溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動しています。また、グロービス経営大学院大学でアカウンティングとファイナンスの講師活動も行っています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人

上場株式の時価変動の決算数値への影響 【バフェット氏のボヤキ】

https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20190226&c=DM1&d=0&nbm=DGKKZO41713430V20C19A2EE9000&ng=DGKKZO41713430V20C19A2EE9001&ue=DEE9000

 

保有株評価損で赤字 10~12月、米株安が直撃』 

(日経朝刊より 2/26/2019)

 

ついに来た!!

と言う感じの記事。

以前から書こうかなと思っていたところにジャストミートで掲載されたので

乗っからせてもらう。

 

新しい時価評価は純利益に気まぐれで、

荒っぽい変動をもたらす」

(日経記事より抜粋)

 

何とも歌詞っぽい表現ではないか、やるな日経(笑)


バークシャーが同時に発表した18年10~12月期決算は最終損益が253億ドルの赤字だった。前年同期の325億ドルの黒字から一転して赤字に転落した。
米国では17年12月以降に始まる会計年度から、企業が保有する上場株の評価損益を

純利益に反させる会計基準が適用された。米会計基準トヨタ自動車は持ち合い株の評価損などで、19年3月期通期の純利益予想を引き下げた。』

(日経記事より抜粋)

 

バークシャーの赤字要因は、保有する上場株式の評価損益に係る会計ルールによるとのこと。

記事にもあるが、バークシャーの記事に先立って日本企業でも米国会計基準を採用するトヨタやワコールが同様の決算発表を行っていた。

 

www.nikkei.com

ワコールホールディングスは25日、2018年10~12月期に有価証券の評価損で135億円を計上すると発表した。この期間の世界的な株安を受けて、取引関係がある政策保有株を中心に評価損が発生した。』

(日経記事より抜粋)

 

トヨタでも同様の記事があったが、記事を読んだ当初、

この記事の意味が一般に理解されるのだろうか?

と疑問だった。

 

その疑問が通じたのだろうか、その後こんな記事が掲載された(笑)

企業が保有する上場株式の評価ルールが日本とアメリカでは異なる。

日米間の会計基準差異GAAP差異)だ。

 

日本基準を採用する会社では、保有する上場株式の時価変動が業績へ影響を

及ぼすことはないが、ワコール、トヨタと言った米国会計基準を採用する会社

では株価変動が業績へ影響(P/Lインパクト)をもたらすことになる。

 


ここで簡単に、日米間の上場株式の時価評価ルールの相違をまとめる。

 

保有する上場株式の時価変動の会計処理@決算時

日本:時価評価/評価差額は純資産(B/S)へ計上

米国:時価評価/評価差額は純損益(P/L)へ計上

 

ちなみに、IFRSでは以下の通り。

IFRS時価評価/評価差額は純損益(P/L)、あるいはその他包括利益(OCI)のいずれかへ計上(選択可)

OCI:その他包括利益(other comprehensive income)

 

日本基準では、例えば、保有上場株式の時価が100から80へ下落した場合、差額の20は純資産を20減少させる処理になる(厳密には税効果部分は繰延税金資産として計上)。したがって、日本基準を採用する多くの日本企業は、保有上場株式の時価変動の影響はP/Lへは表れない

 

企業が保有する上場株式の会計ルールの違いの背景には、両国の企業を取り巻く外部環境の違いや投資家の企業に対する期待の違い等様々な違いがある。

例えば、米国でも一般の事業会社においては、この会計ルールが企業損益へ多な影響を与えることは少ないと言われる。事業会社が他の上場会社の株式を保有する割合が少ないためだ。株主、投資家の企業に対する期待は、自分たちが投じたおカネを事業へ投資してリターンを得ることだ(そして、そのリターンを投資家へ配当、自社株等で還元)。したがって、投資から集めたおカネで他社の株式を取得することはある意味裏切り行為となる。こうした資本の論理がある意味会計ルールへ反映された結果ともとれる。

他社の株式を買ったら、

時価評価して業績へ反映させるぞ!!

ということだ。

ところが、バークシャーのような(金融)資産運用会社にとっては、保有する上場株式の時価変動が会社の業績へ直接的なインパクトを与える。

もっとも、株式の時価は常に変動するため、下落することもあれば上昇することもある。上がって下がって、結局年間通してみればプラスマイナス0ということもあろう。

しかしながら、上場会社の決算は四半期ごとに公開されるため、株価変動のような一時的な保有資産の価値変動が四半期ごとに業績へ反映され、それが当該企業の株価へ影響を与えることにもなる。

 

以前、当ブログでトランプ大統領が四半期開示制度を廃止すべきといったtweet発言があったと紹介した。

tesmmi.hatenablog.com

 

その発言の元になったのが、バフェット氏の以下のコメントだ。

 

『企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ』

 

四半期情報のアメリカの企業へ投資家全般に対する弊害への警鐘というよりも、自社の業績への悪影響は勘弁してくれ、という叫びにもとれる(笑)

 

へ~、アメリカは大変だね、と対岸の火事を決め込んでもいられない。

 

会計ルールは常に改正の可能性がある。そして、改正の方向のキーワードは国際的な調和だ。国際間のルールの差異を解消する方向でルール改正が進行していることは歴然とした事実だ。先述のとおり、米国に限らずIFRS保有株式の時価評価差額をP/Lへ影響させるとしている(IFRSは選択の余地はあるものの)。

ということは、近い将来に日本も米国と同様の会計ルールへ改正されることも十分に考えられる。

日本企業は解消が進んでいるとは言うものの、未だ政策保有株式、いわるる企業間持合い株式が多いと言われる。

これは、バークシャーのような金融機関において顕著だが、先のトヨタ、ワコールのような一般の事業会社も同様だ。

このような状況で保有上場株式の時価評価損益のP/L計上へ会計ルールが変更されたら、企業業績に対するかなりのインパクトが予想されるのではないだろうか?

(一般事業会社もさることながら、金融機関の業績悪化⇒融資先の企業への波及的影響が恐い・・・)

 

もちろん、ルール改正に当たっては事前に環境整備もするだろうから、今以上に急ピッチで持合い株式の解消が促進されるとは思うけど。