溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

固定資産売却益をマイナスするのは何故? 【キャッシュ・フロー計算書の構造】

キャッシュ・フロー計算書(間接法)の構造について、よく質問を受ける内容2点について説明しておく。

 

よくある質問は、営業キャッシュ・フローの調整計算において、

 

①固定資産売却益をマイナスするのは何故?

 

②支払利息をプラスするのは何故?

 

というものだ。

以下、それぞれ簡単に説明する。

 

①固定資産売却益をマイナスするのは何故?

 

質問の趣旨としては、減価償却のようにキャッシュの収支を伴わない項目を調整するのは分かるが、固定資産の売却によってキャッシュを得ているにもかかわらず、何故それをマイナス(無かったこと)にするのか?ということだろう。

 

これについては理由は2つある。

1つは、P/Lに計上されている固定資産売却益は、売却によって得たキャッシュとは異なる。例えば、100の固定資産を150で売却する場合、売却益は50としてP/Lに計上されるが、得たキャッシュは150である。キャッシュ・フロー計算書では150が必要となる。そのため、一旦、売却益50を消去して、改めて得たキャッシュ150をキャッシュ・フロー計算書上、記載するためだ。

もう1つは、表示位置の調整だ。固定資産の売却によって得たキャッシュは、営業活動によるキャッシュ・フローではなく、投資キャッシュ・フローに区分される。したがって、上記150は投資活動によるキャッシュ・フローの区分に固定資産の売却による収入などとして記載される。

なお、この関係は、固定資産に限らず、’(投資)有価証券なども同様だ。

 

②支払利息をプラスするのは何故?

 

支払利息は、実際にキャッシュで支払っている費用なのに何故プラスしてしまうのか?実は、P/Lに計上されている支払利息(受取利息も同様)は必ずしもその期間に”支払った”利息とは限らない。例えば、3月度の支払利息を翌月4月に支払うことがある。費用は発生主義で計上されるが、キャッシュ・フロー計算書ではこれを現金主義に転換する必要がある。例えば、P/Lでは、3月分の支払利息として計上されているが、3月にはまだキャッシュとしては支払われていないため、その分をキャッシュ・フロー計算書の調整においては考慮する必要がある。そこで、調整のため、一旦、PLに計上されている支払利息をプラス(加算)してオフセットし、そして、小計後に、その期簡に実際に支払った利息額を”利息の支払額”などとして記載している。つまり、P/Lの支払利息計上額と実際のキャッシュの支払額の調整を行っているということだ。

なお、支払利息を財務活動によるキャッシュ・フロー、受取利息及び受取配当金を投資活動によるキャッシュ・フローで調整記載することも認められている。但し、選択した方法(区分)は継続適用が原則となる。