溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

最近流行りの『監査等委員会設置会社』って何?

『昨年施行の改正会社法で導入された「監査等委員会設置会社制度の評価が割れている』

『外国投資家や専門家からは「中途半端で統治改革を後退させかねない」との批判』

もあるとのこと。

この1年間で400社超が(監査役会設置会社から)監査等委員会設置会社へ移行したとのこと。今や上場会社の10%超が監査等委員会設置会社だ。批判が上がるのはある意味それだけ社会的な影響力の裏返しとも言える。

 

監査等委員会設置会社とは、会社の統治形態の1つだ。

下図のように上場会社の機関設計(統治形態)は3種類ある。

 

それぞれに特徴が書かれているが、コガバナンスの観点からは、

社外取締役の人数と役割がポイントだろう。

 

外国人投資家や専門家が良しとする形態は、指名委員会等設置会社であるが、これがイマイチ人気がない。監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社のいわゆる派生形だ。指名委員会等設置会社は、もともとは2003年の会社法改正でスタートし、当時は委員会設置会社と言った。

監査等委員会設置会社が新設されたため、新名称の指名委員会等設置会社となった。

委員会設置会社は、取締役会の中に

指名委員会監査委員会報酬委員会

の3つの委員会を設置する必要がある。ひとつの委員会は3名以上の取締役で構成される(どの委員会にも属さない取締役も可)。各委員会の決定は拘束力を持ち、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならない点が業務適正化の要となっている。なお、監査委員会を除き、執行役が委員を兼任できる。

 

アメリカを中心とする外国人投資家に最も人気のある形態だ。理由は簡単、彼らに最も馴染みのある形態だからだ。日本に伝統的な監査役会設置会社は、監査役には、

・業務執行者の選定および解職の権限がない

・取締役会での議決権がない

この点から、監査役の監査機能の強化に限界あり、や、社長の人事に影響を持ち得ない監査役というものへの理解が困難など、欧米の投資家から日本企業のガバナンスに対する低評価を招いた要因する声もある。

と、まあ個々の指摘はあるが、要するに、監査役会などという自分たちに馴染みのない、理解できないような仕組みで企業統治だ、ガバナンスだと言われても

胡散臭い、ということだろう。

 

そんな素晴らしい指名委員会等設置会社であるが、日本では導入10年を経てなお不人気だ。たった69社。 そして、なんと言われようと、依然圧倒的人気は監査役会設置会社なのである。

最近でこそ、プロ経営者が認知を得てきてはいるが、まだまだ経営のかじ取りを社外リソース(社外取締役)に任せるのは、今度は伝統的な日本企業は慣れていないのだ。特に指名委員会と報酬委員会に関しては、社外取締役に任せるには抵抗がありすぎるのだろう。指名委員会は、会社の取締役を選任・解任する委員会、報酬委員会は、取締役の報酬を決定する委員会だ。会社は誰のものか、も根っこは同じかもしれないが、日本の会社は、平社員からコツコツ頑張って働いたご褒美、終着点が取締役、代表取締役であり、その立場になってなお会社のことを何も知らない人間にあれこれ指図され、報酬を決められ、挙句には解任されるなんてのは我慢ならないということかもしれない(たぶんそう)。記事には、セイコーエプソンの例があり、『社外取締役に次期トップの決定を委ねることは、少なくとも当社のように技術で生きている会社には適切とは思えない』とのこと。屁理屈をこねてでも嫌だ、ということだろう。

 

国際社会の一員、事業のグローバル展開、海外M&A、外国人投資家・・・

こういった国際的な対応を余儀なくされることは重々承知、でも踏み切れない・・・

そんな状況の打開策、いや妥協案監査等委員会設置会社だ。

監査委員会くらいなら社外の取締役にゆだねて委員会にしても経営の大勢に影響はないだろう、それでいて一部とは言え「委員会型」に移行した、つまりあなた方のお好きな体制に移行したことをアピールできる。

また、コーポレートガバナンス・コードで社外取締役を2名以上という要請があり、既に社外監査役を2名選任している監査役会設置会社にとっては、さらに2名の社外取締役を選任ということで、(色んな意味での)負担感が半端ない。であれば、いっそ、現在の社外監査役を監査委員会担当の社外取締役

横滑りさせれば、これらのニーズを一気に満たすことになり一石二鳥という実務的な対応もある。これが、この1年で多くの上場会社が監査等委員会設置会社に移行した要因だろう。

 

『「監査等委設置会社への移行は現状からの改悪にすらなり得る」。米シカゴに本拠を置く運用会社RMBキャピタルは今年3月、インターネット広告大手、オプトホールディング(HD)の株主総会監査役会設置会社からの移行に反対した。』

とまあ、そもそも妥協点としての監査等委員会設置会社だから、こん批判が出ることは容易に予想ができるというか、当たり前。

 

会社の統治形態に特徴があることは間違いないが、どんな形態であれ、何の課題もないということはなく、どれも一長一短。

であれば、どの統治形態をとっているか、が問われるのではなく

 

なぜ(何を重視して)その統治形態を採っているのか

(狙いと統治形態の適合も)

 

その統治形態の短所に対してどうフォローするのか

 

を明確にして、投資家などステークホルダーに説明、協議

をするプロセスが問われるべきだと思う。

 

記事には、三菱重工サントリー食品インターナショナルのように監査等委員会設置会社でありながら、任意で指名、報酬、人事委員会を設置する会社もある。それだったら指名委員会等設置会社に移行したら良いのでは?という意見はもっともではあるが、大事なのは、自分を見て、外を見て、

企業統治がどうあるべきかを考えて実践することだと思う。その過程では、結果として失敗や回り道はもあるかもしれないが、長い目で見ての前進となっていれば良い。監査等委員会設置会社もそのプロセスの1つのピースと捉えたい。