一昨日(12/9)、延期されていたMTG社の2019年9月度の決算がようやく発表された。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7806/tdnet/1776464/00.pdf
東証の適時開示ルールでは、決算日から45日以内に決算発表(決算短信)を求めている。いわゆる45日ルールだ。
50日を超える場合は、その理由や発表時期の見込みを発表する必要がある。
とにもかくにも、決算日後約70日で発表に至ったわけだ。
そもそも決算発表が遅れた原因は、
韓国子会社の取引先における
棚卸資産の評価
を巡って監査法人と意見が合わず調査を要したためだ。
(現地監査法人への通報)
MTG社は社内調査の結果、11/19付で以下のような年度決算見通しと共に業績予想の下方修正を発表した。
【連結決算】
棚卸資産評価損 45.5億円
減損損失 87.6億円
前四半期の在庫水準からすると、
棚卸資産のザっと4割の価値が無くなったことになる。
【単体決算】
関係会社株式評価損 40.1億円
貸倒引当金繰入額 36.7億円
詳細はコチラ☟
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7806/tdnet/1772771/00.pdf
前回のブログで書いたが、MTGは半年前の2019年9月期第2四半期にも決算発表を延期した。
原因は、売上計上のタイミングだった。
MGT及び中国子会社は卸業者へ販売した時点で売上を計上(一括売上認識)していたが、取引実態から、本来は卸業者から第三者への売上を計上する時点で売上認識すべき(消化売上認識)ということだ。
その金額的影響をまとめたのが下図だ。
この影響額を見たときに違和感を覚えた。
売上高の取り消し処理を行うと、在庫の戻し入れの処理も行われる。
返品等によって売上も取り消されるが、棚卸資産も返品されるためだ。
売上と同時に売上原価も取り消されるため、利益(この場合は売上総利益)に与える影響は通常、売上総利益相当分となる。
但し、それは、
返品された棚卸資産が良品として再販可能な場合だ。
もともと無理なスキームで売上を計上したのも、中国の販売減速や日韓関係の悪化からの不買運動などといった市場環境の変化へ対抗するためだ。となれば、これまで通りの売価で商品が売れ続けることは考えにくい。つまり、売上取消の対象となった棚卸資産が通常売価はおろか、原価でも再販されるのは困難ではなかろうか?
2018年9月期の訂正では、売上高とほぼ同程度の営業利益が取り消された。
先述のとおり、売上取り消しの利益に対する影響額は売上総利益分だ。
これは一体どういうことか?
考えられるのは、受入と同時に対象となった棚卸資産の評価減
を実施したということだ。
会計ルールでは、棚卸資産の評価損は通常、売上原価として計上される。
したがって、評価損を計上するほど売上原価が増加する。
返品等で受け入れた棚卸資産を100%評価減すると、結果的に、
売上原価+売上総利益=売上高
に相当する利益が減額されることになる。
しかし、2019年9月期の第1四半期以降は、売上の取り消し金額よりも営業利益の減少額は少なくなっている。同社の売上総利益率が60%程度であるから、棚卸資産の金額を満額、つまり100%良品評価で受け入れたとは思わないが、2019年9月期第1四半期の取り消された売上に対する営業利益が70%、第2四半期の営業利益が80%取消されていることから推察すると、対象となった棚卸資産のそれぞれ10%、20%の棚卸資産評価損は計上されているのではないか。要するに、一定の評価金額で返品あるいは卸業者へ販売した棚卸資産を受け入れをしたように思えた。
それらの棚卸資産は再販の見込みがあるということなのだろうか・・・
気になったので、訂正の対象となった2018年9月以降の棚卸資産回転期間と売上総利益率の推移を調べてみた。
2018年9月年度末決算の訂正で既に棚卸資産の回転期間の長期化が見られる。
特に、2019年9月期の第1四半期の訂正分から棚卸資産回転期間が大幅に長期化しているのが分かるだろう。同時に売上総利益率も低下している。
売上取り消しの対象となった棚卸資産(その大部分はReFa)の受け入れ処理をしたと同時にある程度の棚卸評価損は計上したのではないかと先程書いた。
会計ルールでは、棚卸資産の評価損は通常、売上原価として計上される。
売上総利益率が低下しているのはその影響もあるだろう。
しかし、棚卸資産評価減により通常、回転期間は短期化する。
=棚卸資産/1日当たり売上原価
であり、分子の棚卸資産が小さくなり、分母の売上原価が大きくなるためだ。
つまり、棚卸資産を評価減してなお棚卸資産の回転期間が長期化しているということは、他に滞留在庫がある可能性がある。
これまでのスキームで売上を計上すべく製造等の手配をしていた棚卸資産を受け入れざるを得なかったということも考えられるが、
もう1つ考えられるのが、韓国向け売上の棚卸資産だ。
前回、第三者委員会を設置して調査し、結果訂正の対象となったのはMTG本社及び中国子会社の中国市場向け売上だ。
しかし、韓国向け売上についても同様の状況は観察していたように推察する。
上記のように、棚卸資産回転期間の長期化も確認できる。
そして、その数か月後に韓国子会社の取引先の棚卸資産の評価が問題となって決算発表延期、調査、業績下方修正・・・
第三者委員会の調査では、韓国向けの売上や棚卸資産の評価の妥当性については問題視されなかったのだろうか?
今回、韓国子会社の取引先の棚卸資産の評価減を実施とのことだが、売上済みなのかどうか、また、その妥当性については何ら発表がない。
本当に全ての処理が完了したのだろうか?
監査法人も交替するようだし、来期また何か発覚するかもしれない。
ん~何とも釈然としない
一方、株式市場の反応は、
すっかり悪材料が出尽くしたとの認識で株価は反発・・・
ん~、やっぱり釈然としない