溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動しています。また、グロービス経営大学院大学でアカウンティングとファイナンスの講師活動も行っています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人

99%減資と100%減資の違い

先日、別のコラムで減資について書いた。

https://globis.jp/article/6974

 

それ以前に、資本金、増資について書いたので、これはもう減資について

書かないと収まりがつかなくなったということもある・・・

 

ところで、

減資、特に減資と株式の関係について、

間違った理解をしている人が結構多いように思う。

 

世間一般に理解しにくい部分のようで、インターネット上もかなり多くの識者が解説を投稿されているが、自分の周りでも未だに同様の質問を受ける。

ということで、今さら感も無くは無いが、

当事務所ブログでも書いておくことにする。

 

典型的な勘違いは、次のような例だ。

 

債務超過に陥っている会社が経営再建に際して累積赤字(繰越欠損金)を減資により補填する場合、資本金を100%減資するのではなく99%減資に留めることにより既存株主の権利を少しだけでも残しておく、というものだ。

日本航空JAL)の経営再建でもこのような意見があった。

 

こういう意見を言う人は、おそらく、株主から99%の株式を取り上げ、1%だけ残すイメージをしていると思う。

 

しかし、減資、特に無償減資、は、帳簿上の資本金の金額を減少させる手続きだ。

そして、資本金の金額を減少させても株式数は不変だ

つまり、減資によって株主の会社に対する権利には一切影響がない。

99%減資は、株主の権利は少しだけどころか、100%残すことになる。

 

(注)非公開会社など特定の株主から株式を買い取るような有償減資で、買い取った株式を消却するような場合は、株主の持ち株比率は変動する。

 

株主の権利には、公益権参政権)と自益権配当請求権など)がある。

株主は持ち株数に応じて会社に対する支配力を有するため、減資したからといって株主の会社に対する支配力、つまり公益権に影響が出ることはない。

また、無償減資では、資本金の金額を繰越欠損金に振り替るが、純資産の金額は変わらない。純資産≒自己資本とすれば、株主の持ち分は資本金だけでなく純資産が対象となるため、資本金が減少しても株主の持ち分は変わらないのである

 

この関係は、

99%だろうが1%だろうが同じだ

 

しかし、100%減資だけは事情が異なる。

99%減資と100%減資、1%の違いだがその意味は全く異なる。

 

100%減資は、簡単に言うと、既存株主の権利をはく奪することだ。そもそも100%減資の目的が会社から既存株主を退場させることなので、その意味では100%減資だけでは不十分だ。減資、資本金を減らすだけでは株主の地位は不変なので、100%減資と同時に株式の種類を全部取得条項付種類株式へ変更し、会社がこれを全て取得後株式消却という会社法上の手続きが必要になる。

手続きの詳細はわきに置くとして、要するに、

100%減資は

既存株主が保有する株式数を0

にする手続きだ。

 

どんなケースで100%減資が使われるかと言うと、例えば、債務超過の会社の経営再建だ。経営再建には通常、新しいスポンサーが必要であり、新しいスポンサーを募るためには既存株主が邪魔になるからだ。

分かりやすいのは議決権の問題だ。経営不振の会社におカネを出す以上、新スポンサーは会社の経営方針や資金の使途に対して自身の意見を反映させたいと思うだろう。その際に、自分以外にモノ言う株主がいると自らの経営再建計画を遂行しにくい。

そもそも、このような会社の状況を作ったのは、経営者と既存株主なのだから、新スポンサーを迎えて経営再建をするにあたっては、経営者はもちろん、既存株主も責任をとって会社から退場してもらおうということだ。

 

このような債務超過会社の経営再建のケースでは、100%減資後、新スポンサーによる増資となることが多い。

 

また、株主価値の点でもネックになる。例えば、99%減資をして、1株当たりの自己資本が1,000円(1,000株)となった会社に新スポンサーが1株当たり100,000円で10,000株出資したとする。すると、会社の純資産は1,001百万円(11,000株)となり、1株当たりの価値は91,000円となる。既存株主から見れば、新スポンサーのおかげで自身の保有する株式の価値が高まり、逆に新スポンサーから見れば既存株主のおかげで出資後即株式価値が低下することになる・・・

第3者割当増資における株式の希薄化と同様だ。

この点からも既存株主が会社に残存すると新スポンサーが募りにくいということにもなる。 

 

以上、99%減資と100%減資の違いについて書いてみた。

1%の違いだが、両者はその意味と目的が全く異なる

 

減資は、資本金の金額を減少する手続きであり、株式数を減少する手続きではない。

 

一般的な減資の目的は、以下。

・決算書の見栄えを良くする(繰越欠損期の解消)

・配当可能性を高める(繰越欠損金の解消)

・税務メリットの享受

 

一方、経営再建などで経営支配権の入れ替えが必要となるケースでは、減資だけでは不十分であり、別途100%減資等の手続きにより株主を入れ替える必要がある。

 

なお、100%減資⇒増資には、株主総会の特別決議、債権者保護手続き、さらには登録免許税など時間もコストが必要になる。そこで、現在は、100%減資⇒増資というプロセスを経ず、会社が既存株主から株式を取得後、その(自己)株式を新スポンサーへ売却というスキームをとることが一般的だ。これによって時間とコストがセーブすることができる。