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溝口公認会計士事務所ブログ

京都在住、大阪で活動している公認会計士です。会計監査、内部監査代行、内部統制の構築・改善業務、IPO支援業務、原価計算制度構築・改善業務、企業価値算定業務等のコンサルティング業務を中心に活動する傍ら、グロービス経営大学院大学でアカウンティングの講師もしています。日頃の業務の中で気づいたことをブログに書いていきます。【保有資格】公認会計士(CPA)、公認内部監査人(CIA)、証券アナリスト協会検定会員(CMA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA) 

事業部制とカンパニー制の違いって何? 【パナソニックの例】

www.nikkei.com

パナソニックが2017年3月期から、事業部に資本効率の改善を促す独自の制度を導入する。事業部が一つの企業のように資本金を増減できるようにする。現場に資本コストを意識させ、会社全体の資本効率の改善につなげる狙いだ。』

 

パナソニックがこれまでの事業部制からカンパニー制を導入するらしい。

狙いは、会社全体の資本効率の改善、ということだカンパニー制がどのように会社全体の資本効率の改善に繋がるのかについて少し説明してみたい。

まず、多くの会社に見られる事業部制。これは各部門事業部)をプロフットセンターとして、損益責任を持たせる。したがって、事業部(とその長たる責任者)は一定期間に利益をいくら挙げるかが主たる経営課題となる。

一方で、カンパニー制では、損益責任に加えて貸借対照表(B/S)に対する責任も持たせることになる。要するに、社内の事業をあたかも1つの独立した会社のように見なすことになる。ちなみに、実際に法人格まで持たしてしまうのが『分社化』だ。組織再編で持ち株会社化(ホールディング化)する会社も少なくない。グループを統括する持ち株会社の下に、法人格を持った事業会社がぶら下がる格好になる。 

 

 『パナソニックは13年4月、事業部制を12年ぶりに復活。開発から生産、営業まで一元管理するだけでなく、貸借対照表事業部ごとに作り、本社から割り当てるお金も「資本金」と「負債」を明確に区別している。』

『従来は余剰の資本事業部に積み上がりやすかった。投資する際も事業部の自己資金の範囲で実施するケースが多かった。新制度では資金を必要な部門に回しやすくなり、グループ全体として資金を有効に使える。』

パナソニック自己資本利益率(ROE)は15年3月期に10.6と、3月期決算になった1987年3月期以降で最高になった。「今後も10%以上を維持したい」(河井英明専務)という。』

 

カンパニー制の目的はいくつかあるが、究極的には資本の効率的な運用ということになるのだろう。よく事業部長(カンパニー長になるが)に損益責任だけでなくおカネの効率的な運用も意識させ、経営者育成につなげる、と言った表現も耳にする。

利益を挙げるだけではだめなのか?ということだが、例えばROE

株主の要求もあり最近では多くの上場会社が主要な経営目標指標として『ROE』を掲げている。

ROE=当期純利益÷株主資本

であり、P/Lの利益をB/Sの株主資本で計算されるため、利益だけにフォーカスした経営では不十分ということになる。いかに少ないおカネ(この場合は株主資本)で多くの利益を挙げるか、つまりおカネの効率的な運用の意識が必要なのである。

 

ところで、B/Sって会社の中でどの程度の人が見ているのだろうか?P/Lは各部門に売上、あるいは費用の予算割り当てがあるので、各ユニット(部、課)の責任者も課員も意識しているだろうが、果たしてB/Sは・・・もしかしたら役員クラスでも見ていない会社も結構あるのではないか?というのも、日本は取締役兼営業本部長、取締役兼製造部長といったいわゆる『兼務役員』が多い。つまり、現業(営業、製造)の目下の成績を達成することにどうしても意識も時間も労力もかける傾向があり、なかなか『会社全体』目線(B/Sは会社全体ベースになる)でおカネの効率的な活用を考えるに至らない、といったこともあるように思える。

 

これに留まらず、資本コスト(を超える利益)も意識づけるとのこと。

パナソニックは各事業部に対し資本コストを超える利益をあげるよう求めている。資本コストとは投資家が期待する最低限のリターンで期待収益率とも呼ぶ。従来は資本を減らせないため利益を高めるしかなかったが、企業が自社株買いをして資本効率を高めるように、事業部は資本金を減らして資本コストを抑制できるようになる。

 パナソニックでは為替や景気変動などを勘案して事業部ごとに資本コストを約4~16に決めている。以前は全事業部が一律で8.4%だったが、16年3月期から現在の仕組みにした。今回の新制度により、事業部が資本コストを一段と意識するように促す。』

 

事業部制に’12年に復帰して早々にカンパニー制へ移行、そして資本コストの意識づけ、経営のスピード感、危機感はよく伝わってくる。しかしながら、やはり重要なのはいかに(導入)目的に適うように運用するか、だろう。カンパニー制は’94年にソニーが導入して以来、日本における導入実績は少なくない。とはいえ、カンパニー制を導入した会社が全て目的を達成した訳でもない。原因は様々だろうが、形だけの導入だったり、カンパニーの責任者や従業員が制度の趣旨や目的の理解が不十分なままの運用であったり・・・実際、カンパニー制を廃止した例もある。パナソニックカンパニー制をどう運用して成果を発揮するのか、期待したい。