溝口公認会計士事務所ブログ

京都市在住、大阪を中心に活動している公認会計士です。日頃の業務の中で気になったことを書いています。

非継続事業って何?【LIXILの例】

www.nikkei.com

 

ずいぶんと久しぶりの更新となったが、

 

生きてます。

 

さて、

 

LIXILは22日、2023年10~12月期に連結財務諸表(国際会計基準、非継続事業ベース)で過去の子会社売却に関連して48億円の損失を計上すると発表した。24年3月期通期の業績に与える影響は他の要因も含めて精査の上、修正が必要と判断した際に速やかに公表するとしている。」

 

少し前の日経新聞に、LIXILの子会社売却に関連する損失48億円を計上するという記事があった。そして、その損失は「非継続事業ベース」とのこと。

 

非継続事業ベースの損失とはいったい何なのか?

 

サラッと書いているので、読み飛ばす人もいるのではないかと思う。

 

非継続事業とはIFRS国際財務報告基準で定義されている事業であり、日本の会計基準にはそのような規定はない。

 

IFRS5号によれば、非継続事業とは、

すでに処分されたか、または売却目的に分類される企業の構成単位で、独立の主要な 事業分野や計画等に該当するもの

をいう。いわゆる廃止や売却が決定ないしは予定されている事業ということだ。LIXILのケースでは、2020年9月に売却したイタリアの建材子会社ペルマスティリーザに関連する損失とのことだ。

 

財務諸表の利用目的は様々だが、例えば、株主や投資家にとっては、会社の現在価値を把握するためには、過去の業績だけでなく、会社が生み出す将来キャッシュ・フローの情報を重視するであろう。したがって、過去の業績である包括利益計算書(IFRSにおける損益計算書)や財政状態計算書(IFRSにおける貸借対照表)においても、できれば将来キャッシュ・フローの予測のために便利なように情報に工夫してもらう方がありがたい。

例えば、包括利益計算上、今後継続する事業と継続しない事業の業績が混在しているまま財務情報が開示されると、上述のような将来キャッシュ・フローを重視する財務諸表の利用者をミスリードする可能性がある。

そこで、廃止や売却が予定されている事業に関する情報は、将来キャッシュ・フローの予測において特段必要とならない情報であるため、将来の会社事業に関わる「継続事業」の部分と、将来の会社事業には影響ない「非継続事業」の部分を分けて、財務情報を提供する方が望ましい。

 

LIXILはペルマスティリーザを非継続事業に分類しており、今回の損失は継続事業ベースの各利益には反映されない。同日発表した23年4~12月期の連結決算(継続事業ベース)見通しは売上高が前年同期比横ばいの1兆1230億円、営業利益は同7%増の259億円だった。


LIXILは、ペルマスティリーザから生じた損失は非継続事業から発生したものであり、継続事業には関係しないとしている。

非継続事業に係る損益は、会社にとっては、例えば不採算事業を売却するなどして業績回復を図る場合、不採算事業に関連する財務情報を損益計算書上、別枠で表示することで、事業売却後の会社の財務状況を財務諸表の利用者に対してより分かりやすく伝えることができるという見方もできる。

 

なお、日本基準には非継続事業のような定義は無いが、将来の業績を予測するという観点では、特別損益がその役割を担っているとも考えられる。例えば、事業構造改革費用(いわゆるリストラ損失)や特別退職金、あるいは事業における主要な固定資産の除売却などは特別損失として計上されるが、これは非継続事業に係る損失と見ることができる。日本基準においては、経常利益(あるいは営業利益)をチェックすることで、会社が来期以降も継続して利益を創出する力を把握することができる。

他方、IFRSでは特別損益の使用が禁止されており、これが非継続事業の開示に影響しているかもしれない。

 

非継続事業の詳細はこちらを参照ください☟

https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2016/09/discontinued-operations-160921.html