溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

『下方修正』はどういう場合に必要になるのか?

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151027-00089567-toyo-bus_all

IHIは21日、2016年3月期の業績見通しを下方修正した。売上高は1兆5800億円に据え置いたものの、経常利益を従来予想から250億円引き下げて380億円に減額。過去最高益予想から一転、前期比33%減益となる。中間期(2015年4~9月)の経常損益は40億円の赤字に転落したもようだ。』

主因は、愛知工場で手掛ける海洋資源関連の構造物事業とのことだが、ところで新聞紙上で目にする『下方修正』はどういう場合に必要になるのだろうか?

 

下方修正は、東京証券取引所など取引所が、上場企業に対して求める適時開示に関する規程に基づく要請だ。

投資者が自己責任により投資を行うために投資判断材料として、証券市場に上場されている株式等に関する重要な会社情報が適時に提供される必要がある。つまり、会社の株価を左右するような重要なイベントが発生した場合には、速やかにそれを投資者に発表しろ、ということだ。
このような重要なイベントの1つが、『下方修正』に該当するような業績のブレ、ということだ。正確には、『業績予想の修正等』であり、

 

・売上高に10%以上の増減

・営業利益・計上利益・当期純利益に30%以上の増減

 

が既に公表している業績予想とかい離すると見込まれる場合は、速やかにその旨、その理由、その他投資者が会社情報を適切に理解・判断するために必要な事項を公表することが求められている。

業績予想からのかい離ということなので、下振れだけでなく、上振れも対象となる。この場合は、『上方修正』となる。

 

下方修正は、当初公表された業績予想よりも業績が悪化する(見込み)ため、当然ながら投資者は期待外れ、ガッカリ、ということになり、いわゆる失望売りに繋がることもある。となると、株価は下落・・・もっとも、下方修正の原因や思ったよりも悪くなかった等ということもあるので、一概に下方修正⇒株価下落、とはならないこともあるが、一般的には株価には悪影響となるだろう。

となると、会社としては下方修正は出来れば避けたいところだろう。このような動機が粉飾決算に繋がることも往々にしてある(が、ここではその話は置いておく)。また、このような背景から決算期ギリギリの発表になることもある(適時なのか?)

 

『すでに下方修正は今期に入って2回目。5月に発表した期初の通期経常利益予想は750億円なので、わずか半年の間に利益は半減することになった。』

 

今回の下方修正は、IHIにとって今期2回目。(業績予想を裏切って)ゴメンなさいした会社が2度、3度にわたって下方修正する例もある。2012年3月期のソニーは確か4度の下方修正を行った(しかも、決算期付近に立て続け・・・よほど監査法人と折り合いがつかなかったんだな、と勝手に推測・・・)。

1決算期に複数回の下方修正となると、単なるガッカリを超えて、会社の管理能力が疑われる可能性がある。業績が、為替や天候や経済全体に景気に左右される会社は少なくないが、上場会社である以上、来年の業績は『天気に聞いてくれ』では困る。ということで、上場審査の際には、予算管理制度を厳しくチェックされる。月次決算をベースに予算と実績の差異を把握して、分析、損益改善策の検討、実施のサイクルを運用して、予算達成を可能にする仕組みである。そんな上場審査を当然ながらクリアした会社が2度、3度の下方修正・・・この経営者を信用して大丈夫か?ということだ。

 

とはいえ、景気動向によっては通常に輪を掛けて下方修正を公表する会社が多くなることもある。東証は、2012年に業績予想に対する取り扱いを変更し、現在は、実質的に従来の売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の予想を公表しなくてもOKとなっている。

この変更を機に、業績予想を公表しない会社が急増した。

まあ、気持ちは分かるんだけどね、

やりますと言って、出来ませんでしたと言うと、やるっていったじゃないか!!

ああ、ガッカリ、で評価が下がるなら初めからやりますとは言わないでおこう、

ということだ。

でも、それでいいのかな~と思ってみたり。