溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動しています。また、グロービス経営大学院大学でアカウンティングとファイナンスの講師活動も行っています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人

監査法人さん、出番ですよ!!

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181227&ng=DGKKZO39422430W8A221C1M10800

 

しつこいようだが、またしてもゴーン氏の続報。

だって、未だにこんな記事が掲載されるし・・・

 

カルロス・ゴーン元会長が有価証券報告書に記載しなかったとして問題になったのは、既に受け取った報酬ではなく、受け取りを先送りしたとされる報酬だ。先送り分の支払いが確定していたか否かを巡り、東京地検特捜部の判断とゴーン元会長側の主張は真っ向から対立している。』〜日経記事より〜

 

信じられないことに、平成30年12月27日日経朝刊の記事。

 

まだこんなことやってる。

わざと焦らしているのか?

この状態を楽しみたいとしか思えない・・・

 

当ブログでも再三(2回だけど)ゴーン氏の役員報酬過小記載については書いた。

ゴーン氏逮捕から1か月半経過してまだこんなことが争点になっているとは驚きしかない。

個人的には、逮捕時点に既に検察は、先送りされた報酬が確定あるいは引当金、つまり、各年度のゴーン氏に対する報酬としてあるいは費用計上されていた、あるいはされるべきである確証を得ていたとばかり思っていた。

 

内閣府令は報酬の開示について、実際に支払われた額だけでなく、未払いでも「見込みの額が明らかとなった」時点で開示義務が生じると規定。特捜部は「先送り分も支払いは確定し、有価証券報告書に記載する義務があった」と判断している。』

 

この点も過去ブログに書いたが、完全一致を条件としてはいないものの、P/Lに費用計上された役員報酬総額(基本+変動+賞与、退職慰労引当金等)と役員報酬開示対象額は基本的に一致する。

 

『ゴーン元会長らは各期の▽本来の「総報酬」▽その期に受け取った「支払い済み報酬」▽受領を先送りした「延期報酬」――の額を記した「報酬合意事項」と題する文書を作成。ゴーン元会長の退任後にコンサルタント料などの名目で支払う報酬を記載した「雇用合意書」も作成されていた。特捜部は、こうした文書や側近らの証言などを基に「確定」を立証する方針とみられる。
一方、ゴーン元会長は「退任後の支払いはその時点の最高経営責任者(CEO)が決める。経済情勢や業績が変動する恐れがあり、支払いは確定していなかった」とし、先送り分の記載義務はなかったとしている。』〜日経記事より〜


であれば、争点となっている確定ないしは引当金の対象とすべきかどうかは、会計的な判断を重視すべきだろう。

(債務債務は法的な要件を重視すべきだが、依然争点のまま・・・)

 

この点、新聞はじめメディアは、弁護士などの有識者の意見が取り上げられるが、果たして会計基準にしたがった意見なのか疑問を感じる。

個人の見解は結構なのだが、費用計上の是非会計基準にしたがって判断されるべきだ。

 

そして、それを検討、判断する立場にあるのは日産を担当する監査法人だ。

会計監査は、あくまでも財務諸表の全体としての適性性に対する意見表明をすることであり、個々の取引の是非について意見表明をするものではない

立て付けはその通りだが、ことこの状況において沈黙を貫くのは果たしてどうなのか。

会計監査が、経済社会の発展や証券市場の円滑な運営に資するという大義からは、ここまで社会的な注目を浴びている以上、その判断の合理性について意見を述べるべきではないだろうか。

これまで、日産からどういう情報、資料を入手し、それに基づけばどう判断するのか。

実際、日産は対象となる金額を過去の決算では費用処理していなかったので、結果として監査法人も費用計上は不要と判断したことになる。

しかし、日産から提示された情報や資料に不足や事実と異なる点があった場合、それらが是正されたとすれば判断は変わるのかどうか、だ。

 

公認会計士はあまり意見を主張をしない。矢面に立つのを避ける傾向がある。主張をするのであれば、どこからも誰からも突かれない完ぺきな状況を望む習性がある。一部でも例外がある場合、Yesとは答えたがらない。

余談だが、だから、話が長くなる。簡潔に答えることで例外を端折ることを嫌がる(あるいは知らないと思われることを嫌う)。

僕自身も、ビジネススクールで教鞭をとり始めた頃は、いかに簡潔に説明しつつ例外を端折らないかに苦心した覚えがある。

 

要するに批判を避けたいのだ。

業務の性質上なのか、元来の性格なのか、

やたらダウンサイドのリスクに敏感な人が多いからなあ・・・

 

仮に公認会計士から見たら妥当な判断であっても、言い方は悪いが、会計のを”カ”の字も知らない有識者が、自身の経験則や主観だけでそれはおかしい!と言われ、それによって世間的な批判に晒されるリスクは理解できるが、何といっても会計に関する判断だ。専門家でない意見が空中戦を繰り広げる中、やはり、会計の専門家としての主張ををして欲しい。

でないと、この議論、収まらなように思う。

 

監査報告書も短文式(定型フォーマット)ではなく、KAM(Key Audit Matters)の記載など監査報告書の”透明性”を求めらるようになっている。

会計監査も、これまでの監査法人から投資家への一方通行から、利用者との対話を重視する方向へ進んでいると思う。

なお、KAMについては近く当ブログ取り上げたいと思う。

 

ところで、私自身も先送りされた報酬は費用処理(役員報酬開示)すべきだったと思うか?を訊かれることがある。その場合、

 

『何とも言えない』

 

と答えるのだが、そうすると、『やはり専門家でも見解が分かれるんですね』

と言われる。もちろん、見解(判断)が分かれることもあるだろうが、最大の理由は先送りされたというおカネの名目だ。

ゴーン氏に支払われるとされる90億円はゴーン氏の何に対する支払なのかによって判断は変わるということだ。

報酬であれば、報いと言うぐらいだから、何らかの役務の提供に対する代償だろう。

であれば、

 

1.対象となる役務提供は完了したのか

2.役務を受ける側が支払いを約束ないしは約束が合理的に見込めるか

3.報酬とされる金額が確定ないしは合理的に見積可能

 

詳細は☟を参照。

tesmmi.hatenablog.com

 

報酬の種類、名目にもよるが、これらの条件を満たすかどうかエビデンスと共に検証しての判断になる。

ファクトが整えば、それほど判断はブレないと思うがどうだろうか。

 

と言うより、そのファクトの認識が日産、検察とゴーン氏の間で相違しているので、何とも言えない状況が続ているのだが・・・

 

モヤモヤを抱えたままの年越しとなりそうだ。