、そもそもサッカー選手としてプレーが中心(契約)だろうし、選手としての時間と(ヴィッセルの)広告宣伝活動としての時間はさほどだろう(よく知らないが)。

では、効果による配分はどうか、となると、

将来の効果をどう合理的に見込むか

が問題になる。

 

仮に合理的な基準を設定して売上原価と販管費に区分したとしても、結局は売上原価か販売費かの区分に過ぎず、営業利益は不変なので、苦労して区分するインセンティブも無いのではないだろうか。Jリーグの決算情報では売上原価と販売費を区分してる会社も多くないことだし…

 

また、形態別分類は費用を発生(あるいは支出)タイミングで把握する。

例えば、給料として従業員に支払った際に『人件費』を把握するので、費用の管理(予算と実績の比較も)がしやすい。

 

では、日経記事の販管費とは何を意味するのか?

 

正解はなんのことはない、営業費用を意味しているのではないかと思う。

 

実は、日経記事の後半部分にも以下の記載がある。

 『年俸は下期からチームを運営する子会社

楽天ヴィッセル神戸」の人件費に計上する。

連結では営業費用となる。』

 

実は、楽天会計基準IFRS国際財務報告基準だ。

 

楽天の2017年度決算短信は☟

https://corp.rakuten.co.jp/investors/assets/doc/documents/17Q4tanshin_J.pdf

 

ちなみに、楽天は2013年度からIFRSへ移行したが、2012年度までは日本基準だったので、

 

売上高-売上原価(=売上総利益)-販管費(=営業利益)

 

のP/Lフォーマットだった。

 

IFRSのP/Lフォーマットでは、売上総利益はマストではない

つまり、売上原価と販管費を区分することなく

 

売上原価+販管費=営業費用

 

とすることも可能だ。

もちろん、会社の製造業など事業によって、会社の業績をより分かりやすく伝えるために売上原価と販管費を区分することもできるが、楽天はその必要がないと考えたのだろう。

そして、当然ながら、

 

営業費用≠販管費だ。

 

ということで、おそらくは記事の書き間違いではないかというオチ(笑)

 

だが、

 

もしかしたら・・・

 

今期のヴィッセル、そして楽天の決算が楽しみだ。

 

 

ところで、

 

イニエスタ選手の獲得には移籍金は発生していない。』

 

ちなみに、移籍金が発生する場合は、無形固定資産に計上して一定期間(通常は契約期間)で償却されるらしい。

第185回(A) 「サッカー選手の移籍金と会計処理」【ケース・スタディー】|メールマガジン|株式会社ディーバ