溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動しています。また、グロービス経営大学院大学でアカウンティングとファイナンスの講師活動も行っています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人

レナウンの倒産はコロナ影響なのか?     【ある会計士の妄想】

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200515-00010011-biz_shoko-bus_all

 

ヤフーニュースによれば、東証1部上場会社のレナウン民事再生を申請したとのことだ。負債総額は138億7900万円。 

同社の社長によれば、「新型コロナウイルスで消費は経験したことのないような打撃を受けている」とのコメント。

レナウンは、消費増税や暖冬、親会社のグループ会社の延滞した売掛金引当などで2019年12月期(10カ月決算)で2期連続の最終赤字を計上していた。

 

アパレル、繊維業界の経営環境が良くないのは周知のこと。

これ本当にコロナ影響なのかな?

と気になったので、有価証券報告書をチェックしてみた。

  

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レナウン有価証券報告書から筆者が作成


2019年の親会社と決算期を合わせるために決算期の変更をしているため、2019年12月期は10ヵ月決算となった。

 

直近5期の内、当期純利益が3期赤字、営業キャッシュ・フロー(CF)が3期赤字・・・

以前、当ブログでも民事再生を申請した会社の特徴として紹介したが、営業CFの赤字は会社が事業からおカネを稼げていないことを意味する。営業CFの赤字が継続することは、会社がおカネが流出し続けることであり、早晩経営が行き詰まるサインとなる。

レナウンは、以前からそれに近い状態にあったということが分かる。

 

また、現金及び現金同等物の減り方がスゴい・・・

2019年2月期までは、残高で70~80億円、手元流動性が45~50日程度あったが、2019年12月期では、一気に20日まで減少している。

 

キャッシュ・フロー計算書を確認すると、

2019年12月期は、そもそも営業赤字(約80億円)に加え、

売上債権の増加による営業CFの減少 22億円

棚卸資産の増加による営業CFの減少 11億円

が営業CF赤字の主な要因のようだ。

ちなみに、2019年2月期は、売上債権の減少(回収だろうか)による営業CFの増加が34億円あり、これが営業CFがプラスとなった要因として大きいと思われる。

これもなんか微妙なんだけど・・・

 

なお、同期間の売上債権回収期間の変動を見てみると、以下の通り。

 

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レナウン有価証券報告書から筆者が作成

 

いずれも貸倒引当金設定前の金額、つまり額面ベースで算定した。

ちなみに、手元流動性と同様、2019年12月期は10ヵ月決算のため、1日当たり売上高は306日で算定。

まず、1日当たり売上高が一貫して減少傾向にあることが分かる。

売上債権回転期間は5期前から75~80日で推移してきたのが、2019年2月期に一時的に64日へ短縮されている。これが、営業CFの黒字化に貢献したと思われる。

後述するが、親会社によるグループ間の資金融通の結果であるとすれば、この当時はまだレナウンとの関係が悪化していなかったのではないかと思える。

 

このような状況を考慮して、2019年12月期には継続性の前提に関する注記、いわゆるGC注記ゴーイング・コンサーン注記)が付された。

少し長くなるが、レナウンGC注記を添付する。

 

当社グループは2期連続で営業損失を計上しており、当連結会計年度においては7,999百万円の営業損失を計上しております。また、当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローが△4,567百万円となっております。なお、当連結会計年度の販売費及び一般管理費に計上した貸倒引当金繰入額5,779百万円には、当社の親会社である山東如意科技集団有限公司の子会社である恒成国際発展有限公司に対する売掛金の回収が滞ったことにより計上した貸倒引当金繰入額5,324百万円が含まれており、当社グループの資金繰り計画に重要な影響を及ぼしております。

 さらに、当社グループは2期連続で経常損失を計上しており、その結果、一部の金融機関と締結している借入契約(2019年12月31日現在借入残高585百万円)について財務制限条項に抵触しております。2020年2月末以降の新型コロナウィルスの感染拡大が販売に影響を及ぼす中、当該財務制限条項への抵触による資金繰りに与える影響が増しております。

 当該状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。

 当社グループは早期の営業黒字化を目指すとともに、滞留している売掛金の回収を実現することで当該状況を解消すべく、以下のとおり対応してまいります。

 

1 販売施策

 基幹ブランドであるダーバン、アクアスキュータムアーノルドパーマータイムレスに経営資源を集中し、収益の改善を図ります。消費者の購買行動の変化に対応すべく、EC事業の強化及びサブスクリプション型事業「着ルダケ」の展開を加速してまいります。

2 コスト削減策

 売場ごとの損益管理を徹底し、不採算・低効率な売場や取引の見直しを行うほか、人員効率の改善などによるコスト削減を図ってまいります。また、販売状況を踏まえた効率的な仕入政策を行うことで、正価販売比率の向上及び在庫の適正化に取り組んでまいります。

 以上に加え、全社的な経費削減にも取り組むことで、営業損益の改善を図ってまいります。

3 売掛金の回収

 恒成国際発展有限公司に対しては引き続き同社の財務状況等について情報収集に努め、支払いの督促を行ってまいります。

 また、恒成国際発展有限公司に対する売掛金に関して、引き続き契約に基づき連帯債務者となっている山東如意科技集団有限公司に対し、担保の提供要求を含めた債務の履行の交渉を行ってまいります。

4 財務制限条項

 財務制限条項に抵触した借入金については、当該金融機関に対して、期限の利益喪失の請求を猶予していただくよう申し入れをしております。」

(以上、レナウン有価証券報告書から抜粋 下線、文字の色付けは筆者による)

 

GC注記には、事業継続が危険な状況に至った状況と要因、それに対する対策等が記載される。

 

中でも気になるのが、売掛金の回収だ。

長年にわたり経営不振が続いたレナウンは、2010年にヨーロッパなどのアパレル会社を次々に傘下に収めていた山東如意科技集団有限公司山東)のグループに入り、2013年には連結子会社となった。その後も業績回復は難しく、直近事業年度では2期連続の営業、純損失を計上した。

特に2019年12月期の赤字の大きな要因は、山東のグループ会社である恒成国際発展有限公司レナウンとは兄弟会社の関係)との取引で発生した売掛金の回収遅延による貸倒引当金53億だ。恒成に対する売掛金の回収は、親会社の山東が保証しているが、依然支払われてはいない。

 

なんか微妙・・・

 

しかも、2020年3月の株主総会では、山東レナウンの会長、社長の再任に反対し、レナウン山東の関係悪化が懸念される事態となった。

 

GC注記にしても、初めてGC注記が付いてから半年内、決算監査の期間を考慮すれば実質的に3ヵ月後での民事再生は、ちょっとGC注記を付すのが遅すぎるのではないかと指摘されるようなタイミングだ。

 

但し、

それだけ事態が急変したのであれば別が・・・

 

ここからは、完全に妄想になるが、

親会社に助けられ、そして捨てられた感が否めない・・・

親会社の都合も、広い意味ではコロナ影響か・・・

とはいえ、アパレル事業の環境変化に対応できず、経営を立て直せなかったレナウンの経営が問題の根源なのだろう。

 

もっとも、仮に経営が再建できたとしても、

親会社の都合で似たような結果になったかも知れないが…

 

それにしても、レナウンと言えば、僕が子供のころは子供でも知っている有名企業だった記憶がある。一時代が終わった感があるなあ・・・

 

コロナ禍で日本的経営が見直されるのか!?

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5825510020042020000000/?n_cid=TPRN0002&fbclid=IwAR2-CdZ6QRHxw7sdzOacU_iSu57vspxdC1N50mCFvWLZ3LjI4znPtK-iAz0

以下、『 』内は、日経BIZGATEより抽出(2020/4/22)

 

記事のタイトルは

内部留保・長期雇用は強み

 コロナ禍で「日本型経営」再評価

  岩村充・早大大学院教授に聞く』

 

 

 

冒頭、

新型コロナウイルスの感染拡大で国際経済の収縮が進むなか、大手から中小まで企業は生き残りをかけて必死の模索を続けている。政府・与党は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の裏付けとなる2020年度補正予算の4月内の成立を目指す。岩村充・早大大学院教授は、日銀の企画局兼信用機構局参事を務めた金融政策や経営管理研究の第一人者。新型コロナが収束した後に、企業経営のあり方が大きく変わると分析する。グローバリズムの流れが一転し、これまで批判を受けやすかった手厚い内部留保など「日本型経営」が再評価されると予想している。』

 

うーん

 

『 ――新型コロナの感染で国際的なサプライチェーンの中心だった中国の生産活動が止まったこともあり、グローバル戦略を見直す機運も広がっています。

 「雇用慣行や手厚い内部留保、長期的戦略など日本の経営モデルが再評価される可能性がある。新型コロナの収束後は、企業価値を決める指標に事業の存続性が重視される。足元の業績が好調でも、今回のような事態に対応できない企業には融資しづらい」

 「従業員の確保は何より大切になる。とりわけ中小企業にとって守るべきは信用であり雇用だ」』

 

うーん、うーん

 

さぞ、偉い先生なんだろうし、全体の主張を理解せずに、一部分だけ切り取って誤解をしてるのかもという自分自身への疑いはあるのだが・・・

 

でも、しかし、

 

ホントにそうか~!?

 

ここからは、誤解を承知で、記事に記載のままの内容に対する個人的な見解としたい。

 

手厚い内部留保、というか、この場合は、現金及び預金のような現金同等物の蓄積のことを指しているのだと思うが、たまたまこの状況だからじゃないのだろうか?

 

確かに、目下の非常事態においては手厚いキャッシュの重要性はその通りだ。しかし、昨冬の歴史的な雪不足然り、50年とか100年とかに1度レベルのインシデントをベースに事業を組み立てるなんて現実的なんだろうか?

 

晴天の日にも、常に(☚ココ重要)

台風、洪水、落雷、地震、火災、ウイルスに対する完全防備をして外出をするようなものなんじゃないのだろうか。

 

常に備蓄に軸足を置くのではなく、むしろ、

状況の変化に対応して適時に意思決定し、実行する組織や、

経営者のマインドセットの方が重要に思えるんだけどなあ・・・

 

なので、個人的には現在のような有事においては籠城戦に備えてキャッシュの確保は大切だけど、平時もかく在るべしというのは、懐疑的だ。

おそらく、アフターコロナも海外投資家を始めとする投資家の多くはビフォアコロナと同様に資金の効率的な運用・成果を求めてくるだろうと思う。

リーマンショックの後も欧米の立ち直りは早く、震源地でない日本が取り残された印象だった。

 今回はデジャブにならなければ良いが・・・

 

それから、長期的戦略など日本の経営モデルとあるが、これも腑に落ちない。

もちろん、長期的な戦略に基づいた経営をしている会社もあるだろうが、それが日本企業ののスタンダードではないように感じる。

 

上場会社は、四半期決算報告が義務付けられている。

投資家の企業に対する要求が短期的な視点からになり、経営者からすれば長期目線での経営がしにくいという環境は否めないが、投資家の期待に応えていないことに対する言い訳になってはいないだろうか?

例えば、現在、長期経営計画(5年以上)を公表する会社はどれほどあるだろう。

 

手厚い内部留保はともかく、日本的経営には海外に対しても引けをとらない優れた点は他に多々ある。

そうした部分が改めて評価されることはあるだろう。

 

企業別組合、終身雇用、年功といった日本的経営の特色が見直されるかどうかは知らんけど(笑)

 

日本的経営の三種の神器

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37575540Z01C18A1TM1000/

 

 

 

 

 

新型コロナウイルスで減損が見送られる!?

日経朝刊4/3’20より

金融庁日本公認会計士協会などは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の急減を受け、企業がただちに工場や店舗の資産価値の切り下げを迫られないようにする方針だ。日本の会計基準では資産価値が取得時より大きく下がれば減損処理しなければならないが、企業や監査法人柔軟に判断できるようにする。会計ルールの適用を弾力化することでコロナに伴う業績悪化を和らげる。』

 

とのことだ。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響が計り知れない・・・

健康面、医療面への影響はもちろんのこと、

経済面でもリーマンショックを上回る影響が見込まれると言われる。

未だピークを超えず、終わりが見えないことも更に不安を煽る。

 

このような状況で決算期末を迎える3月決算会社。

会計上もいろんな影響が予想される。

関与する会社でも実際のビジネスへの影響は2月まではほとんどなく、3月以降で出してきているので、本業、P/Lで言えば営業利益段階では新型コロナウイルスによる影響はさほどないだろうと思う。

ビジネス上の影響はむしろ来期、2021年3月度の影響の方が圧倒的に大きいと予想される。

しかし、来期(2021年3月度)以降の業績が当期、つまり2020年3月期に影響を及ぼす項目もある。

いわゆる見積り項目だ。

見積り項目の中でも具体的には、

 

固定資産の減損

有価証券の減損

繰延税金資産の取崩し

 

といった項目だ。

 

これらは、決算期末時点における会社の資産の評価において、これまでの業績(実績)だけでなく今後の業績見通しを判断材料とする。つまり、足元の業績が悪化したとしても、来期以降の業績の回復可能性も考慮して評価しろ、と言うことだ。

そのため、来期以降の業績見通しが悪化すると、当期末における資産評価へマイナスの影響が出ることになる。

過去記事にも書いたが、現在の会計ルールでは目下のビジネスが悪化すると、それに影響を受け、固定資産の減損損失、さらには繰延税金資産の取り崩しによる税金費用の増加と連鎖反応を起こし、実態以上に見た目の業績が悪化する傾向がある。

 

tesmmi.hatenablog.com

 

 

記事は、コロナショックによる影響は一時的なはずだから、会計士の皆さん、そこは割り引いて監査してくださいよ、

 

忖度しろよ

 

という趣旨だろうか。

 

金融庁は3日にも公認会計士協会や東京証券取引所経団連全国銀行協会などと会計実務に関する対策協議会を立ち上げる。会計基準そのものは見直さないが、現行のルールを弾力的に適用できるように関係者で認識を擦り合わせる。』

 

これに対して例えば日本公認会計士協会は、以下の反応だ。

 

『昨晩および今朝の会計ルールの弾力化に関する報道の内容については、当協会から発したものではありません。また、このような報道がなされることについて、当協会が事前に承知していたものでもありません。』

jicpa.or.jp

 

ということで、未だ本決まりではないようだ。

とはいえ、メディアで報じられたということは大筋は合意され、

具体的な施策について今後明らかになるということだろう。

 

監督官庁しては、固定資産等の減損等によってパッと見の業績が著しく悪化したような印象を抑制したいという考えなのだろうか。

確かに、現在のような未曽有の経済状況においては、マスクやトイレットペーパーの買い占めのようにパニック的な行動を起こす人もいるので、不安を煽りたくないというのは理解できる。

 

しかし、気になる点もある。

まず、

新型コロナウイルスの影響は一時的なものと言えるのか?

現時点は、専門家の間でも見通しは立っていないだろう。

経済への悪影響を避けるために減損を先送りしたいというのは分からないではないが、新型コロナウイルスの影響が今後数年継続するということであれば、やはり会計的な判断には含めるべきだろう。

また、

2020年3月決算は、業種にもよるが米中貿易摩擦円高の影響で業績が悪化していた会社は少なくない。新型コロナウイルスの影響による業績の悪化部分をどう切り分けて把握するのだろうか、いう疑問も生じる。

そして、

記事には、監査法人に対して、機械的にルールを適用せず柔軟な対応を求めるとしている。

 

そのための指針やガイドラインがどの程度出されるのだろうか?実務を考えた場合、会社と監査法人が個別に検討して判断ということなると、これはもうかなりの混乱が予想される。また、検討による時間の増加、そしてそしてそれに伴うコストもかなり積み上がりそうだ。

キャッシュアウトのない減損の抑制のためにキャッシュアウトを強いて

不安な経済状況下の企業の財務安全性を損なわせるのは笑えない冗談だ。

 

機械的にルールを適用せず柔軟な対応については、やり切れない気がする。

過去の会計不正の影響は理解するが、その改善対応として、現在、監査法人の監査が監督官庁や会計士協会から審査される状況にある。その結果、現場の会計士にとっては個社の状況に即した会計的判断が難しく、どちらかというと保守的な判断を下す傾向にあると理解している。保守的と言うのは損失を計上する方向という意味だ。

いきなり逆方向に舵を切れと言われてもどこまで対応できるのか疑問がある。

 

そして、やはり、どんな事情があるとはいえ、会計的な判断に手心を加えるというのは適切な会計処理と言えるのだろうか?

要するに、国民の会計リテラシーが低いから、数字が悪くなると不必要に不安を煽ることになる。

だから、見た目の数字を取り繕う、というように思えてならない。

だとすれば、

粉飾決算を正当化する会社と考え方は同じだ・・・

 

今回はともかく将来同じような事態にならないとは限らない。

自分で会社の業績を評価する力、会計リテラシーの向上

の必要性を改めて感じた。

 

疑義のついた企業は格下げになり、融資を受けにくくなることも想定される。コロナの終息がまったく見通せないなか、画一的に運用すると多くの企業がこのルールに抵触する懸念が出てくる。このためコロナの拡大に伴う不透明感が漂うあいだは、すぐに適用しなくてよいようにする。
銀行と企業の融資契約の条件も和らげる。融資契約では、融資先の企業が最終赤字や債務超過などに陥った際に借入金の一括返済などを求めるコベナンツ条項」と呼ばれる特約を結ぶことがある。金融庁はコロナの影響で赤字などになっても、この条項をすぐに発動しないように金融機関に要請する方向だ。』

注)疑義は、継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)の疑義

 

せめてプロである金融機関や機関投資家には、見た目の数字ではなく、

実態の評価による投融資の判断をして欲しいものだ。

 

減損損失の戻入の可否【日本とIFRSの違い】

コロナショックやら3月決算やら株主総会やらで、

前回の投稿からはや1ヶ月が経とうとしている。

本当に時間が進むのが早い・・・

世間では、コロナウィルスによる自粛疲れとか、

暇つぶしの方法を見つけるのが大変といったニュースを見ても、

どこにそんな暇があるのか信じられないくらいだ。

 

そう言えば、コロナショックが会社の決算数値など会計に与える影響

なんてもの書いてみても面白いのかな、

と思ってみたりもしている。

 

さて、今回のテーマは、

減損損失の戻入の可否

 

日本基準とIFRSとの相違

について。

 

先日、こちらにザックリとした内容は書いているが、

事務所ブログではもう少し掘り下げてみたい。

globis.jp

 

簡単にまとめると、

減損損失の戻入は、

日本基準:NG(不可)

IFRS  :OK(可) 

     但、のれんはNG

 

ちなみに、

米国基準:減損の戻し入れ NG 

で日本基準と同じだ。

(日本基準が米国基準を参考にした)

 

この相違は両者の減損に対する考え方の違い

によると言われる。

 

【減損の考え方の違い】

日本基準は、本当に固定資産の減損と言う事象が発生しているのかの検討に重きを置く。

まず、継続的な営業利益や営業キャッシュ・フローの赤字などの

減損の兆候が認識されなければ詳細な減損テストは不要だ。

 

また、減損の認識では

2ステップアプローチ

を採用している。

2ステップとは、減損の兆候が認識される場合、まずは割引前の将来キャッシュ・フロー(CF)の合計と対象となる固定資産簿価を比較して、

 

(ステップ1)

割引将来CF<固定資産簿価

 

の場合に、次のステップ、

 

(ステップ2)

割引将来CFと固定資産簿価を比較

して減損損失(額)を測定する。

 

ファイナンスに明るい方は、かなり緩いルールだということが分かるのではないか?

割引率の設定にもよるが、通常は割引CF>割引CFであるし、そもそも割引前CFと帳簿価額を比較する意味が乏しい。

減損の兆候の有無の把握然りで、検討プロセスの省力化が目的だろうか。

ともかく、これだけ下駄を履かせた状態でなお、減損が認識されるとういうことは、

 

その特徴はもう完全に減損やがな

すぐわかったやん、そんなんも〜

 

ということで、満を持しての減損となり、戻し入れるなんて考えられない、となる。

 

これに対して、IFRSでは決算時点における固定資産の価値の毀損に重きが置かれる。

 

価値があるかな~どうかな~微妙だな~

 

という時は、取り敢えずというと誤解を招くけもしれないが、まあ、積極的に資産価値を切り下げる、つまり減損と言うことになる。

減損テストも、減損の兆候についての具体的な数値基準等が無いため、日本基準と比べると減損テストの頻度は増すように思う(ぶっちゃけ、兆候があろうがなかろうが毎期必要)になる。

また、減損の認識も1ステップアプローチなので、

日本基準のような割引前将来CFと帳簿価額との比較は無い

 

その結果、どちらかというとIFRS採用会社の方が日本基準採用会社よりも減損の認識が早い傾向があるように思う。

 

減損損失の戻入の相違】

その裏返しが、減損損失も戻入の考え方に影響していると思われる。

IFRSでは、時点時点の判断で、固定資産の価値毀損が把握されば積極的に減損と言う価値修正を実施する。つまり、

 

あー、ほな減損と違うかぁ

 

価値の回復が認められれば積極的に(回復の)価値修正も実施することにもなる。

 

その分、毎期毎期の減損テストの検討という事務コストが発生するのだが・・・

日本基準が、減損の戻し入れを認めていないのは事務コストの問題もあるように思う。

 

【のれん減損の取扱い】

しかし、IFRSにおいても

のれん減損損失の戻入はNGだ。

これはのれんの正体にも関連するのだが、買収差額を特定の有形・無形資産へ

個別に配分した結果、個別の資産として認識できなかった差分がのれんとなる。

のれんは超過収益力と表現されることが多いが、その超過収益力を個別に識別することは極めて困難だ。

つまり、積極的にのれんの存在を示すことは困難であり、

のれんは、それだけ実在性が危うい資産ということでもある。

IFRSのスタンスも、対象会社の収益性の低下などを原因とするのれんの減損以降、のれんの価値の回復を証明するのは実質的に不可能ということだ(戻入不可)。

 

M&Aは今後まずます増加すると思われる。ということは、のれんも益々積み上がる傾向は否めない。

こうした点からも、のれんという資産の企業経営における意味について再考が求められるのではないだろうか?

 

 

武田薬品工業の上方修正の要因は!? 【PPAの功罪】

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55239360U0A200C2DTB000/

 

武田薬品工業4日、2020年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が1620億円の赤字(前期は1091億円の黒字)になる見通しだと発表した。従来予想より赤字幅が1110億円縮小する。今期の上方修正は3度目だ。アイルランド製薬大手シャイアーの買収完了から1年たち、在庫や特許など無形資産の金額が確定した。暫定値より小さくなり償却費などの負担が減った

(2/4/2020 日経朝刊より抜粋)

 

3月決算会社の第3四半期決算発表という時期的なものもあり、本決算の数値を見据えた発表が多くなる時期だ。

事務所ブログのネタも増える(爆)

このニュースもその一例だ。

 

記事が悪いということではないが、紙面の関係なのか、少し省略したというか、前提をおいて書いているように思える。

あまり会計知識に明るくない人にとっては、

何で利益が増えるのか?

上方修正の理由がいまいち分かりにくいのではないだろうか?

 

武田の上方修正のカギをに握るのが

パーチェスプライスアロケーション(PPA

だ。

いきなり何のことかと思われるかもしれないが、PPAは2010年度から日本の会計ルールにも導入されているのでそれほど新しい話ではない。とはいえ、無形資産の評価が絡む少々ヤヤコシイ話なので、一般的にはあまり理解が浸透していないと思う。

 

PPAについてコチラ(https://maonline.jp/articles/ppa0372)に説明しているが、

ざっくりいうと、

買収差額の細分化

だ。

買収差額が生じる、つまり定価(純資産)よりも高く買うということは、買収先企業に何らかの追加的価値を認識したからに違いない。であれば、何に対して追加でおカネを払ったかを明確にするべき、ということだ。

補足だが、のれんは極論すれば、具体的に何に対しておカネを払ったかが判然としないということの現れでもある。

例えばビットの競り合いによって勢いで払ってしまったかもしれない(笑)

ということもあって、僕は

のれんは出がらし

のような存在と考えている。

 

コチラを参照☟

 

tesmmi.hatenablog.com

 

さて、武田の話に戻る。

武田の上方修正とPPAの関係については、こちらにザックリとまとめているので参考にしてほしい。

 https://globis.jp/article/7488 

 

ポイントは2点

・PPAにより当初見積よりものれんが大きくなった

IFRSではのれんは償却しない

 

 PPAは買収完了から1年以内に完了させる手続きなので、当初の見積もりよりも

のれんの金額が多かった(無形資産等の配分が減った)ということだ。

なお、PPAの完了が買収完了の翌事業年度以降となった場合は、過去の決算を遡って修正して、買収が完了した事業年度にPPAが完了(無形資産等の配分が確定)したとして会計処理することになる。

 

詳細は、「企業会計基準適用指針第 10 号 企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」を参照のこと

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/ketsugou_10.pdf

 

知見録コラムにも書いたが、武田がIFRSを採用していることが1つのポイントだ。

日本基準ではのれんも償却するため、今回の武田のように会計数値に対するインパクトは大きくない。

のれんの償却期間と個別に認識される無形資産の償却期間の違いに伴う毎期の償却費差額分だけの損益影響があるのみだ。

 

武田にとっては利益の押上要因にもなったので、PPAに武田の意図が働いたと勘繰る向きもあるかもしれない。可能性は否定しないが、PPAは通常、会社とは別の財務コンサルティング会社等の外部の専門家が担う。また、その結果に対する公認会計士の監査も必要だ。したがって、会社の意向は介入しにくいと考えて良いように思う。

 

では、武田にとってラッキーだったかと言えば、それは何とも言えないのではないだろうか?

確かに目先の増益にはなるが、同時に減損リスクを将来に繰り越したとも言える。

無形資産は、買収先企業、この場合はシャイアーの将来の業績に関わらず当面は耐用年数によって粛々と償却される。もっとも、それ以上に無形資産の価値が棄損すれば減損もあるが、それでも償却が進行する分減損損失は縮小される。一方、のれんは非償却な分、シャイアーの業績悪化により減損となる場合の損益インパクトが大きくなる

 

 

ちなみに、IFRSがのれんを非償却としていないのは、出来るだけ個別に識別可能な資産を認識してのれんを最小化することを前提としていることもある。のれんは非償却だが減損テストは必要だ。買収した会社がその後、期待に見合った業績を上げなければのれんの減損リスクは高まる。つまり、買収差額をできるだけ無形資産等へ配分してのれんを大きくしないようにするということだ。

ヤマトHDが事業持株会社へ移行する理由とは? 【ある会計士の妄想】

headlines.yahoo.co.jp

 

ヤマトホールディングス(HD)は23日、2021年4月に純粋持ち株会社から事業会社に移行する構造改革プランを発表した。傘下の宅配便最大手、ヤマト運輸などを事業ごとに再編する。ヤマトは、宅配ドライバーの待遇改善を目的に17年に料金を値上げして取り扱い荷物を抑制する方針に転換した。だが、コストの増加で足元の業績は低迷しており、再編による意思決定の迅速化で立て直しを図る」

 

TwitterFacebookでこのニュースにコメントしたところ、

どういうこと?説明して!

とリクエストをいくつかもらったので、少し解説してみる。

 

とはいえ、

あくまで私見、妄想であることを予め断っておく。

 

「組織再編は、ヤマト運輸など子会社8社をヤマトHDが吸収合併し、機能別に「リテール」など4事業本部と「輸送機能」など4機能本部に再編し経営のスピードを早める。IT化では、23年度までの4年間で1000億円を投資。人工知能(AI)を活用して業務量を予測し、人員配置や配車、配送ルートを効率化するほか、倉庫での荷物の仕分け作業の自動化も進める。また、今年4月から、荷物を受け取る時間や場所などをより柔軟に設定できる電子商取引(EC)向けの新たな配送サービスの導入も目指す。」

 

ヤマトHDは、今回の事業持株会社への移行の目的を経営のスピードを早める

ことと発表した。

 

なお、ヤマトHDによるニュースリリースはこちらを参照☟

www.yamato-hd.co.jp

 

事業規模の成長や事業の多角化などにより企業のグループ化が進む中で、元々の事業会社が親会社としての役割を同時に担う事業持株会社純粋持株会社(HD化)へ移行するのが今もっての流れのように感じる。

ヤマトHDも同様で、2005年に事業持株会社から現在の純粋持株会社であるヤマトホールディングスへ移行した。

それを今回、逆行するように事業持株会社再移行するという。

 

一般的にHD化の目的は以下が挙げられる。

 

■グループ全体の経営戦略の促進
親会社である純粋持株会社が特定の事業に傾倒しないため、グループ全体の視点に立った経営戦略の策定が促進が期待


■経営意思決定のスピードアップ
純粋持株会社が特定の事業から切り離され、グループ全体の経営戦略の策定や事業会社の業績管理が主たる事業となるため、グループ全体の経営意思決定のスピード化が期待


■事業評価・再編の効率化
傘下の事業会社を別会社とすることで、会社ごとに財務や決算が独立するため、事業の業績評価がしやすくなります。同時に、M&Aへの対応がスムーズに


■事業に即した人事制度
傘下の子会社を事業ごとに別会社とすることで、事業に適した人事制度等を導入可能

 

詳細はこちらを参照☟

globis.jp

 

HD化の目的、メリットの2点目に経営意思決定のスピードアップを挙げている。

これはまさに、ヤマトHDが事業持株会社への移行の目的として掲げている点だ。

 

HD化のメリットの1つである経営意思決定のスピードアップを目的として

HD化を止めるという・・・

 

これは一体どういうことか?

 

HD化の留意点として以下が指摘される。

 

■グループ間のミスコミュニケーション
親会社、傘下の事業会社がそれぞれ別会社となるため、運用によっては親会社である純粋持株会社に対して事業会社の情報が適時適切に伝わらない恐れがある。また、事業会社間の意思疎通も困難となることが考えられる。その結果、グループ全体の経営意思決定に悪影響が出ることがある。

 

HD化それ自体の留意点というよりは、運用の問題だろう。

ロボットやAIであれば同様の問題は発生しないかもしれない・・・

 

 

例えば、事業ごとに会社を別にすると、求める人材も変わる、お互いのバックグラウンドが異なることで意思疎通がうまく行かなくなる、ということは少なくない。

僕の前職でも会計監査部門とコンサル部門では人員のバックグラウンドも違って、お互い人種が違う(から分かり合えない)とか言ってたような・・・

あるいは、同じフロア(近く)にいる相手であれば容易にコミュニケーションが取れる(取ろうとする)が、他のフロアまでわざわざコミュニケーションをとりに行くのは面倒、といったこともあるだろう。

これも、前職で経験済み(笑)

 

そして、HD化のメリットの経営意思決定のスピードアップ

これは、純粋持株会社と事業会社の役割分担や事業会社への権限移譲が適切に行われることが前提となる。

HD化により自動的に経営意思決定のスピードアップが図られるわけではない。もしそうだとすれば、それは非常に安易な発想だろう。 

 

蛇足だが、日本企業は権限委譲があまり得意でない印象がある。

多くを純粋持株会社留めるか、あるいは事業会社に丸投げするか・・・

例えばの話だが、ヤマトHDが事業会社に事業の意思決定に関する権限を委譲せず、その多くを持株会社に留めているとすれば、事業に関する経営意思決定が遅くなる可能性はある。

 

ここで、ヤマトHDの役員構成を確認すると、

役員12名の内、

社内取締役4名

社外取締役4名

監査役4名(内、社外監査役2名)

実際にヤマトグループの事業執行は4名の社内取締役が中心となる。

社外取締役の皆さんがどの程度ヤマトグループの事業に精通しているかは不明だが、客観的、一般常識的な見地からの経営に対する意見、助言といった、いわゆる社外取締役に対する期待役割が大きいほど、社内取締役の提案に対する批判的機能が高まる。

結果として意思決定のスピードが阻害される可能性はある。

 

とはいえ、それはそれで社内の常識は社会の非常識、社内取締役の暴走を防いだり、企業価値を高める投資の促進など意味のあることでデメリットとは言えない。

 

あくまで、運用上の問題だ。そして、その運用を司るのは人間だ。

 

人間だもの・・・

 

どんな制度、仕組みにもメリットもあればデメリット(注意点)はある。

メリットを最大限追求しつつデメリットをいかに抑制するか、

を検討する必要がある。

今回、ヤマトHDは事業持株会社という仕組みを選択するが、それもまた同様だ。

 

もともと事業持株会社だったヤマト運輸純粋持株会社を選択した目的に、経営意思決定のスピードアップがあったとしたら要注意だ。

MTGの棚卸資産評価損の前兆は前期決算の訂正にあった!? 

一昨日(12/9)、延期されていたMTG社の2019年9月度の決算がようやく発表された。

 

 MTG社の決算短信

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7806/tdnet/1776464/00.pdf

 

東証の適時開示ルールでは、決算日から45日以内に決算発表(決算短信)を求めている。いわゆる45日ルールだ。

50日を超える場合は、その理由や発表時期の見込みを発表する必要がある。

 

とにもかくにも、決算日後約70日で発表に至ったわけだ。

 

そもそも決算発表が遅れた原因は、

韓国子会社の取引先における

棚卸資産の評価

を巡って監査法人と意見が合わず調査を要したためだ。

(現地監査法人への通報)

 

MTG社は社内調査の結果、11/19付で以下のような年度決算見通しと共に業績予想の下方修正を発表した。

 

【連結決算】

棚卸資産評価損 45.5億円

減損損失 87.6億円

 

前四半期の在庫水準からすると、

棚卸資産のザっと4割の価値が無くなったことになる。

 

【単体決算】

関係会社株式評価損 40.1億円

貸倒引当金繰入額 36.7億円

 

詳細はコチラ☟ 

https://ssl4.eir-parts.net/doc/7806/tdnet/1772771/00.pdf

 

前回のブログで書いたが、MTGは半年前の2019年9月期第2四半期にも決算発表を延期した。

原因は、売上計上のタイミングだった。

MGT及び中国子会社は卸業者へ販売した時点で売上を計上(一括売上認識)していたが、取引実態から、本来は卸業者から第三者への売上を計上する時点で売上認識すべき(消化売上認識)ということだ。

その金額的影響をまとめたのが下図だ。

 

f:id:tesmmi:20191126141919p:plain

 

この影響額を見たときに違和感を覚えた。

 

売上高の取り消し処理を行うと、在庫の戻し入れの処理も行われる。

返品等によって売上も取り消されるが、棚卸資産も返品されるためだ。

売上と同時に売上原価も取り消されるため、利益(この場合は売上総利益)に与える影響は通常、売上総利益相当分となる。

 

但し、それは、

返品された棚卸資産良品として再販可能な場合だ。

 

もともと無理なスキームで売上を計上したのも、中国の販売減速や日韓関係の悪化からの不買運動などといった市場環境の変化へ対抗するためだ。となれば、これまで通りの売価で商品が売れ続けることは考えにくい。つまり、売上取消の対象となった棚卸資産が通常売価はおろか、原価でも再販されるのは困難ではなかろうか?

 

2018年9月期の訂正では、売上高とほぼ同程度の営業利益が取り消された。

先述のとおり、売上取り消しの利益に対する影響額は売上総利益分だ。

これは一体どういうことか?

考えられるのは、受入と同時に対象となった棚卸資産の評価減

を実施したということだ。

会計ルールでは、棚卸資産の評価損は通常、売上原価として計上される。

したがって、評価損を計上するほど売上原価が増加する。

返品等で受け入れた棚卸資産を100%評価減すると、結果的に、

 

売上原価+売上総利益=売上高

 

に相当する利益が減額されることになる。 

 

しかし、2019年9月期の第1四半期以降は、売上の取り消し金額よりも営業利益の減少額は少なくなっている。同社の売上総利益率が60%程度であるから、棚卸資産の金額を満額、つまり100%良品評価で受け入れたとは思わないが、2019年9月期第1四半期の取り消された売上に対する営業利益が70%、第2四半期の営業利益が80%取消されていることから推察すると、対象となった棚卸資産のそれぞれ10%、20%の棚卸資産評価損は計上されているのではないか。要するに、一定の評価金額で返品あるいは卸業者へ販売した棚卸資産を受け入れをしたように思えた。

それらの棚卸資産再販の見込みがあるということなのだろうか・・・

 

気になったので、訂正の対象となった2018年9月以降の棚卸資産回転期間売上総利益率の推移を調べてみた。

 

f:id:tesmmi:20191210103637p:plain

MTG社の決算短信から筆者が作成

 

2018年9月年度末決算の訂正で既に棚卸資産の回転期間の長期化が見られる。

特に、2019年9月期の第1四半期の訂正分から棚卸資産回転期間が大幅に長期化しているのが分かるだろう。同時に売上総利益率も低下している。

 

売上取り消しの対象となった棚卸資産(その大部分はReFa)の受け入れ処理をしたと同時にある程度の棚卸評価損は計上したのではないかと先程書いた。

会計ルールでは、棚卸資産の評価損は通常、売上原価として計上される。

売上総利益率が低下しているのはその影響もあるだろう。

 

しかし、棚卸資産評価減により通常、回転期間は短期化する。

 

棚卸資産回転期間

棚卸資産/1日当たり売上原価

 

であり、分子の棚卸資産が小さくなり、分母の売上原価が大きくなるためだ。

つまり、棚卸資産を評価減してなお棚卸資産の回転期間が長期化しているということは、他に滞留在庫がある可能性がある。

これまでのスキームで売上を計上すべく製造等の手配をしていた棚卸資産を受け入れざるを得なかったということも考えられるが、

もう1つ考えられるのが、韓国向け売上棚卸資産だ。 

 

前回、第三者委員会を設置して調査し、結果訂正の対象となったのはMTG本社及び中国子会社の中国市場向け売上だ。

しかし、韓国向け売上についても同様の状況は観察していたように推察する。

上記のように、棚卸資産回転期間の長期化も確認できる。

そして、その数か月後に韓国子会社の取引先の棚卸資産の評価が問題となって決算発表延期、調査、業績下方修正・・・

 

三者委員会の調査では、韓国向けの売上や棚卸資産の評価の妥当性については問題視されなかったのだろうか?

 

今回、韓国子会社の取引先の棚卸資産の評価減を実施とのことだが、売上済みなのかどうか、また、その妥当性については何ら発表がない。

 

本当に全ての処理が完了したのだろうか?

監査法人も交替するようだし、来期また何か発覚するかもしれない。

 

 

ん~何とも釈然としない

 

 

一方、株式市場の反応は、

www.asahi.com

 

すっかり悪材料が出尽くしたとの認識で株価は反発・・・

 

ん~、やっぱり釈然としない