「富士通は現金収支の指標として、成長投資前のフリーキャッシュフローにリース料支払いを加えた「ベースキャッシュフロー」を重視している。磯部武司最高財務責任者(CFO)は「25年3月期までで1兆円程度創出されると想定していたが、1兆5000億円以上となりそうだ」と話した。」
ベースキャッシュフロー?
ということで、少し調べてみたが一般的な概念ではないようだ。
記事によれば、
ベースキャッシュフロー
=フリーキャッシュフローー成長投資+リース料支払い
とのことだ。
富士通の2022年3月期の決算説明資料で確認すると、(https://pr.fujitsu.com/jp/ir/library/presentation/pdf/20220428-01.pdf)
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成長投資は、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローのそれぞれに含まれる該当する投資とのことだ。
営業キャッシュフローでは、研究開発投資や人材投資など、
投資キャッシュフローでは、通常投資ではない戦略的な設備投資やM&Aなど
が含まれるのではないかと思われる。
フリーキャッシュフローは、一般的には営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計で表される。個人的には、キャッシュ(フロー)の面からの余力情報と解している。余力(フリーキャッシュフローがプラス)があれば、戦略的、追加的な投資ができるといった見方ができるが、現在の作成ルールでは、戦略的な投資も通常投資も合わせて営業キャッシュフローと投資キャッシュフローに反映されてしまうため、外部からはこうした詳細な情報は把握しにくい。したがって、会社側からこうした情報を開示することは、投資家等にとって会社の戦略とおカネの使い方の整合を確認する上でも非常に有益な情報だと思う。
また、リース料支払いは財務キャッシュフローに含まれるため、通常であればフリーキャッシュフローからは控除されていない。しかし、会社にとってリース料支払いが経常的に発生する重要性の高いキャッシュフローであれば、フリーキャッシュフローに含めるべきという考え方もあると思う。例えば、営業利益は本業の利益と言われる。しかし、事業に必要な資金を自己資金だけで賄えなえず一定の借入金が必要な会社の場合は、営業利益から支払利息を差し引いた利益を本業の利益として捉えるべき、と個人的には従来考えている。
2021年3月期の決算説明資料ではベースキャッシュフローは開示していない(フリーキャッシュフローのみ)ので、2022年3月期から導入したと思われる。東証の市場区分の変更が影響したのだろうか?
いずれにしても、形式的ではなく、自社の戦略や進捗状況をより良く表すように財務指標等の数値をカスタマイズして開示、説明することは、投資家との建設的な対話に役立つと思われる。
こうしたnon-GAAP情報を活用する会社が増えると良いと思う。
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