令和時代が幕を開けてから早いもので1週間、
最長10連休という長いGWもようやく終わり、
世の中は、通常モードへ気持ちの切り替えをしつつある状況だろうか。
令和という新しい時代に対する抱負を新たにした人も多いだろう。
当事務所ブログも令和に因んだ話題をと、探してみたのだが、見当たらず・・・
結局、やはり基本が大事ということで、令和第1弾のテーマは
運転資本
を取り上げる。
運転資本については、過去にも何度が取り上げてはいるが依然、多くの質問を受ける。
運転資本は、事業運営に必要なおカネ、資産が滞留したり事業が成長したりするとおカネが不足する、といった状況については一定の納得感は得られているように思う。
一方で、運転資本の金額については納得感が得にくいようだ。
簡単な例を見てほしい。
運転資本の表し方も色々あるが、ここでは売掛金、買掛金、棚卸資産を構成要素とする。
売掛金 50
棚卸資産 150
買掛金 50
とすると、運転資本は150(売掛金50+棚卸資産150-買掛金50)だ。
運転資本はB/Sの勘定科目ではないが、B/Sの勘定科目であれば借入金のイメージでよい。
ここで、運転資本150が事業を運営するために必要なおカネであったり、入金までのつなぎ資金で支払のために残しておくべきおカネと説明をすると、
『えっ!?50じゃないんですか?』となる人が結構いる。
おそらく、買掛金が50であることが原因だろう。
会社にとって必要なおカネは、買掛金の支払いのために必要な50ではないのか?
ということが言いたいのだと思う。
そう言われてみると確かにそう見えなくはない(と気が付いた(笑))。
だが、肝心な点は、
B/S(バランスシート)は取引の結果としての現在の状況
を表しているということだ。
つまり、運転資本は、『今後』必要になるおカネ、ではなく、
『現在まで』必要としたおカネを表す。
これを理解するために、まずはものすごく簡単な例を考えてみる。
商品を200購入したいのに手元におカネが無いので、200の借入をする。
会計処理①
借)現金 200 貸)借入金 200
そして、借入で調達したおカネで商品を仕入れる。
会計処理②
借)商品 200 貸)現金 200
①と②の取引を合成すると、
会計処理③
借)商品 200 貸)借入金 200
③の会計処理を①と②に分解すると運転資本の理解がしやすくなるのではないだろうか?
借入金=運転資本なので、ここまでの取引を行うのに必要となった運転資本は200となる。
では、次の例。
商品200を仕入れる(手元資金は0)。この内50は来月末払い(買掛金)とし、不足額の150を借り入れることにした。
会計処理④
借)現金 150 貸)借入金 150
商品を200仕入れた(但し、150を現金払い、50を来月末払い)。
会計処理⑤
借)商品 200 貸)現金 150
買掛金 50
となり、これまでの取引を合成すると、以下。
会計処理⑥
借)商品 200 貸) 買掛金 50
借入金 150
その直後に、商品の内50を50で販売(単純化のため利益0)して、代金は来月末の回収とする。
会計処理⑦
借)売掛金 50 貸)売上 50
売上原価 50 棚卸資産 50
売上と売上原価はP/Lなので、ここでは脇に置いて、⑥に⑦のB/S部分のみを合成すると、
会計処理⑧
借)売掛金 50 貸)買掛金 50
棚卸資産 150 借入金 150
借入金=運転資本とすると、冒頭の運転資本の図と一致する。
ここで、先ほどの疑問を思い出してほしい。
運転資本の金額は、来月の支払いに必要となる買掛金の50だろうか?
確かに来月50の支払いが必要にはなるが、同じタイミングで売掛金50が回収される。回収した50で支払えばよい。
また、商売上、棚卸資産は150は保有しておく必要があるとすると、さらに販売するためには商品を追加仕入する必要がある。同じ回収条件、支払条件で商品仕入、販売というビジネスを繰り返すと、借入金150を維持する必要がある。
(注)なお、これは運転資本をイメージしやすくするための簡単な例なので、実際の回収や支払いの取引期間や在庫の保有期間によっては、運転資本が常に一定とは限らずタイミングによって若干増減することはある。
まさに、
事業活動を継続する上で必要になるおカネ=運転資本
運転資本は来月の支払いのために必要になるおカネではない。
既に調達したおカネであり、事業継続のためにはキープする必要があるおカネ
ということだ。