溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動しています。また、グロービス経営大学院大学でアカウンティングとファイナンスの講師活動も行っています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人

エフエム東京の粉飾決算で使われた「連結外し」の本当の目的とは!?

 

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エフエム東京が8/21、2017年3月期~2019年3月期連結決算に関し、デジタル放送事業で生じた赤字を隠蔽する目的で、損失を抱えた子会社を連結決算から外す粉飾決算をしていたことが発覚、公表に至った。

 

記事はコチラ☟

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48816940R20C19A8TJ1000/?n_cid=SPTMG002

 

ざっと、3期間で営業利益が約11億円水増しされていたとのことだ。

エフエム東京の直近(2019年3月期)の連結業績は

 

売上高  :18,530百万円(185億円)

営業利益 :  1,475百万円(14.7億円)

当期純利益:     549百万円(5.4億円)

総資産  :39,628百万円(396億円)

純資産  :30,308百万円(303億円)

 

なので、それなりのインパクトと言える。

 

僕は車での移動時間が長いので、道中はほぼFM東京系列のラジオ番組とともにいるといっての過言ではない。バラエティーに富んだ番組とパーソナリティに長時間のドライブの疲れも緩和される気がする。会社と番組は別と言えばそれまでだが、それだけに個人的には残念なニュースだった。

 

報じられたように、今回発覚した粉飾決算の手口は 

「連結外し」

だった。

意外と言えば意外。

 

というのも、連結外しは連結決算における典型的な粉飾の手口で、過去にも

ライブドアカネボウ粉飾決算でも使用された。

そして、その都度ルール改正が施され、また、監査法人のチェックも厳しくなっており、現在は連結外しはかなり難しくなっているからだ。

 

「連結外し」についてはコチラをチェック☟

https://globis.jp/article/7189

  

連結外しは、本来、連結決算に含めるべき子会社を意図的に連結対象から外す手法だ。連結外しの目的は、損失の付け替え、損失を子会社へ押し付けて

親会社の業績を良く見せることだ。

エフエム東京のケースもこれに該当する。

 

気になったので、第三者委員会のレポートを確認してみた。

https://www.tfm.co.jp/company/pdf/news_aff8c32a0a9f794bb1d7039cfefdc99e5d5cd64086651.pdf

エフエム東京 調査報告書by第三者委員会 8/8/2019)

 

すると、思わぬ発見があった。

 

【連結決算義務は無かった!?】

エフエム東京非上場会社だ。

連結決算書の作成が義務付けられるのは、有価証券報告書を提出する会社、つまり、主に上場会社が対象となる。エフエム東京は非上場会社で有価証券報告書も提出していないので、連結決算書を作成は義務付けられていない。しかし、会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)は任意で連結決算書を作成することが出来る。

 

詳細はコチラ☟

https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/companies-act/2016-06-03-01.html

 

つまり、エフエム東京任意で連結決算を行っていると思われる。

おそらく、株主などからの要請からと思われる。

 

任意でやっているのに粉飾かよ!

と思いたくもなるが、そこは利害関係者間の軋轢というものだろうか・・・

 

【完全な連結外しでは無かった!?】

エフエム東京の連結外しの対象となるデジタル放送事業子会社

「TOKYO SMARTCAST(TS)」は、実は、2017年3月期から

持分法適用関連会社としてエフエム東京の連結決算に組み込まれていた。

連結外しの目的からも、完全にエフエム東京の連結決算から除外されていた思っていたのでこれは意外だった。

 

TS社は2105年に設立された。当初エフエム東京及びその子会社が保有する株式の議決権割合は96%だったが、重要性が乏しい、つまり規模が小さすぎて連結に含めてエフエム東京グループの業績を把握する上では影響なし、ということで連結から外された(これは問題なし)。しかし、企業規模(というか損失)の拡大とともに重要性が増したため、2016年3月期には連結子会社となった。

そして、2017年3月期以降に保有株式の実態を欠く異動により持分法適用関連会社へ変変更したということだ。

 

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エフエム東京の第三者委員会による調査報告書より筆者作成

意外に感じた理由は、

持分法と連結法では利益に与える違いは無い

からだ。

エフエム東京が業績の悪い子会社の損失を隠す目的であれば、

持分法の適用対象からも外さないと意味がない

つまり、持分法の適用対象としていたら広い意味で連結外しとは言えないのである。

 

ところが、第三者委員会による報告書では、連結外しによる影響額を以下のように記載している。

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連結外しの影響額 ㈱エフエム東京三者委員会による調査報告書より筆者作成

何と、利益に対する影響額が発生していた。

2017年3月期を例にとると、当期純利益に対する影響額は41百万円とある。

本来であれば利益に対する影響はゼロのはずだ。

しかし、エフエム東京は見せかけの株異動で議決権比率が見かけ上、49.5%から38.5%へ低下した状態になっていた。本来の議決権比率であれば営業損失の49.5%の189百万円がエフエム東京の負担分ということで、修正前の148百万円との差額が△41百万円となる。

 

2018年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益の修正影響額△128百万円は2つの要因による。1つは、2017年3月期同様の本来の議決権比率によるTS社純損失のエフエム東京負担分への修正(40百万円)だ。

そして、2つは、TS社の債務超過部分に対する負担(86百万円)の合計だ。

TS社は2018年3月期に債務超過となった。債務超過となった以降の損失は親会社責任として全額、エフエム東京が負担する形で連結決算へ取り込んだ。

 

これが3期累計で利益への影響額は、

 

営業利益 :1,117百万円

経常利益 :   720百万円

当期純利益:   362百万円

(注)当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益とした。したがって利益剰余金への影響額と同じとなる。

 となる。

 

理屈の上では、持分法と連結法では連結決算における利益の違いは無い。

しかし、エフエム東京は、

 

・議決権比率の修正による損失増

・TS社の債務超過に対する損失増

 

により、損失負担を軽減していたことになる。

 

エフエム東京のTS社の連結外しはこれが目的だったのだろうか?

 

エフエム東京の狙い】

もちろん、議決権比率を低下させることで被る損失額を小さくする目的もあろう。

しかし、一番重視したのは営業利益への影響だろう。

 

持分法による投資損益は営業外費用・収益に計上される。TS社が利益を出そうが損失をだそうが、エフエム東京の営業利益への影響はゼロだ。

しかし、連結子会社として連結決算に組み込むと、TS社の売上、営業損失、資産、負債が全て項目ごとに合算される。

 

詳しくはこちらを参照☟

https://globis.jp/article/4702

 

三者報告書には、連結外しの理由として経営者の保身を挙げている。

報告書では以下が記載されている。

 

「TFMの連結営業利益の悪化の原因がTSの営業損失にあることが明らかになった場合、i-dio事業の収益の源泉であるTSの経営状況、財務状態が大幅に悪化していることが、又は、(中略)これまでTFMグループで総額100億円規模の投融資資金を投じてきたにもかかわらずi-dio事業全体の状況が芳しくないことが、社外取締役を含むTFMの取締役や、株主その他の利害関係人等にも広く共有されることになる。

そうすると、撤退を含めたi-dio事業の抜本的な見直しを検討せざるを得ない事態となるおそれがあり、また、i-dio事業に多額の投融資を行い積極的に事業を推進してきた経営陣の経営責任を問われるおそれがあった。」

 

TS社が運営するデジタル放送事業「i-dio」は2016年にサービスを開始したが、利用者の低迷により赤字が続いており、この経営責任を株主や社外取締役から追及されるのを経営者が避けたかったということだ。

 

どんな事情があるかは知らないが、何とも身勝手な理由と言わざるを得ない。

ネットでは、こうしたエフエム東京の体質をタイマーズ時代の故忌野清志郎氏が見抜いていたというニュースが流れているが、果たしてどうなのだろうか・・・

 

また、会計監査の責任も今後、指摘されるかもしれない。

過去の粉飾の事例を受けて、会計ルール同様、会計監査も厳格化されている。

 

ましてや、記事にも

「報告書ではTS社の株式を購入した3か月後にエフエム東京の別の子会社が一部のTS社株を買い戻しているほか、TS社の取締役の過半数エフエム東京やグループ会社の役職者で占めているため、連結子会社と認定した。」

とあるように、今回のエフエム東京のケースは株の異動はそこまで手の込んだものでもないように思われる。

それに、単に連結除外ではなく、連結子会社を持分法適用関連会社として持分法とするのは会計的にかなりの知見が伺える。

これが会計監査で見逃されていたのは個人的には不思議でならない・・・