会計の数字はどこまで客観的なのか? 【売上に関する会計ルール】
『取引形態によって会計処理がどう変わるかを紹介している。商品納入やサービスの提供など取引の実態に即して売り上げ計上の時期や金額が変わってくるのが特徴だ。例えばスポーツクラブなどの入会金は、実務上は入会時に一括で売上高に計上しているが、新ルールでは会員期間中に案分して計上する。書籍や通信販売など返品が見込まれる商取引の場合は、出荷時に全額を売り上げ計上せず、一定の返品を見込んだ額を計上する必要がある。その分、売上高は減少する。』
いくつか新ルールが適用された場合の影響が紹介されているが、多くは従来よりも決算書に表れる『売上高』が減少することになるらしい。
この点については、過去記事でこんな例も紹介したので参考にして欲しい。
(売上高が激減する!? 【収益認識基準の動向】 - 溝口公認会計士事務所ブログ)
同様の例として、15年3月期から電通が会計ルールを日本基準からIFRSへ変更したが、その際にも以下のように報じられた。
『広告業界の首位交代か――。電通が5月に公表した決算説明会の資料が市場関係者の注目を集めた。15年3月期の予想連結売上高が6693億円と、業界2位の博報堂DYホールディングスの1兆1510億円を下回ったためだ。
電通が今期からIFRSへの移行を検討していることが背景だ。IFRSは広告の手数料を売上高に計上するため、取扱総額を計上する日本基準に比べると目減りする。日本基準だと電通の予想売上高は2兆3712億円となりトップの座は揺るがない』(売上高の区分厳密に IFRSと米国基準が統一へ :日本経済新聞)
そもそも業界の序列を売上高のみで測る考え方もどうかと思うのだが・・・
それはさておいても、会計ルールの変更でこれだけの影響があると、会社もルール変更の動向には注意を払わざるを得ないだろう。
しかしながら・・・ルール変更はスポーツを始めどの世界でもあり得るし、それによって一時的に得をする人もいれば損をする人もいる。しかし、ルール変更によって、選手や会社の実力が変わるわけではない。単に評価軸(モノサシ)の1つが変わるだけである。見かけ上の数字だけで判断すると、物事の実態や本質を見失なうことになりかねない。会社にとっても、見かけの数字だけで評価されるとなると外部環境の変化があったとしても(予算どおりの)数字に執着せざるを得なくなる。最悪なのは粉飾決算だが、そこまで行かなくても目先の利益を重視した経営に傾倒するかもしれない。コーポレートガバナンス・コードの目指す長期的な企業価値向上の点からは、国民レベルンのアカウンティングリテラシーの向上は必須と言えるかもしれない(なんか前も書いたな、これ・・・)。