超特盛は『お得』なのか? 【吉野家の例】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47146060Z00C19A7TJ2000/
(写真は7/10付日経朝刊から拝借)
ちょっとした小ネタを(笑)
『吉野家ホールディングスが9日発表した2019年3~5月期の連結決算は、最終損益が10億円の黒字(前年同期は3億8800万円の赤字)だった。牛丼店「吉野家」で牛丼の新サイズ「超特盛」がヒット。既存店売上高が好調で、人件費や材料費などの高騰を吸収した。』
超特盛のヒットにより吉野家が前年同期の赤字から一転、黒字10億とのこと。
競争の熾烈を極める外食産業にあってもまだまだ損益改善の余地はあるものだなあ、と思いつつも、職業柄ついつい、損益改善要因が気になる(笑)
まず、気になったのは、
販売増加が単価要因なのか、客数要因なのか、
という点。
売上=客単価*客数
だ。
『新規メニューでは5月に発売した「ライザップ牛サラダ」も堅調だった。うどん店「はなまるうどん」との共通割引クーポンなどの販売促進策も集客に寄与した。3~5月期の既存店売上高は6.1%増加した。客数は0.3%増で、客単価は5.8%増と大きく伸びた。』
客単価の上昇が主要因のようだ。
そして、
客単価=商品単価*注文数
なので、更に、販売増の要因が商品単価の上昇なのか、
それとも注文数の増加にあったのかについては、
『超特盛は税込み価格で並盛より400円高い780円だが、発売後1カ月で100万食を超え、その後も好調を維持しているという。』
商品単価の上昇、つまり、超特盛の販売増加が奏功したということだろう。
ちなみに、すかいらーくなどのファミレスでは、客単価を上げるために、+1品を稼ぐということで客当たり注文数を増やすべくデザート開発に注力していると聞く。
一口に販売増加といっても、商品単価、注文数、客数、それぞれ業態によって取り組みやすさに違いがあることが分かる。
次に、利益面を見てみる。
『営業損益は10億円の黒字(前年同期は1億7800万円の赤字)だった。米の価格や人件費が上昇したが、増収効果で補った。売上高に占める原価の割合は0.9ポイント下がり、人件費や広告費を含む販管費の割合も1.4ポイント下がった。』
最終利益では、記事のとおりだが、吉野家HD公表の2020年2月期の1Qの四半期報告書によれば、本業の収益力の営業利益までの推移は以下の通り。
【売上総利益増加要因分析】
(単位:百万円)
四半期ベースでは、対前年同期比で売上総利益率が約1%改善している。1%というとさほど大きくないと思うかもしれないが、利益率1%の改善効果を金額で表すと約5億円だ。約11億円の営業利益の増加の内、ざっと半分が売上総利益率の改善による。要因の筆頭に挙げられるのが、超特盛ということだろう。(売上総利益の増収効果にも、超特盛などの高単価商品の販売増加による影響額も含まれる)
なお、このデータは連結決算数値なので、このうち吉野家は約半分のボリュームを占める(他は、はなまる、アークミール、京樽など)。『吉野家』に限定した分析であれば、セグメント情報を確認する必要がある。
要するに、
当期1Qの営業利益の改善は、材料等のコストアップはあったものの超特盛を中心とした商品単価の増加による売上総利益の増加(約24億円)が、販管費の増加(約12億円)を吸収し余りあった
と言うことだろう。
超特盛のような高単価商品が売上総利益に好影響を与えるのは感覚的にも理解できると思うが、
こんな記事を発見した(笑)
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5181670
牛肉に関しては大盛の2倍(推計220g)という触れ込みなので、そうなっていないのは少し残念ではあるが、それはともかく、
仮に牛肉の量が並盛の2倍(注)としても、ご飯、玉ねぎ、タレ、全ての材料が並盛の2倍ということではないだろう。
(注)大盛の2倍であるが、ここでは販売価格がザっと2倍である並盛との比較のため
要は、並盛と比較すると、
商品単価増加割合(2倍超)>原価増加割合(2倍未満)
当然ながら、利益率は改善することになる。
ということは・・・
超特盛は、
吉野家にとって『超得』盛!!
会社の利益が改善するということは、利用者側から見ると割高なものを買わされているという見方もできる。
もっとも、超特盛を食べることでプライスレスな満足感が得られるのであれば利用者にとってもお得ということではある。
ちなみに、飲み放題メニューでは原価率の高そうなものを中心にオーダーしてしまうのも職業病(笑)