社外取締役と独立役員の違いって何? 【ASKULの例 その1】
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47685930T20C19A7TJ1000/」
アスクルとヤフーが大変な事態になっているようだ。
アスクルの大株主であるヤフーが第2位の株主であるプラスと組んで、岩田代表取締役をはじめ3名の社外取締役の再任決議に否決を投じる見込みだ。理由は、アスクル、中でもLOHACO事業の業績が芳しくないとのこと・・・
もちろん、岩田代表取締役をはじめとするアスクル側はこれに猛反発。
実はヤフーが、LOHACO事業の買収を画策しているとの思惑も走り、事態は混迷を深めている。
中でも特に異例だったのが、7/23に開催されたアスクルの独立役員会の記者会見だろう。独立役員会がこうした記者会見を開くのは聞いたことが無い。しかも、その内容は、基本的にアスクル支持、というかヤフー批判・・・
アスクル独立役員会記者会見資料☟
https://pdf.irpocket.com/C2678/GDpy/ln8K/nNMa.pdf
アスクル独立役員会記者会見質疑応答☟
https://pdf.irpocket.com/C0032/GDpy/C5Mj/YUjs.pdf
当事者の方々には申し訳ないが、こうした事例は僕のような人間には格好のネタでもあり、情報を収集するといくつか興味深い点が見られた。
CGコード:独立役員
をそれぞれ求めている。
会社法上もCGコード上も対象となる会社に大きな違いは無い。
しかし、CGコード上要求されているのは、社外取締役ではなく、
独立役員ということだ。
【社外性と独立性】
そこで、それぞれの不適格要件を確認してみる。
①当該会社の代表取締役、業務執行取締役、執行役及び支配人その他使用人(以下合わせて「業務執行者等」という。)
②過去10年間において当該会社の業務執行者等であったことがある者
③過去10年間において当該会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者の場合は、その取締役・会計参与・監査役への就任の前10年間において業務執行者等であった者
④子会社の業務執行者等
⑤過去10年間において子会社の業務執行者等であった者
⑥過去10年間において子会社の取締役・会計参与・監査役であったことがある者の場合は、その取締役・会計参与・監査役への就任の前10年間において業務執行者等であった者
⑦親会社の取締役、執行役及び支配人その他使用人
⑧兄弟会社の業務執行者等
⑨当該会社の取締役、執行役、支配人その他使用人の配偶者及びその二親等以内の親族
平成26年の会社法改正前は、①~⑥のみが社外取締役となれなかったが、改正により⑦~⑨が加わり、要件が厳格化された。
CGコード:独立役員
① 当該会社の親会社又は兄弟会社の業務執行者
② 当該会社を主要な取引先とする者若しくはその業務執行者又は当該会社の主要な取引
先若しくはその業務執行者
③ 当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会
計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、
当該団体に所属する者をいう。)
④ 最近において①から③までに該当していた者
⑤ 次の(a)から(c)までのいずれかに掲げる者(重要でない者を除く。)の近親者
(a) ①から④までに掲げる者
(b)当該会社又はその子会社の業務執行者(社外監査役を独立役員として指定する場
合にあっては、業務執行者でない取締役又は会計参与(当該会計参与が法人である場
合は、その職務を行うべき社員を含む)を含む。)
(c) 最近において前(b)に該当していた者
両者の要件は全く同じではない。
期間しばりは会社法の方が厳しいともいえるが、不適格対象者という点では、取引先等までが不適格となるコーポレートガバナンスの方が厳しい。
これは、一般株主の利益保護の観点から、社外性だけではなく、むしろ経営者からの独立性をより重視した結果だろう。
(会社法も社外取締役としつつもその選定においては独立性を重視することにはなっている、念のため補足)
なるほど、要件が異なるということは、それぞれの対象となる人物も異なるという訳か・・・
いや、ちょっと待て
【どういう人物を選定?】
では、企業はこの要件の齟齬にどう対応しているかというと、おそらく、両方の要件に該当しない、つまり会社法、CGコードの双方の要求水準を満たす人物を選定するだろう。
元々こうした制度が無くても社外取締役を中心にボードを編成するという会社であればともかく、従来多くの上場企業は社内取締役がボードの中心だっただろう。
対象者の確保という目的からすれば、会社法とコーポレートガバナンスの双方からの要求に対して、それぞれ別個に対応するのはあまりに不効率であり、最少人数で両方の要件を満たすように考えるのが普通と思われる。
そこで、比較的社外取締役の人数が多いと思われる指名委員会等設置会社を中心に10社、最近決算期の株主招集通知をチェックしてみた。
チェックした会社
・ソニー
・トヨタ
・日産
・イオン
・Jフロントリテイリング
・東芝
・楽天
思った通り、社外取締役全員が独立役員に該当していた。
独立役員に該当しない人物をわざわざ社外取締役として選定する理由はない、
ということだろう。
さて、最初の疑問。
今泉公二氏:プラス代表取締役兼務
小澤隆生氏:ヤフー取締役専務執行役員兼務
なるほど、
取引先と大株主
か・・・
プラスはアスクルにとって重要な取引先であると同時に、ヤフーに次ぐ第2位(約11%)の大株主でもある、というかアスクルの生みの親だ。
ヤフーは、約45%の筆頭株主とはいえ、親会社ではない(実はこの解釈が微妙なのでそそれは次回に書く)。
つまり、当該2名は、会社法の社外取締役要件は満たすが、CGコードの要求水準は満たさない、というレアなケースと言えるだろう。
もっとも、両者の要件が異なるため、こうしたケースも無くは無いだろうが、先述のように、CGコードを満たすためであれば、独立役員にカウントされない
社外取締役を選定する手は無いと考えるのが普通だろう。
ということは、アスクルには、というか、ヤフーとプラスにはCGコードを満たすという以外の目的があったということになる、のかな・・・